センスの良さとさまざまな人に向けたアイテムを展開するアメリカの水着ブランド「キティ&バイブ」の調査によれば、水着選びの過程が嫌いという女性は98%。楽しいはずの買い物なのに、体型にぴったり合うビキニは簡単には見つからず、追い討ちをかけるように試着室の蛍光灯は水着姿をきれいに見せないし、ネットを利用してもサイズ感が分からず疑問や憂鬱は募るばかり。そんなビキニ難儀は自分だけ? と疑問を持ったキャメロン・アームストロングは人ごとならぬビキニ事情を問題提起し、ユーザーが心から楽しく、自信につながる水着経験を目指して、2017年に水着ブランドの発足に取り組んだ。
彼女が毎週自宅アパートに人を集め、採寸と市場調査を重ねて達した結論は、ビキニボトムには立体的なおしりのサイズ感がもっと必要なこと。例えばぐるっと横幅を測定したヒップの寸法は同じでも、おしりが小さい(=フラットな)キャメロンのビキニは水から上がると「まるでおむつのように垂れる」し、おしりが大きい(=ぷっくり盛り上がる)友人はカバー率が低すぎると嘆くように。
キティ&バイブのビキニボトムは10のヒップサイズ(XS〜6XL)それぞれに、小さめのおしりと大きめのおしりサイズがあり、どのタイプも20サイズから選べる。まさにさまざまなおしりのためにデザインされ、自分のおしりで選ぶ水着なのだ。
"おしりのサイズで選ぶビキニ"ブランドキティ&バイブ
新シーズンの水着柄をSNSのユーザー投票で選んだり、水着を購入すると水着のムードを表現するプレイリストがついてきたり、水着のモデルを一般ユーザーから公募し、写真は一切加工しないことなども、ありのままの自分をエンジョイするコミュニティを大切にするブランドの誠意を込めたアイデアだ。
「みんなの希望に応えてサイクリングショーツを検討中。意見を聞かせて!」との投稿ではフォロワーに生地や柄の好み、長袖のオプションなどの質問を投げて、共同クリエイションを促している。
この夏はブランド初のセレブコラボをローンチ、俳優のニコル・バイヤー(プラスサイズ)やゾエ・コレッティ(腹部手術の傷)、テニスプロのスローン・スティーブンス(筋肉質のアスリート)らとのコラボレーションは多彩なボディタイプとスタイルを水着で祝うブランドの指針にかなったペアリングとなった。彼女たちの個性が表現される水着はベストセラーに。
俳優、コメディアン、監督、著者などマルチに活躍するニコル・バイヤー。「私は自分の水着姿が大好き。おいしそうでしょう。みんなにも自分の身体がすてきと思えるようになって欲しい。そのためには水着ブランドがインクルーシヴな水着を作らないと。」
俳優ゾエ・コレッティのコレクションはロマンティックキュートな"バイブ"が4種類。疾患による腹部の傷を露出、「これは私の強さの証し」とメッセージにする。同じ傷を持つユーザーから感謝の声の投稿もあり。
プロテニス選手のスローン・スティーブンスのコレクション。着用のビキニボトムは52ドル、ホルタートップ58ドル、混麻のカバーアップシャツは58ドル。
キティ&バイブの"キティ"は他ブランドにはないユニークで豊富なサイズのビキニボトム&トップ、ワンピース水着、カバーアップ、水着とカジュアルウェアが一体化したプレイワンピース、パジャマなどの商品を意味する。一方"バイブ"は商品の柄や個性が表現するムードのことで、ブランドアイデンティの大事な個性だ。商品にはムードに合わせたプレイリストがついていて、水着が届いたらさっそくプレイリストの音楽を聴きながら試着を。新しい水着と音楽で揚げた気分は、夏が終わらないうちに一路お気に入りの海やプールへ。
text: Chinami Inaishi
稲石千奈美
在LAカルチャーコレスポンデント。多様性みなぎる都会とゆるりとした自然が当然のように日常で交差するシティ・オブ・エンジェルスがたまらなく好き。アーティストのアトリエからNASA研究室まで、ジャーナリストの特権ありきで見聞するストーリーをエディトリアルやドキュメンタリーで共有できることを幸せと思い続けている。