スープ編 from スウェーデン 定番はパンケーキと?木曜日に食すスウェーデンの豆スープ。

世界は愉快 2022.01.02

神咲子

今年は南部スコーネ地方でもすでに11月には雪が降り、極寒が予想されるスウェーデン。セントラルヒーティングのおかげで家の中は暖かく、室内ではTシャツ1枚で過ごすことも珍しくない。だがやはり外は雪降る中、暖かいスープで暖をとる幸せなひとときは何物にも変えられないものだ。

「黄豆のスープ」(ärtsoppa)は、スウェーデンの伝統的なスープといえば唯一と言っていいくらいのメニューだ。このスープにはえんどう豆の1種、黄豆と塩漬けした豚肉を茹でたものが入っているのが一般で、家庭料理の代表的一品。学校給食や社食、レストランのランチでもお見受けするが、登場するのは必ず木曜日と決まっている。

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あるレストランのランチで供された黄豆スープ。トッピングにマスタードを忘れずに! 少しずつスープに馴染ませながら食べるか、最初に全部混ぜて食べるかお好みで。

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西暦1200年代からこの黄豆スープは食されていたという。かつてはカトリック教の慣習で、キリストが亡くなった金曜日は肉を食べず粗食や断食が行なわれていた。だからその前日の木曜日の食事は金曜日まで持ち堪えるようにと、お腹にたまる黄豆とその当時安く手に入った豚肉を薪ストーブの上に置いた鍋でグツグツと煮込む料理がご馳走だったのだ。

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主な材料は黄豆、玉ネギ、ニンジン、胡椒、マジョラム、タイム。これに塩茹での豚のかたまり肉をさいの目に切ったものを入れるのが定番。豚肉なしでベジー向けにアレンジもあり。

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作り方はいたって簡単。茹でる前に乾燥している固い豆を長時間浸水しておくのが大事だ(できたら24時間)。あとはほかの材料とゆっくり1~2時間煮込めば出来上がりだ。豆の食感を残したい人は煮込まず茹でたままでよし、クリーミーに仕上げたい人は茹で上がった豆をマッシュするもよし。ただ忘れてはならないのが、最後の仕上げのマスタード! このマスタードが豆のもっさり感にパンチを効かせてくれる。

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長く煮込めば煮込むほど、豆が自然に崩れてホクホクになる。私は約4時間煮込んだ。カレーではないが、次の日に食べるとさらにうまい!

スウェーデンを含む北欧ではレストランでスープを注文すると、残念なことにしょっぱく温度がぬるいものが出てくる。だがこの黄豆スープは茹で豚の塩気を利用するので塩自体をあまり追加せず、豆本来のやさしい味が感じられなんとも滋味深いのだ。和食や中華料理のスープみたいにアツアツじゃないのは少し残念だが、それでもこのぬるさがスウェーデンの冬にほっこりとした幸福感をもたらせてくれるのである。

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木曜日に食べる黄豆スープだが、デザートはなぜかパンケーキと決まっている。レストランでも学校給食でも一緒に登場するのが一般的。スウェーデンのパンケーキは日本のクレープにあたり、ホイップした生クリーム(砂糖なし)とジャムをのっけるのが常だ。

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今回はいちから作ったが、横着したい人にはもちろん温めるだけの出来合いのものも手に入る。でも、コトコトとゆっくり黄豆スープができる様を楽しむのがなかなかいいのだ。

photography & text: Sakiko Jin

神咲子

在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデンの北部ウメオ市とスンズヴァル市を運転する日々を送る。

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