アメリカでは近年、女子サッカーやバスケットボール、テニスを筆頭に女子スポーツの人気や話題性が急増している。世界的超級アスリートのミーガン・ラピノ選手やセレーナ・ウィリアムズ選手らがトップセレブとしてムーブメントをリードしてきた。ヘリコプター事故で亡くなったNBAコービー・ブライアント選手も女子スポーツに献身していたひとりで、ヘリに同乗していた娘もWNBAへの期待とともに惜しまれたことが記憶に新しい。
photography: Shannon Dupre
photography: All Y'all Creative Agency
さらにアメフトやNBA、MLBの目玉中継でも試合を熟知する女性解説者が認められレギュラー出演ポストを獲得したり、賃金や待遇の平等化、セクハラ・パワハラ問題など課題へのタックルも激しい女子スポーツは、中身も周辺も面白い。とはいえ、アメリカのスポーツ中継は依然として男性スポーツが主流。全米にこんなにもあるのかと思うほど存在するスポーツバーのモニターで、試合中継が放送されていることはほぼないのが現状だ。その問題を解決する場として、全米初の女性スポーツ中継専門のスポーツバー 「スポーツブラThe Sports Bra」がポートランドにある。2022年にオープンしたスポーツブラ(Sports Bra)はスポーツバー(Sports Bar)をもじった命名で、スポーツファンの女性や女子スポーツを観たい人が男性に遠慮なく集まれるスポーツバーなのだ。LGBTQ+コミュニティはもとより、ジェンダーを問わずファンが増えており、今年のワールドカップは時差にもかかわらず生中継放送で盛り上がった。(通常は時差のある世界大会中継は録画を再生している)スポーツブラは地元の女子スポーツファンの集会場として、WNBAをポートランドに誘致する運動ほか、女子スポーツの支援向上へのイベントなども展開している。
photography: Dorothy Wang
ポートランドの女子スポーツのファンたちが集まるスポーツバーは女子スポーツの中継観戦だけでなく、コミュニティづくりの空間でもある。顧客と会話するオーナーのTシャツのメッセージは「女性に投資を、女性に賃金を、女性の雇用を」
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バーで行われたポートランドへのWNBAチーム誘致イベントには元WNBA名選手ダイアナ・タラシ(写真左)やスー・バード(写真右)らも参加し、ファンと交流した。ファンの集客力を実証したイベントは店に入りきれないファンが外にあふれるほどの盛況ぶりだった。
photography: StarChefs
創設者&オーナーのジェニー・グゥエンは、スポーツバーで女子スポーツが中継されていない不満から、私財を投資してザ・スポーツブラを起業。1年間で100万ドル近い売り上げを達成した好調ビジネスは他都市にも展開を計画中だ。
photography: StarChefs
ドリンク&フードプログラムはローカル色を重視した。こちらは「ママのベビーバックBBQリブ」。パクチーやキャベツなどがアジアン風だ。
2512 NE BROADWAY, PORTLAND, OREGON 97232
営)11:00〜23:00
https://www.thesportsbrapdx.com/
text: Chinami Inaishi
稲石千奈美
在LAカルチャーコレスポンデント。多様性みなぎる都会とゆるりとした自然が当然のように日常で交差するシティ・オブ・エンジェルスがたまらなく好き。アーティストのアトリエからNASA研究室まで、ジャーナリストの特権ありきで見聞するストーリーをエディトリアルやドキュメンタリーで共有できることを幸せと思い続けている。