文/長谷川安曇(在ニューヨークライター)
ニューヨークには、プロポーズをするのにぴったりな場所がたくさんある。初めてエンパイアステートビルディングの屋上に上った時、夏の夕暮れ時にプロポーズしている人を見かけた。ガールフレンドが歓声をあげながら「イエス!」と言った時、周囲は祝福ムードに包まれ、その場にいるみんなが拍手喝采を送った。誰かの幸せそうな姿は、見ている人までハッピーな気持ちにさせてくれるからいい。ほかにもブルックリンブリッジ、セントラルパーク、ハイラインなどロマンティックなスポットが多く、ニューヨークではプロポーズをする場所に悩むことはない。
毎年バレンタインデーに2組のカップルがタイムズ・スクエアで結婚式をあげられるイベント「ラブ・イン・タイムズ・スクエア」。photo:Ian Douglas for Times Square Alliance
タイムズ・スクエアもそのひとつで、毎年バレンタインデーには「ラブ・イン・タイムズ・スクエア」と題したプロポーズのイベントを開催している。一般公募から選ばれた3組のカップルがサプライズでプロポーズができ、その様子が巨大なスクリーンに映し出されるというもの。また結婚式や、すでに婚姻関係にあるカップルがもう一度愛を誓い合う「ボウ・リニューアル・セレモニー」も開催。2021年は2月10 日から3月10日までハートをテーマにしたパブリックアートが展示され、楽しいイベントがたくさんだ。
「Will you marry me? (結婚してくれますか?)」というメッセージが巨大なスクリーンに映し出されるプロポーズのイベント。photo:Ian Douglas for Times Square Alliance
子どもとともに、愛の誓いの再確認を行ったカップル。photo:Sara Kerens for Times Square Alliance
公の場でプロポーズをしたからといって、相手が「イエス」と言わないケースも、もちろんある。いつだったか小さなシアターでの、誰でも飛び入りで歌や芸などのパフォーマンスを披露できるオープンマイクの日のできごと。ステージに上がった男性が恋人の女性をステージにあげ、プロポーズする場面に遭遇した。だが、彼女は「ノー!」と言って走ってどこかに行ってしまったのだ……。周囲はとっても気まずい雰囲気に包まれたけど、いまでもたまにあのふたりはどうなったのだろうと考えることがあるくらい印象的な出来事だった。
ちなみにニューヨークのバレンタインデーは、異性同士のカップルの場合は男性から女性に、またはお互いにプレゼントを贈り合うことが多い。ギリギリまで用意しなかったのか、当日地下鉄の中でハートがたくさんついた風船を持ちながら、バレンタインのカードを自分の膝の上で(とても書くにくそうに)書いている人を見かけたこともある。
ニューヨークのアンドリュー・クオモ州知事は、新型コロナウィルスの感染率が減少傾向にあることから、12日(金)から収容人数の25%でレストランでの屋内飲食を再開することを認める意向を発表。また3月中旬から参列者の人数制限やPCR検査の義務などの条件付きで、結婚式の再開も認めるとのこと。「州政府が個人にプレッシャーをかけるわけではないけれど、バレンタインデーにレストランに予約をしてプロポーズをしたら、3月15日に結婚式ができる」と州知事はコメント。
多くのカップルがそうなるといい。ハッピー・バレンタイン!
texte:AZUMI HASEGAWA