世界は愉快:クリスマス編 from ストックホルム スウェーデンのクリスマスは、ドナルドダックが定番?

世界は愉快 2020.12.24

文/神 咲子(在ストックホルムコーディネーター)

スウェーデンの一大行事はなんといっても24日のイヴに家族で祝うクリスマス。しかし、信仰心が厚くないスウェーデン人は特に教会に参拝するわけでもなく、ただただ家で過ごすということもあり、クリスマスディナーは特別な楽しみだ。

1.jpegスウェーデンらしい(?)白い灯のインスタレーション。トナカイじゃなくて大角鹿というのもまたまたスウェーデンらしい。photo:Krister Carlsson

基本テーブルにはニシンの酢漬けやミートボール、サーモンなどが並ぶのだが(実はミッドサマー食とさほど変わらず……)、なかでもクリスマスハムはマスト! テーブルを陣取るどでかい豚のハムは、事前にボイルされている市販品もあり、マスタードを塗ってパン粉をつけオーブンで焼けば出来上がり! ほかに、ジャガイモとアンチョビを使ったグラタンのような「ヤンソンの誘惑」という料理もあるが、やはりクリスマスハムの主役感にはかなわない。

x4P7Oj1Q.jpegクリスマスディナーには欠かせないクリスマスハム。こちらは知人の手作り。おいしいマスタードも忘れずに! photo:Anders Johansson

さて、もうひとつ恒例のクリスマスのイベントが、SVT (スウェーデン・テレビ)で放送されるクリスマスアニメを鑑賞すること。毎年24日の15時から「ドナルドダックと仲間から メリークリスマス」という10話編成のディズニーアニメ特番を、その日の19時からはスウェーデン童話「カール・ベッティル・ヨンソンのクリスマス物語」を家族で観るのが定番。日本のNHK「紅白歌合戦」と「ゆく年くる年」を観るような感覚なのだ。

2818199_SVT-KALLEANKA.jpg「Kalle Anka och hans vänner önskar God Jul(ドナルドダックと仲間から メリークリスマス)」(STV)。photo: Buena Vista 

スウェーデンではミッキー・マウスよりもドナルドダックのほうが主流で、図書館でもドナルドダックだけのコーナーがあるほど人気のキャラだ。ちなみにスウェーデン語でドナルドダックは、Kalle Anka (カッレ アンカ)。カッレがスウェーデンに多い男子の呼び名、アンカは鴨(ダック)という意味だ。1934年にミッキー・マウスと一緒に最初に登場した時、ドナルドダックの癇癪持ちで短気という性格が、当時のスウェーデン人のツボにハマったという説があり、以来ドナルドダックの人気がいまも続いているというのだ。

karl.jpgスウェーデン人みんなから愛される人気不動のクリスマスアニメ。「Karl-Bertil Jonssons julafton - Per Åhlins och Tage Danielssons julsaga sänds traditionsenligt på julafton(カール・ベッティル・ヨンソンのクリスマス物語)」(ターゲ・ダニエルソン著、イラスト・監督/ペール・オリーン、STV)。photo: Buena Vista 

「カール・ベッティル・ヨンソンのクリスマス物語」は、ロビンフッドを敬愛する14歳のカール・べッティル君がクリスマス休暇に郵便局でクリスマスプレゼントの仕分けのアルバイトをしてる時に、自分のお父さんが経営するデパートから所得税リストを盗み読んで、お金持ちの人達宛てに送られたクリスマスプレゼントを奪い、貧しい人々に分け与えるというお話。もちろんカール・べッティル君のお父さんは怒って、それぞれのお金持ちの家に彼とともに謝りに行くと、お金持ちの人達はみな口々に、彼らはあり余りほど物があるから、これ以上プレゼントはいらないと言う。むしろ、それらがプレゼントをもらえない人々に渡され、一石二鳥で逆に助かったと! こうやってカール・べッティル君の行いは許されしかも感謝までされて、めでたし、めでたしとなる。本当は悪い行いなのだが……。

これらのアニメ、何がすごいかというと、ドナルドダックは60年から、カール君の話は75年から、毎年のクリスマスイヴに全然変わらない内容で放映され続けていること。カール・べッティル君のお話はスウェーデンのクリスマス童話なので理解できるとしても、ドナルドダックは? しかもディズニーにはいろいろなお話があるのになぜ?と不思議でならない。

私が移住して間もない頃、知人のスウェーデン人家族とクリスマスを過ごしていたことがある。1年目はワクワク、ドキドキ。2年目はなんとなく「アニメの内容が去年と同じ気がするけど気のせい?」と思い、3年目ついに同じ内容だとわかったら気が緩み、放映中に寝落ちしてしまった。「サキコ、ネテルヨ〜……」とその親族一同に呆れられた次第だ。60年から45年も同じ内容だから当たり前といえば当たり前だが、スウェーデン人はこれらのアニメ番組を観ながら一緒に歌うし、一言一句すべてのセリフも間違えずに言える。すごいぞ(笑)!

今年も、もちろんみな観るのだろう。「God jul !!(スウェーデン語でメリークリスマス)」!

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texte : SAKIKO JIN

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