日本の暑さとは比べ物にならないかもしれないけれど、歴史的な暑さが続くドイツ。場所によっては35℃、36℃を超えることも。ドイツの一般的な住宅物件には冷房がないこともあり、教会がビーチチェアや子ども用の遊び場を作って一般開放するなどの試みも始まっている。
屋外プールもいつも大混雑だが、ここ数年入場にはオンライン予約が必要だったりと手間がかかることもあって、ビーチに行く方が好まれているようだ。ビーチといっても、海がないベルリンでは川や湖に行くことになる。1907年からベルリン市民の憩いの場であるヴァン湖や、100年近い歴史を持つミューゲル湖など。浜辺から泳ぐのも良し、筏を借りて湖の真ん中で飛び込むのも楽しい。
100年以上の歴史を持つヴァン湖のビーチは、いまもベルリン子に人気。photography: Hideko Kawachi
エコなドイツの人たちは水着にもサステナビリティを求めるようで、海洋ゴミや産業廃棄物などをリサイクルしたナイロン繊維「エコニール」を使ったものが人気。アディダスやスピードからも出ているが、北ドイツ、ハンブルク発のエコ・サーフ&スイムウェアレーベル「MYMARINI」のものなど、パキッとした色の切り替えが遠目にも目立つバイカラーの水着が流行中だ。
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しかし、おしゃれな水着を着るよりも、裸で泳ぐほうが気持ちがいい!好き!という人もけっこういるのがドイツなのである。ドイツには20世紀初頭からFKK(自由な身体の文化)というヌーディズムの潮流があるのだ。
ドイツ語のWikipediaによると、1900年にはベルリンや、北海、バルト海で多くの人たちが集まって裸で泳いでいたという。第二次世界大戦後は、東ドイツでFKKが盛んになる。自由で開放的な生活を楽しみたいという欲望が、こういう形で噴き出てきたのだろうか。
気温が上がってくればビーチはもちろん、何かと脱ぐ。西ドイツでは指定の場所だけでFKKが許されていたが、東側では大半のビーチで裸の人もいれば水着の人もいて、皆が思い思いに過ごしていた。
しかし東西ドイツが再統一すると、西ドイツの人は水着の人と裸の人が混在するビーチに慣れていなかったため騒動が起こるようになった。現在は、決められた場所でのみ、裸で過ごすことが許されている。
ハノーファーの歴史博物館で開催中のFKKを特集した展覧会では、なんと全裸でのガイドツアーが開催された!
ヌーディズムへの欲望は減っていると言われるが、ドイツではまだまだ各地でFKKの文化が息づく。最近では雑誌や展覧会などでも特集され、多くの人が集まって、楽しそうな笑顔を見せている。
河内秀子
ライター。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学在学中に、雑誌ペンなど日本のメディアでライター活動を始める。好物はフォークが刺さったケーキ、旧東ドイツ、マンガ、猫。ドイツでも日本でも「そとのひと」。 twitter:@berlinbau