スウェーデンのツリーホテルで自然を満喫したり、フィンランドでのガラスイグルーに泊まってのオーロラ観測、はたまたノルウェーで一等船に乗り、お誂え向きのフィヨルド旅行を経験するなど、贅沢な旅を夢見るときりがない。
昔から「タダ(無料)ほど高いものはない」と言われるが、ここでは敢えてスウェーデンでできるタダ旅行を心の贅沢に置き換えてご案内したい。
Trafikverket (トラフィークヴェルケット)という国営の交通当局が運営しているフェリーが国内に40箇所あり、道路や橋がない大小さまざまな島と本土との交通手段となっている。photography: Sakiko Jin
車だとお金がかかる路線もあるが、歩行者や自転車通行人は基本タダ。5分以内から1時間弱に及ぶものまであるので場所によっては船旅で孤島に赴く感がある。ほとんどの島が自然保護区域だったり、観光場所にもなっている上にフェリーで無料で行けることも手伝ってか夏場は大人気だ。
ストックホルムだったらEkeröleden (エーケル島線)を使い自転車でぐるりと回りながら、王室一家が居住するドロットニングホルム宮殿や庭園に寄るのもありだ。南部スコーネ地方ではIvöleden (イーヴ島線)で恐竜の歯や骨が見つかった石灰岩採掘場のおもしろい風景を楽しめる。また北部ウメオ地方のHolmöleden(ホルム島線)では初級から上級コースまで数あるトレッキングで島を知り尽くすことも可能だ。photography: Sakiko Jin
などなど、それぞれの島の醍醐味を徒歩や自転車で十二分に味わえる。本来は夏がオススメだが、ほとんどの路線が夏場は大人気なので静かに旅行したい人にはシーズンのちょうど始まり前か後がおすすめだ。ただし、その場合は時刻表を要チェック! 島に住んでいる人たちの足になるので1年中フェリーは通っているが、本数がかなり少なくなる可能性もあるので注意が必要だ。
他には以前に「知られざる絶景」で紹介した場所がまたがるVisingsöleden(ヴィーシングス島線)もこのフェリー運営航路に含まれているが、残念ながらあまりの人気ぶりのために料金がかかる。(大人ひとり往復70SEK。2023年5月現在)
ゆっくり、ほっこりの代名詞でもあるかのようなスウェーデン、時間と心にゆとりを持つスウェーデン流の贅沢なタダの旅をぜひお試しあれ!
ちょっと変わったオブジェを見つけるのもそれぞれの島々ならでは。
ホルム島にある灯台。この灯台に隣接した宿泊施設があり、この島同様他の島々でも日帰りのみならず、連泊して島を楽しむこともできる。photography: Sakiko Jin
https://www.trafikverket.se/farjerederiet
text: Sakiko Jin
神咲子
在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデンの北部ウメオ市とスンズヴァル市を運転する日々を送る。