本ではなく「種」が借りられる?スウェーデンの春に芽吹く、種の図書館とは。

世界は愉快 2025.04.09

神咲子

ようやく雪が溶けてプラス気温になり、春の息吹を感じる今日このごろのスウェーデン。天気の良い日は殊更に人出が増すのも見受け、一軒家やバルコニーがある人は庭や花壇の手入れに取り掛かる時期でもある。

毎週のように屋外でのイベントが各地で催されるのも一例だが、国内にある図書館の何軒かはFröbibliotek (フルービブリオテーク)という種 (Frö)の貸し出しの期間を始める時期になるのだ。


種を入れる袋や箱など手作り感満載でそれぞれの場所でのクリエイティヴィティーが伺える。

この面白い取り組みは、本などを貸し出しする普通の公立の図書館が本と同様に花やハーブ、そして野菜などの種を貸すという。種を借りた人はそれらを夏の間に育てて、種が収穫されるであろう夏の終わりか秋口にそれから獲れた種を図書館に返すのが返却の基本ルールだ。もちろん本の貸し出し同様に種も無料で貸し出しされる。

一般的に多いのがひまわり、キンセンカ、そしてきゅうりの種だ。珍しいものではムーンダンスと呼ばれるクリームイエローのスカビオサの花の種がある。

逆にイタドリやシロザなどの侵襲的な植物は取り扱っていない。


今年2025年から種の貸し出しを始める「シューハラーズ図書館」。この取り組みは評判が良いので、全国の図書館にじわじわと浸透してきている。

キンセンカやマリーゴールド系は初心者でも簡単に始められる人気の種類だ。

種の貸し出しを行なっている殆どの図書館は地元の庭園組合や栽培組合などと協力している。自分の手を使って栽培の楽しみを次世代に知って繋いで欲しいというのが目的だ。また公立の図書館だけには限らず、自治体や個人のブティックなどでもFröbibliotek「種の図書館」という名前で同様の取り組みをしているところも多々ある。


借りた種からミッドサマーに向けて花冠を作るのも夢ではない!

買うと結構高い種たちをタダで借りられ、本と違って返却も絶対ではないためストレスフリーで気軽に始められる。またその図書館で関連する本を借りて読みながら自分の撒いた種が花や実を成す様を伺えるのは春の陽気じゃなくてもウキウキものだ。

何よりこういう心躍るフィーリングの素になるものを春の芽生えに合わせて貸し出してくれるこの計らいが何とも粋ではないか。

神咲子

在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデンの北部ウメオ市とスンズヴァル市を運転する日々を送る。

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