文/神 咲子(在ストックホルムコーディネーター)
おもしろい標識やサインは世界中にあるが、スウェーデンにもお国柄を表すおもしろい道路標識がある。まずはなんといっても、ムース(大角鹿)やトナカイ、イノシシが描かれた動物注意の標識だ。特に北の方や都市から離れて田舎へ行けば行くほどたくさん現れる。
ムースや猪は年々増えすぎて害獣扱いになり、狩猟も許されている。photos:Transportstyrelsen
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ほかに、カエルが描かれた道路標識が住まいの近所にある。最初は、これ何かの冗談?と思ったが、カエルに注意の真面目な標識なのだ。近くに小さな湖があり、大雨が降った日の翌日にカエルが繁殖し、道路にこれでもかというほどの数のカエルが這って出てくるのだ!(ちなみにガマガエルではなく小さめのカエルだが)アメリカ映画『マグノリア』(1999年)のラストシーンを覚えている人はわかると思うが、まさにカエルが降ってくるとはこのこと?と思い出すほど。
ただ、あまりの出没数に車で通る時は避けようがなく、お陀仏状態で何度カエルに向かってごめんなさいを唱えたことか。photo:Leif Hansson
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そして、おそらくこれだけはスウェーデンにしかないのではと思うのが、屋外トイレのサイン。なぜかハートのマークなのだ。昔ながらのサマーハウスや郊外にある屋外施設の外トイレにはほとんど「WC」の代わりにハートのマークが描かれている。もしくは、ハート形に穴が空いたもの。なぜハート形になったのかは、はっきりした理由がないようだ。
photo:Transportstyrelsen
ただ、スウェーデンには「Finns det hjärterum finns det stjärterum」(直訳すると「もしハートの部屋があるなら、お尻の部屋もある」という諺がある。意味は「もし心温まるおもてなしができれば、面倒で不快な事も楽に済むはず」というようなものなので、Stjärtの意味であるお尻を逆にして、ハートとお尻を掛け合わせたことで生まれたという云われも。定かではないが、私を含め一部の人は、ハートに見えるが実はお尻を逆さまにしただけというこの説を信じている。
ふだんはクールな気質のスウェーデン人も、こういうおもしろいサインを作るユーモアがあるんだなと、屋外トイレのドアを見つけるたびになぜかうれしくなるのだ。
実は、もうひとつその諺には「仲良し同士なら、ぎゅうぎゅう詰めでもみんなで入れるだろう」という意味もある。地域で共同トイレを利用していた時代には、秘密の会話をする場所でもあったそうだが……。photo:John Elliot
texte:SAKIKO JIN