いつか泊まりたい話題のホテル from ベルリン ベルリンの女子刑務所が、瀟洒な隠れ家ホテルに変貌。

世界は愉快 2022.05.01

河内秀子

ベルリンでいま泊まりたいホテルといえば、2022年4月1日にオープンしたばかりのヴィルミナだろう。ラグジュアリーブランドが軒を並べる豪華なショッピングストリート、クーダムから徒歩10分ほどの賑やかな繁華街にあるとは思えない、緑に囲まれた閑静な立地。実はここ、以前は女子刑務所だった物件なのである。

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10年間かけて手入れされた庭が美しい。photography: Patricia Parinejad © Wilmina

1896年にバロック様式で建てられた刑事裁判所。その喧騒から距離を置くように庭を挟んだ裏手に、人目を忍ぶ赤レンガ建築の刑務所が作られた。さまざまな歴史を経て1985年に刑務所が閉鎖となった後もこの場所は登記所の資料室などとして使われていたが、建築家カップルのグリューントゥッフ・エルンスト・アーキテクツが購入。10年もの歳月をかけてリノベーションを行い、元裁判所の建物はアート関係のイベントスペース、刑務所の建物は隠れ家的なホテルとレストランとして生まれ変わったのである。

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レストラン、ローヴィスはベルリン子たちにも人気のアドレスとなっている。photography: Robert Rieger © Wilmina

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他人を寄せ付けずに隔離するための場所である刑務所から、すべての人を温かく受け入れる場所としてのホテルへ。文化財に指定されている建物は建築自体を大きく変えることは許されない。制限のある中で、正反対の意味を持つ空間を作り出すのは至難の業だったという。

ホテルに到着した客は、まず通りに面したレセプションで迎えられる。チェックインを済ませたら、広々とした庭を抜けてホテルの建物へ。寒々しい芝生だった場所には10年前から木や花が植えられ、いまや庭園の趣すらある。

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庭から建物に入ってくると共有のラウンジが。自由にお菓子や飲み物を楽しめるくつろぎの空間。photography: Patricia Parinejad © Wilmina

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小さな建物は、以前は刑務所に連れて来られた囚人が最初に通る門だった。いまはその上に屋根を作り、モダンなドイツ料理を食べることができるレストランになっている。いかにも刑務所らしい吹き抜け部分には、リサイクルガラスのペンダントライトを吊り下げて、暖かいムードを演出。刑務所のドアを使った入口から足を踏み入れると、中庭からの光が部屋いっぱいに広がっていた。

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刑務所時代の柵を生かした吹き抜けには、ボッチのペンダントライト。photography: Patricia Parinejad © Wilmina

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建物の最上階に増築したペントハウススイート。photography: Patricia Parinejad © Wilmina

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全44室の部屋は最上階のペントハウス以外、刑務所時代の作りを生かしてはいるが、いちばん小さな部屋でもふたつの独房を繋げた広さでゆったり。窓も建設当時の窓枠を使って鉄格子をそのまま残しているが、開口部を広げているので開放感がある。リネン類はすべて白、家具も明るい色の木製のもので統一し、軽やかだ。ベッドサイドにはさりげなくオーナーの子どもたちが中庭で集めて作ったという押し花のオブジェが飾られている。

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刑務所の独房だった時代の丸い入口や窓などのディテールが残る。photography: Patricia Parinejad © Wilmina

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部屋には庭の植物を使ったアート作品がディスプレイされている。どれもオーナー家族の子どもたちが作ったものだ。photography: Robert Rieger © Wilmina

便利な大都市のど真ん中にいながら、まるで郊外のゲストハウスを訪れているように静かで落ち着いた気持ちになれる最高のホテルだ。

ヴィルミナ
https://wilmina.com/

 

text: Hideko Kawachi

河内秀子

ライター。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学在学中に、雑誌ペンなど日本のメディアでライター活動を始める。好物はフォークが刺さったケーキ、旧東ドイツ、マンガ、猫。ドイツでも日本でも「そとのひと」。 twitter:@berlinbau

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