スウェーデンは、2021年3月に世界経済フォーラム(WEF/World Ekonomic Forum)が公表したジェンダーギャップ指数で世界5位と評価されるほど、男女格差が少ない国としてよく知れ渡っている。にもかかわらず、ほかの北欧諸国に比べると、特に政界においては遅れに遅れをとっていた。
スウェーデンで女性の参政権が認められて100年後、ようやく初の女性の首相が誕生した。その名はマグダレナ・アンデション(55歳)。だが喜んだのもつかの間、スーパーウェンズデーと呼ばれた昨年11月24日、わずか8時間で(明智光秀の三日天下よりずっと短い……!)一度首相の座を辞任する事態となったのだが。
スウェーデン初の女性首相マグダレナ・アンデルション。
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国会に議席をもつ8党の中で、ロベーン元首相の後任としてマグダレナが党首として率いる中道左派の社会民主労働党は支持率がもっとも高い与党ではあるが、中道派の環境緑の党と連立政権をとろうとしていた。その緑の党が議会が可決していた予算案に反対し、政権を離脱したのだ。連立政権の場合、時の首相が辞任する決まりになっているため、一度辞任することになったというわけだ。
しかし、国会議長は4回まで新首相を推挙できるため、再びマグダレナを推挙、11月30日には再びスウェーデン初の女性首相の座に返り咲き、新政権を発足させた。
中央党の党首アニー・ルーフ(38歳)。マグダレナが再推薦された後は、首相として承認した。photo: Centerpartiet
マグダレナとの話し合いで、自分たちの予算案を通すことで首相就任に賛同した野党、左翼党党首ノーシ・ダダゴスタル(36歳)。photo: Vänsterpartiet
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波瀾万丈の首相就任劇後もすでに前途は険しいが、マグダレナは首相になる前は財務大臣のポストで辣腕を奮っていた。20年には国際通貨金融委員会(IIMFC)初の女性議長に就任、09年から12年にはスウェーデン税務局の最高責任者を務めていた経歴をもつ。特に経済に秀でたトップ政治家だから、堅実で冷静沈着とうい言葉がピッタリのキャラクターと不屈の精神で何度でも起き上がり、立ち向かうであろう。
人種差別の撤廃、環境問題、労働基準法改善が自信の政策理念でもある彼女は、初の女性首相ということについてはこう語っている。「誰かの励みになるようだったらうれしいことだが、それが自分の政治力を駆り立てるものではない。あくまで私はスウェーデンにある不平等に一政治家として立ち向かい、それらを無くしていきたい」
ちなみに、スウェーデンではほとんどの人が初の女性首相だからと騒ぎ立てていない。確かにマグダレナはスウェーデンでは初だが、北欧諸国では16番目。トップバターはノルウェーのグロ・ハーレム・ブルントラントが1986年に就任しており、それからすでに36年も経っている。
スウェーデンの国会議員に女性が占める割合は、70年代から80年代は4分の1程度だったが、90年代からは約半数をキープ。現在も国会に議席を持つ8つの政党のうち6つの党の党首は女性であるし、大臣などのポストも同様だ。一般企業の女性管理職の割合については、2017年時点で37%と98年の17%から2倍以上の伸びを示している。
マグダレナ首相を初め、スウェーデンの女性リーダーのますますの活躍に拍手を送りたい!
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首相の趣味は野外活動。氷上でのスケートを楽しみながらビデオで新年の挨拶をするマグダレナ。水泳はエリート並みという。
text: Sakiko Jin

神咲子
在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデンの北部ウメオ市とスンズヴァル市を運転する日々を送る。