中国の山岳地帯にある小さな田舎町の、人々の暮らしに触れる旅。

写真家の在本彌生が世界中を旅して、そこで出会った人々の暮らしや営み、町の風景を写真とエッセイで綴る連載。今回は、雲南省、貴州省、山西省など中国の田舎町への旅。
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雲南省ウェイシャンの旧市街の様子。華やかな雰囲気の中、道ゆく人々の表情は明るい。

中国の小さな町の人々の暮らし、心の機微。

Vol.7 @中国

パンデミック以前のこと、中国の雲南省、貴州省、山西省などを頻繁に友人たちと旅して回っていた。「みんげいおくむら」の店主、奥村忍氏が旅団の隊長となり、小さなコミュニティで伝統的に作られてきた染物、織物、刺繍、焼き物といった工芸品の里を訪ね歩いた。その時の写真は、後に奥村氏の文章とともに『中国手仕事紀行』という本に収められた。

中国のメガシティを経て小さな町や村に辿り着くと、人々の平凡な日常に触れる機会が多くそれが楽しかった。車で移動しながら窓の外を眺めていると、山の中腹に小さな集落を見つけ、何かおもしろいものがあるに違いないと直感して集落に入り込み、路地を歩いたりもした。そんななかで遭遇する暮らしの美しさやいとなみの健やかさがやけに強く印象に残っている。民家の中庭に迷い込むと、大歓迎されて亭主が家の中を案内してくれたり、ご相伴にあずかったことも一度ではない。

各地の人々と心を交わし、彼らの情緒的な表情に度々対峙した。この巨大な国の中、隅の隅にいたるまで人生劇場が繰り広げられている。その当たり前なことに私は気が遠くなった。ジャ・ジャンクー監督がこの国で生き、映画で描きたいのは、普通の人々の心の機微とか、自力ではどうにもならない運命の切なさ、人生の重さなのではないかと思う。映画『山河ノスタルジア』で描かれた近未来中国の(あるいは中国出身の)人々もまた、感情を震わせて作品の中で生きていた。

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昆明からの夜行列車で見た車窓を眺める女性、憂いある表情が美しかった。
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雲南の街角では薔薇の花があちこちで咲き乱れていた。花びらを煮詰めた餡を挟んだ折り生地の焼き菓子もあった。
●『山河ノスタルジア』
監督/ジャ・ジャンクー
2015年、中国・日本・フランス映画
Amazon Prime Videoにて配信中
https://bitters.co.jp/sanga

●『中国手仕事紀行』
奥村忍著・在本彌生写真
青幻社刊 ¥2,750

>>「在本彌生の、眼(まなこ)に翼」一覧へ

*「フィガロジャポン」2023年9月号より抜粋

Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。

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