文/坂本きよえ(在ミラノジャーナリスト)
キリスト教ではいちばん大切な行事のひとつ、イースターは、キリストが十字架にかけられ亡くなって3日後に復活(息を戻した)した日を祝う復活祭。イタリアではPASQUA(パスクワ)と呼ばれ、春分の日の後の最初の満月から数えて最初の日曜日がそれにあたる。2021年は4月4日だった。たくさんの動物の子どもが生まれる時期でもあるので、ミラノの街も小さなヒヨコやウサギ、ヒツジなどの動物のオブジェがウィンドウに並び、華やかになる。
パスクワはケーキ職人の腕の見せどころ。こちらはチョコレート。
春の訪れと重なるパスクワの日は家族で集まりランチをし、次の日は前日の料理の残りを持ってピクニックに出かけるのが習慣だ。とにかくイタリアではカトリックの催事に家族で集まり祝うので、家族の絆が強いのかもしれない。
パスクワに食べられる料理は地方それぞれ、食べるケーキも甘い物とそうでないものとあっておもしろい。なかでも、上品な味で非常においしかったのがマルケ地方のものだ。マルケは、世界的な旅行ガイドブック「ロンリープラネット」の人気の旅先で2位に入ったこともある場所で、新鮮な魚介類をはじめ、おいしい食文化があるイタリアの関西のような場所だと思っている。
マルケ地方のやわらかいピッツァ、ピッツァ・デラ・フォルマッジョはカッチョチーズ入り。
羊の形をしたクッキーのようなケーキ。アーモンド粉を使って作る。
マルケ地方では教会の信者たちも参列し、イエス・キリストが死刑になった時の様子を再現する祭りも行われ、宗教色の強い郷土文化がみてとれる。
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その他の地方の食べ物も少し紹介しよう。
まず、ナポリの有名なケーキ、カザティエッロナポリターノ。鳥の巣のような形で殻付きの卵がまるごと焼きこまれていて、中にはチーズとベーコンも入っている甘くないケーキ。これを持ってパスクワの翌日にはピクニックへ出かけるのが一般的。
同じくナポリでメイン料理として供されるアニエッロ・アル・フォルノ(羊のオーブン焼き)。北部でも食べる地方も。
イエスキリストがなくなる前日に食べたと言われる食べ物、ムール貝のスープもナポリではパスクワの定番。
ジェノバ地方のトルタは、中にフレッシュビーツと野菜がたっぷり入っている。とにかく卵はパスクワに欠かせない食材。
ジェノバで食べられるケーキ、カヴァニェッティ。
ミラノは、卵形のチョコレートや鳩の形を模したコロンバが有名。こちらは1824年からあるケーキ屋さんのもの。決して安いものではなく、大きいのでふたり家族なら1週間かけて食べることに。
texte:KIYOE SAKAMOTO