世界は愉快 ガーデニング編 from スウェーデン おとぎの国? スウェーデンの小さな庭と小さな小屋。

世界は愉快 2021.05.08

文/神 咲子(在ストックホルコーディネーター)

スウェーデンのガーデニングといえば、Koloniträdgård(コロニートレードゴード)。コロニーは集団や村、トレードゴードは庭園の意味で、市民庭園(レンタルガーデン)を指す。略して「コロニー」とか「コロ」と呼ばれている。まるでおとぎ噺の中にでもさまよい込んだ感覚に陥るのは、区分けされた庭の面積が小さめで、それぞれに属するStuga (ステューガ)と呼ばれる小屋が可愛いこと極まりないからだ。

6ffd30de22-kolonipic1.jpgphoto:Luleå Koloniträdgårdsförening

 

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コロニストたちが建てた小さなステューガはデザインもそれそれで、素晴らしい庭同様に一見の価値がある。基本は電気や下水道が施されておらず、休憩場所や道具小屋として使われているが、中には設備が整って宿泊できるようになっているものもある。photo:Luleå Koloniträdgårdsförening

このコロニーの発端は1880年、スウェーデンに他のヨーロッパよりもちょっと遅れて産業革命が訪れ、工場ができ、人々が仕事を求めて大都市に移り住んだことに始まる。ストックホルムの政治家であり看護婦でもあったアンナ・リンドハーゲンが労働者たちの劣悪な3K住居事情をなんとかして変えたい、またその子どもたちの健康と新鮮な空気の中での遊び場をと願い、デンマークとドイツから流布してきたコロニーガーデン市民運動をスウェーデンで立ち上げたのだ。自給自足にも繋がったコロニーは、第1次、第2次世界大戦時の食糧難の際にも大いに役立ったという。

sommar.jpg初夏のコロニー。リンゴの花が咲き始め、本格的なシーズン到来に緑や色とりどりの花が太陽に輝いている。photo:Anders Myrin
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ある年はいちご畑が豊作。このステューガはオーブンや冷蔵庫があり、自分たちの育てた野菜などを採りたてで楽しめる。photo: Björn Myrin
 

それぞれ自治区の組合・協会が管理していて、空きが出ると応募者の中からいちばん適正のある人が選ばれる仕組みだ。大小さまざまで、郊外には本格的に野菜を育てられる大きさのコロニーもあり、もちろんサイズによって利用料も変わる。適正のある人……つまり、コロニストというコロニーの持ち主になるためには、配分される土地をきちんと利用し、植物を育てる時間を充てることが出来る人。また、子どものいるファミリーが優先されるという具合に、道は厳しい。「きゃ~可愛い~!  コロニストになりたい!」などミーハーな気持ちだけで、ガーデニングの才能があって植物を愛でる心がない人にはなれないのだ。

hîst.jpg秋のコロニー。冬支度の前で落ち葉などをレーキでかき集め、収穫できるものはすべて 摘み取ってしまうのが原則。photo: Anders Myrin

厳しい審査を勝ち抜いたコロニストたちが作りあげたコロニーの庭は、道行く人々も立ち止まってその景観を楽しめる。5月現在、スウェーデンは雪が溶け、まさに種撒きシーズン。コロニストたち大忙しの、ガーデニング本番の季節がやってくるところだ。

tidig vÜr.jpgストックホルム市内にあるコロニーのひとつ。5月から、ガーデニングシーズンに向けて準備が始まる。コロニストたちがそれぞれ建てたステューガはほとんどが10㎡以下しかなく、まるで童話の世界!photo:Anders Myrin

texte:SAKIKO JIN

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