もう随分と昔から、図書館は本を借りるだけの場所ではない。そこには閲覧室があり、インターネットにアクセスできて、調べ物をしたり、仕事をしたり。ちょっとリラックスした時間を過ごしたりと、多くのことができる。2020年秋にリノベーションを経て、再オープンした「グリーンポイント・ライブラリー」は、ブルックリンのグリーンポイントに位置する、革新的な図書館だ。従来の図書館機能に加え、環境教育と持続可能性をテーマにしたプログラムを提供する学習センターとしての役割も担っている。
建物は雨水の収集システムや太陽光パネルなどを備え、環境に配慮した建築。屋上にはグリーンルーフがあり、都市のヒートアイランド現象を軽減させている。上層階では自然光を最大限に活用し、下層階ではLEDライトや光センサーを使った省エネ照明を設置。外装パネルには、太陽光遮蔽装置や断熱性の高い素材を使用し、建物全体でエネルギー効率を向上させている。
館内には、コミュニティスペースも設け、子どもから大人まで幅広い年齢層が参加できるワークショップやイベントが定期的に開催されている。「使い捨て文化とゴミの歴史」に関するレクチャーや、「室内空気のクオリティの改善」のワークショップなどを開催し、地域住民や利用者が、環境や持続可能な生活について学べるようになっている。また地域の自然やエコロジーのセミナーも実施。サステイナブルなライフスタイルを促進する試みで、不要になった子ども服の物々交換「クローディングスワップ」も定期的に開く。期間限定で本のドネーションも受け付け、1冊に付きファンドレイザーとして1ドルで販売し、図書館のパブリックプログラムの運用金に充てるなど、さまざまな配慮がなされている。
同施設がここまで地域のサステナビリティに貢献にしているのは、こんな背景がある。1970年代に近隣の石油貯蔵施設からの大規模な石油流出が発覚し、土壌や地下水の汚染と地域住民達の健康被害が深刻化。住民たちが、「エクソンモービル」社などに対して集団訴訟を起こし、結果として、石油会社はニューヨーク州との和解に至り、地域の環境改善のための基金が設立。この助成金の一部が、グリーンポイント図書館と環境教育センターの建設や運営のために使われている。
そんな多くの配慮がなされた同館だが、アートに関するイベントも多い。アーティストを招待して、作品について話す機会を設けたり、作家の講演会に加え、ジンも取り扱っている。
かつては工業地帯として発展していたグリーンポイント地区は、長い間環境汚染に悩まされていたが、地域の変遷と現在の持続可能な都市づくりを象徴する存在になりつつある。そしてその象徴とも言える、グリーンポイント図書館は、コミュニティの絆を深め、利用者が環境保護について学べる貴重なスポットだ。
グリーンポイント ライブラリー
開)10:00〜18:00(月・水・金)、13:00〜20:00(火)、10:00〜20:00(木)、10:00〜17:00(土)、13:00〜17:00(日)
休)なし
https://www.bklynlibrary.org/locations/greenpoint
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