海辺の街、ストックホルムで過ごす冬。
在本彌生の、眼に翼。 2024.09.27
写真家の在本彌生が世界中を旅して、そこで出会った人々の暮らしや営み、町の風景を写真とエッセイで綴る連載。今回はスウェーデン・ストックホルムの旅。
海辺の街は夜霧に包まれて。
vol.18 @ スウェーデン・ストックホルム
昨年の同じ頃に撮影のためストックホルムを訪れた。大雪に見舞われ、あらゆるものが白い色に包まれて角を丸くし、夜の雪灯りが青白く照らす街の景色に魅せられた。一方、今年は雪がほとんどない代わりに、神秘的な夜霧に包まれた街に迎えられた。海辺に停泊した船を彩る灯りが滲んで、水面にも逆さ映しの景色が広がっている。不思議なことが起きてもちっともおかしくないムードだ。
妖艶な街の姿にすっかり心奪われ、歩きながら思わず何度も「うわぁ」と声をあげた。夜霧に包まれた街の光景を堪能すべく、宿泊先の船着場からいくつも橋を渡って、スウェーデン国立美術館まで歩いた。『DESIGN=MEMORY: Akira Minagawa&minä perhonen』展のレセプション会場へ。この展示開催にあわせ撮影を重ねた書籍『Textile Diary #1』はここでお披露目となり、なんともうれしい夜だった。
夢のようなイべントの後、美術館を出ると、儚いもので夜霧はどこかへ消えてしまっていた。寒空の下、繁華街で見つけたタイ料理店に入った。広い店内、大音量のカラオケで歌って踊る男女が底抜けに明るい。ここは、この街で暮らすタイ人コミュニティのミーティングポイントなのだろう。出会う文化も光景も、コントラストのある街は楽しみがいがある。客が歌うイサーン地方の歌謡曲をBGMにシンハーを飲み、山盛りのパッタイを頰張った。
皆川 明、田中景子共著
ミナ ペルホネン刊¥3,850
『さよなら、人類』
監督/ロイ・アンダーソン
2014年、スウェーデン・ノルウェー・フランス・ドイツ映画 100分
Amazon Prime Videoにて配信中
『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』
監督・脚本/ロイ・アンダーソン
1969年、スウェーデン映画 114分
*「フィガロジャポン」2024年8月号より抜粋
Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。