2019年にレストラン・ノーマのシェフたちが発酵ガイドを出版して以来、国内外の発酵食への関心が高まっているコペンハーゲン。最近は味噌やテンジャンなどの東アジア発の発酵食からヒントを得たメニューを出すレストランが増えているが、特によく目にするのが、キムチ。韓国料理店だけでなく、和食ダイニング、居酒屋、ラーメン店などのサイドメニューにも必ずあるから、デンマーク人はキムチが日本の漬物だと信じて疑わない。
また、カフェやベーカリーでは、キャベツのキムチがサンドウィッチやベーグルの具に使われるなど、お馴染みのキムチがオシャレなピリ辛ピクルス“キムチ”に変身している。
こういう伝統にこだわらないキムチブームを牽引しているのが、コペンの“キムチ・クイーン”として知られる、ニューヨーク出身の韓国系アメリカ人、カラ・ソンさん。
コペンハーゲン市内の食材店やカラさんのWEBサイトからも購入できる。毎月中身が変わるサブスク制度もある。photography: Andrea Eiber
赤はKala’s Kimchiのシンボルカラー。photography: Kala Sung
ニューヨーク大のフードスタディ科の修士を終了後、Culinary Institute of Americaで学んだ食の専門家で、コペンハーゲン好きが嵩じて、2019年からノアブロ地区に移住した。幼い頃から親しんだ味を生かし、キムチのポップアップやワークショップなどの主催、エコ・ファーマーマーケットへの参加など、積極的に活動している。また、友人のファッションデザイナーのショーでは、自称“キムチ・ウォーク”もしてしまう、フットワークの軽さも評判だ。
スイカの皮を使ったKimchiの準備中のカラさん。帽子好きだから、いろいろと持っているそう。photography: Andrea Eiber
「キムチは伝統的なものだとはいえ、材料は旬の野菜や昔からその土地にあるものを使えばOK。それぞれのキムチが作れますよ」とカラさん。例えば、デンマークではキャベツやコールラビ、イタリアではチコリ、アフリカではオクラという具合。国内外でのポップアップの経験があるから、食材の使い方のアイディアも豊富だ。
スイカの皮のキムチのデモンストレーションは、"スーパー・キレン"の黒の広場にて行われた。photography: Mathias Haugaard, Platesfromaplant
友人のファッションデザイナー、ヘンリック・ヴィブスコウのショーで、アマチュアモデルとして参加したカラさんの自称「キムチ・ウォーク」。コペンハーゲンファッションウィークの2024SSショーより。photography: @kalaskimchi
「おいしいものを食べると幸せな気分になるでしょう? 料理は栄養だけでなく、メンタルヘルスと繋がっていることを、キムチを通じて伝えていきたい」と楽しそうに語るカラさんの活動から目を離せない。
text: CHIEKO TOMITA
冨田千恵子
コーディネーター兼ライター。デンマーク在住30年以上。デザイン、建築、アート、街並み観察、犬ネタが得意なジャンル。音楽はラヴェルが好きな北欧のフランスファン。
Instagram: @chi.tomita photography: Kazue Ishiyama