フランチャコルタの泡が生まれるところ。

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天気に恵まれた日のイゼーオ湖は青のグラデーションをたたえていた。春の始まりで、葡萄は新芽が出始めたところ。氷河の浸食によってできた湖の周りの土壌は痩せて水はけが良く、ワインの葡萄造りには適している。湖南は北イタリアにして温暖な気候故、オリーブの木も多く見られる。

vol.5 @イタリア

北イタリア、ロンバルディア州の東部、フランチャコルタ、ここは近年評価の高いスパークリングワイン「フランチャコルタ」の産地だ。イゼーオ湖南側の畔に広がる一帯にワイナリーが点在する。青い湖、ゴツゴツと力強い山々、葡萄畑と自由に咲き乱れる草花が重なる。白い帆のヨットが遠くに現れ、美しいものばかりが集まり、まるで非現実的な夢の中のような風景が目前に広がる。この地の土壌や人々の情熱に直に触れ数日を過ごした。自分の身体に入ると上機嫌に導いてくれる「美酒」の背景を見知るのは、いとも楽しく興味深い体験だった。「フランチャコルタ」のなめらかな泡は、ロマンティックというよりきりりとシャープ、口に含むと途端に閃きを与えてくれるようで、心地いい刺激を伴って、素敵だ。

湖畔の街イゼーオでエノテカに立ち寄りどの一本にしようかと迷っていたら、映画『おとなの事情』で、カップルがホームパーティに向かう車中、持参したビオディナミコのワインの値札を取らずに皆に見せつけよう、いや、そんなの下品だよ、と会話する可笑しなシーンをふと思い出しひとりニヤリとする。

この旅に連れて来たのはミラノで長く暮らした須賀敦子の全集の文庫本。夫、仲間たち、イタリアと親密に生きた須賀氏が、年月を経てイタリアでの日々を回想し綴ったエッセイの数々。淡々とした語り口なのに、堪らなく切なく胸に迫る。心に響く文章とはこのこと。

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フェルゲッティーナ醸造所にて、瓶内で発酵を終えた酵母(おり)を光に透かして見る。
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宿泊したロカンダ・レ・クアットロ・テッレ周辺の葡萄畑の傍らに佇む素朴なマリア像。土地の人々に手向けられた、たくさんの花やろうそくに囲まれていた。
●『おとなの事情』 
監督/パオロ・ジェノヴェーゼ 
2016年、イタリア映画 
Amazon Prime Videoにて配信中

●『須賀敦子全集』
河出書房新社刊 ¥11,143

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Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。

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