祈りの舞「セマー」を求めて、トルコの古都ブルサへ。

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ブルサのメヴレヴィ修道場にて。セマーを体感するならこのくらい密度の高い空間がよい。男たちの奏でる音と旋回に耳も目も奪われる。

vol.6 @トルコ

イタリアへのトランジットで、トルコのイスタンブールに数日滞在した時のこと。イスラム神秘主義メヴレヴィの祈りの舞踊「セマー」が、古都ブルサの修道場で毎晩行われていることを知った。今回のトルコ滞在中に見ておきたかったセマー。メヴレヴィの本場コンヤは遠すぎるが、ブルサならなんとか行けるし、知らない街を歩くきっかけをいただいたとばかり小旅行を急遽決行した。バスに乗ること3時間半、路線バスに乗り換えブルサの旧市街の真ん中に到着、夜に行われるセマーまでの間、美しいモスクを幾つも巡った。礼拝の時間、モスクの中は男性エリアと女性エリアに分けられ、私もスカーフを頭に巻きそこに紛れ込んだ。モスクの圧倒的な美しさと同じくらい、人々の祈る姿が無垢で尊く印象的だった。すっかり暗くなってから街外れのメヴレヴィ修道場に辿り着く。女性は建物の2階へ案内された。集っているのはほぼ地元の人たち、世話役の若い女性に満面の笑顔でお茶とお菓子を振る舞われ、セマーが始まるのを待った。楽団が入場し、音楽が奏でられ、男たちは白い衣装の裾を広げながらホールに踊り出て天を仰ぎ回り続ける。見ている私も軽くトランス状態で、彼らが回る姿をずっと見守っていたかった。

イスラム社会での女性のありようを少女の心や行動を通して描いた映画『裸足の季節』の中で見る主人公の葛藤も、この旅で見て体感したとてつもない美も、いま同じ国の中に同時にあること。世界はあらゆるところにあらゆるかたちで存在することを改めて思う。

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ブルサを代表するイェシル・ジャミーの内部、細密な模様が折り重なる。

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映画『裸足の季節』で主人公の5人姉妹の末っ子ラーレが目指したのは大都会のイスタンブール。 渡船が往来するエミノニュの夜。
『裸足の季節』
監督/デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
2015年、フランス・トルコ・ドイツ映画 97分 
Amazon Prime Videoにて配信中
www.bitters.co.jp/hadashi/

>>「在本彌生の、眼(まなこ)に翼」一覧へ

*「フィガロジャポン」2023年8月号より抜粋

Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。

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