デンマークのクリスマスデコレーションといえば、「赤いハート」を飾るのが定番。一説によると、心がほっこり温かくなる様子を表現しており、ツリーにも、テーブルにもハートを飾る。とはいっても、定番に飽き足らない新しもの好きなコペンっ子の間で話題になるのが、老舗テーブルウエアブランド、ロイヤルコペンハーゲンの旗艦店でのクリスマステーブルの展示。毎年テーマを設けて、旬のアーティストやデザイナーを起用し、それぞれのクリスマスストーリーを表現する、コペンハーゲンの冬の風物詩のひとつだ。
61回目となる、今年のメインテーマは「マジカル•モーメント」。クリスマスは、家族や親しい人たちとの豊かで温かい集まりで、それは、「魔法のようなひととき」を演出するからだそう。
展示を担当したのは、3人のアーティストで、それぞれにサブテーマが設けられた。まず、「コンテンポラリー」は、アートギャラリー兼フラワーショップ、「タブロー」のオーナー、フラワーアーティストのユリウス•ヴェアネス•イヴァーセン (Julius Værnes Iversen)のインスタレーション。「ブルーフルーテッド」などに使われている青が基調だ。
「アイコニックなブルーを使ったのは、数々の伝説的なコレクションを作成してきたペインターたちへのオマージュ」と語る。
次は、「エキスプロラティブ(探検的)」のテーブル。ヴィジュアルアーティストでフラワーデコレーターのポッピーカラス(POPPYKALAS)によるもの。彼女が家族とすごすユトランド半島北の海辺の町、クリットミュラー(Klitmøller)の砂浜や波、森などの風景を大胆に表現している。
最後は、ペーパーアーティストのヴェロニカ•ホッジス(Veronica Hodges)による、「ヘリテージ」。彼女が幼年時代を過ごしたイタリアの伝統的なアパートメントがヒントのインテリアに、ハンドメイドのペーパーフラワーや孔雀、鳥などのオーナメントを組み合わせ、自然を取り入れたテーブル。
アーティストたちが渾身の力を込めた夢の世界を堪能し、定番の赤いテーブルセッティングに心を和ませたら、今年らしいデコレーションのヒントが見つかるかもしれない。そんな期待を抱いて、クリスマスショッピングの合間に立ち寄る人々で賑わっている。
冨田千恵子
コーディネーター兼ライター。デンマーク在住30年以上。デザイン、建築、アート、街並み観察、犬ネタが得意なジャンル。音楽はラヴェルが好きな北欧のフランスファン。
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