人形が暮らすような小さな家を、憧れのインテリアで飾って楽しむドールハウス。その究極とも言えるメアリー王妃のドールハウスが今年で制作から100周年となることを記念して、これまで公開されていなかった調度品とともに特別公開中だ。
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設計はインドの首都ニューデリーの都市計画を手掛けたことでも知られる名建築家のエドウィン・ラッチェンス卿が担当。すべてが本格的! photograhy: Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2024
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宮殿の室内をそのまま人形サイズにしたようなサロン内部。photography: Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2024
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メアリー王妃は1910年から1936年に王位に就いていたジョージ5世の妻君で、シンプソン夫人との結婚で王位を放棄したエドワード8世と映画『英国王のスピーチ』で描かれたジョージ6世の母であり、故エリザベス女王の祖母、現チャールズ王の曾祖母にあたる。父親がドイツ貴族のテック公の称号を持つことから、メアリー・オブ・テックの愛称でも親しまれてきた。少女時代は両親の経済的な理由でヨーロッパ各地を転々として過ごすことを強いられたが、それにより各国の文化に触れる機会を得たために芸術に深い造詣を持っていたという。
彼女のドールハウスは1921年から1941年のあいだに1:12のスケールで作られたエドワーディアン様式の「豪邸」で、世界最大規模を誇る。電気が灯り、実際に可動するエレベーターや水が流れるシンクが設置され、室内はアーティストや職人による1,500以上の調度品で飾られている。さらにライブラリーの蔵書には「シャーロックホームズ」の作者コナン・ドイルや「くまのプーさん」のA.Aミルンら当時の人気作家たちの手書きのミニチュアブックも含まれているという豪華さだ。
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本棚にぎっしりと書籍が並ぶライブラリー。photography: Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2024
キッチンのテーブルの上には本物のジャムが入った瓶も。人の手のサイズと比べると、その小ささがよくわかる。photography: Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2024
ガレージに並ぶ錚々たるクラシックカーに思わずため息。photography: Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2024
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1925年から一般公開されておりウィンザー城のなかでも特に人気となっているが、2024年中はこれまで陳列されていなかった、本物同様に音を奏でるグランドピアノ、ダイアモンド、ルビー、サファイヤなどの宝石で飾られた王冠、1920年代に開発されたばかりで夢の家電とも言われた掃除機なども展示されている。
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まばゆいばかりの装飾のグランドピアノ。photograhy: Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2024
本物の宝石が輝く小さな王冠。photography: Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2024
精巧な作りは掃除機まで及ぶ。photography: Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2024
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さらには人形の目線で見た、王妃の寝室やキッチン、子ども部屋などの様子を収めた映像も制作されており、その精巧で美しい様子を映像を通してさらに間近で見ることができる。
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じっくりと鑑賞したい人には、連日午後に行われているトークを含めたプライベートツアーがおすすめだ。
100 years of Queen Mary's dolls' house
www.rct.uk.com
text: Miyuki Sakamoto
在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。