太陽が沈まず一日中明るくなるミッドサマーは、スウェーデンの長い冬に終わりを告げる事象のひとつだ。6月19日から25日の間の金曜日がミッドサマーアフトンになり翌日の土曜日がミッドサマーデーになる。「あぁ、やっと夏の季節がくるなぁ」と日に日に感じるその現象とともに、スウェーデンの風物詩とも言えるのが、高校の卒業セレモニーだ。
スウェーデンの教育課程は日本のそれとほぼ同じで、義務教育が6歳から16歳までになる。それぞれの県やコミュニティによって若干の違いはあるが、基本的には小学校(5年)、中学校(3年)、高校(3年)。学期は春と秋の2学期で入学や新学年の始まりは8月末、卒業や学期末は6月の頭だ。中でも高校の卒業は義務教育を終え、大人の仲間入りということでみんなのウキウキワクワクしている姿を街で見かける。
卒業式自体はほかとなんら変わりなく、教壇で校長先生から卒業証書を授与して歌を歌って終わりなのだが、その後、風物詩の盛大なセレモニーパーティーが待っている。
卒業セレモニーは総じて5月あたりから始まる。
Mösspåtagning(ムッサポーターグニング)と呼ばれる、卒業式で全員がかぶる黒縁で白のハンチング帽を入手し始めるのだ。学校によっては校長先生がその帽子を振って生徒に訓示を述べるのが伝統というところもある。春の到来を告げるのが由来だという。
Studenten(スチュデンテン)と呼ばれる高校の卒業式で全員がその帽子をかぶり、卒業式を無事に終えると、やったとばかりに講堂のドアから一目散に外に駆け巡り、「卒業だぜ〜!!」的なセリフを叫ぶのだ。
講堂の外では家族や親類がそれぞれの卒業生の小さい時の写真入りプラカードを持って待ち受けている。
ただメインイベントはその後のKortage(コッターシュ)と呼ばれる車での行列だ。それぞれクラス毎にレンタルしたダンプカーやトラクターの後ろの車両に乗り、公道をゆっくり回って卒業したことを豪語するのだ。
歌って踊って叫んで飲んでとこれでもかというくらいの卒業アピールには、生徒たちには関係ない人たちも自分たちが辿ってきた軌跡もあるからか、拍手したり手を振ったりと、とても微笑ましい。
スウェーデンでは一旦就職した後に大学へと進む人も多いので高校卒業後の進路はさまざま。ついに親の庇護から離れて自分の人生を進む最初の一歩の区切りになるこのスチュデンテン。彼らの弾けざまは毎年見てもにっこり笑える。ついつい応援したくなるスウェーデンの微笑ましい風物詩だ。
text: Sakiko Jin
神咲子
在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデンの北部ウメオ市とスンズヴァル市を運転する日々を送る。