この夏、ロサンゼルス・ニューヨーク路線で就航となった新しい航空会社バークエア(BARK Air)。社名のBARK=吠えるが示唆するように、犬の快適な空の旅を最優先した世界初の航空会社だ。
機内サービスでは、なんと犬の好きな飲み物をはじめ、バークエアの親会社バークボックス社が開発し商品化をしたフード、おもちゃ、グッズなどハイクオリティな商品を揃えている。
乗客は犬とその付き添い人で、チケットは犬1匹単位で購入する。犬だけの旅もできるが、航空券には付添人ひとり分の搭乗も含まれている。
テストフライトに搭乗。「思い切り走り回れる機内でおもてなし」と書かれた犬専用マットが。
プライベートジェットと従来の航空会社のファーストクラスとの中間あたりに位置するバークエアは、大都市を結ぶ路線でも小規模の空港を利用可能。たとえば就航記念となったロサンゼルス・ニューヨーク路線ではウエストチェスター・カウンティ空港(NY)とヴァン・ナイズ空港(LA)を利用。ロサンゼルス国際空港から40kmほどのヴァンナイズ空港はセレブを乗せたプライベートジェットやビジネスジェットが頻繁に発着する小さな空港なので、混み合うことがないのもうれしい。
犬と一緒にこんなふうに機内でくつろげたら......。バークエアの機内を楽しむインフルエンサーのブリアナ・フィーハンと愛犬のコーダ。さすがに真っ白の座席は非現実的なので、実機では変更されている。
空港ゲートには機内持ち込みができる犬のおもちゃやおやつほか、必要な犬グッズを完備しており、忘れ物があっても安心だ。最大搭乗犬の数は9匹までで、ゆったりと設計されたガルフストリームG5機内のへの搭乗後、犬は自由に歩き回れるし、ピローやブランケットにフェロモンをスプレーしたり、リラックスする音楽などでストレス緩和の効果を期待。離陸や着陸時には水やボーンブロスなど犬が好む飲み物で、空圧の変化で起こりやすい耳の不快に対応。飛行中の良質なサービスで、犬のご満悦レベルは星5つ(のはず)。
初飛行に搭乗する乗客と愛犬は楽しそうにタラップを登っていく。広々とした機内の座席には「Dogs Fly First」とあり、"ファーストクラスで飛ぶ"という意味と"犬最優先"をかけている。
目的地に到着後は空港から約50km圏内なら無料でリムジンサービスが利用できる。
5月末の初飛行以来、ロサンゼルス・ニューヨーク路線は完売が続いており、現在も2カ月先まで満席と好調の売り上げ。料金は片道6,000ドル、往復は10,000ドル(2024年7月現在)で、犬にも人間にも好評。そのほかロンドン、パリ、シカゴ、サンフランシスコ/ベイエリア、フェニックス、マイアミに路線があり、今後も精力的に拡張していく予定。
プロモーション動画ではユーモアたっぷりに犬の快適な空の旅を表現。愛犬家なら誰もが夢に見たフライトを実現できるバークエアー。
text: Chinami Inaishi
稲石千奈美
在LAカルチャーコレスポンデント。多様性みなぎる都会とゆるりとした自然が当然のように日常で交差するシティ・オブ・エンジェルスがたまらなく好き。アーティストのアトリエからNASA研究室まで、ジャーナリストの特権ありきで見聞するストーリーをエディトリアルやドキュメンタリーで共有できることを幸せと思い続けている。