写真・文/長谷川安曇(在ニューヨークライター)
ウェストサイドハイウェイを自転車で通るたびに、建設中の巨大な公園のようなものはいったい何なのだろうとずっと思っていた。その答えがついに明らかになった。
2021年5月末にハドソン・リバー・パーク内にオープンした「リトル・アイランド」だ。ハドソン川に132本のコンクリートの杭を建て、その上に“浮かぶ”水上公園で、水面に浮かぶ葉がモチーフになっている。園内には展望台やカフェ、芝生の広場、円形劇場アンフ、そして随所にアート作品も設置されている。アンフでは、演劇や音楽などのパフォーマンス公演が予定されていて、いまから楽しみなスポットだ。
デザインは、イギリス人デザイナーのトーマス・ヘザーウィックによるもの。ヘザーウィックは、ハドソンヤードの巨大なインスタレーション「ヴェッセル」を設計したことでも有名だ。
チューリップ型の杭が水中に建っている。
円形劇場アンフは、約700席。地元のアーティストたちが多く出演する「フリー・ミュージック・イン・アンフ」など、催しが開催される。
---fadeinpager---
遠目から見ると、公園の丘は急斜面に見え、頂上まで行くのが大変そうに感じるが、実際に登ってみるときつくないので、私のように普段から階段を見るだけにため息がでてしまう人でも大丈夫。
リトル・アイランドがほかのニューヨークの公園と一線を画しているのは、なんとアルコールを販売していること(19時〜23時)! ニューヨークでは、アルコール販売をしている公園が非常に限られていて、ほかにはセントラルパークのデラコルテ劇場内くらいしかない。夏の夕べにハドソン川からそよぐ風を受けて、アウトドアで飲むワインやビールは格別なので、ドリンカーにとってはうれしいポイントだ。しかも、「ブロンクス・ブリュワリー」や「モントーク・ブリューウィング・コー」など人気ブランドの地ビールを取り揃えていて、なかなかセンスが良い。
軽食やドリンク類を販売するカフェスペース。
見晴らしが良く、エンパイアステートビルまで見渡せる。建設プロジェクトは2012年に開始。
ちなみに公園の建設資金は、メディア王バリー・ディラーとその妻で著名なファッション・デザイナー、ダイアン・フォン・ファステンバーグの財団が2億6000万ドル(約280億円)を寄付したという。今後20年間、ディラー氏が公園のメンテナンス費用も支払う。
---fadeinpager---
平日の朝だというのに、園内はすごい人出だ。ニューヨークに徐々に戻ってきた街の活気が感じられる。多いのは、お年寄りのグループ客。パンデミックの影響で、最近まで多くの年配の人々が街に繰り出す姿を見なかったので、ワクチン接種が進んだ結果のようだ。多くのシニアがアウトドアをエンジョイしているのを見るのもうれしい限り!
多くの人であふれる展望台。夕暮れ時は、ハドソン川に沈む夕日も堪能できる。
インスタレーションアートも所々に設置されている。
www.littleisland.org
photography & text: Azumi Hasegawa