洗練されたカフェや宿泊施設、アートスペースまで。幅広い世代が注目する新堂洞(シンダンドン)のおすすめを3つご紹介。
ステイ、グルメ、カルチャーを満喫
新堂で過ごす、とっておきのソウルの一日
いま、ソウルの中でも静かに熱を帯びているエリア、新堂洞。伝統市場や昔ながらの商店と閑静な住宅街が入り混じるこの街は、どこか懐かしくもあり、同時に新しい感性が息づく場所へと変化を遂げている。
旅にトレンディなエッセンスを加える、
新しい滞在のかたち「ABPシンダン」
2025年4月、前作の鐘路(チョンノ)から5年ぶりに「都市に暮らすように泊まる」をテーマにしたステイ、ABPシンダンがオープン。中央市場に隣接し、昔ながらのソウルの風情が残るロケーション。 photography: Sangpil Lee / Courtesy of A Better Place
新堂洞の盛り上がりの中心的な存在が、2025年4月にオープンしたホテル「ABPシンダン」だ。中央市場のすぐ隣という好立地で、伝統と革新が見事に融合された新感覚の宿泊施設として話題を呼んでいる。
ABPは「A Better Place」の略で、その名の通り、「より良い暮らし」を追求した空間づくりを目指している。過剰な装飾を排し、自然素材を生かしたシンプルで洗練されたデザインが特徴で、客室にはIoTシステムが導入され、照明や温度調節がスマートに操作できる。
家具はすべてソウルのデザインスタジオ、ユースフルワークショップによるオリジナル製品で、彫刻的なラウンジチェアや可動式のキッチンユニットなど、機能的かつ美しいデザインが空間を彩る。また、韓国のクラフト作家たちが手掛けたオブジェが点在し、滞在者の感性を刺激し、暮らしの豊かさを体感させてくれる。
古い建物をリノベーションし、2階から4階に3つの客室とルーフトップラウンジ、1階にはカフェ&バー「マンムル(Manmool)」を備える。滞在中はiPadでルームサービスが利用でき、ルーフトップでは軽食とドリンクが共に無料で提供されており、音楽とともに夜景を楽しめる。 photography: Sangpil Lee / Courtesy of A Better Place
テーマが「ソウルに住むように旅する」ということもあり、まるで自分のアパートにいるかのような居心地の良さも魅力だ。都会の喧騒から離れ、静かな時間を過ごしながらも、すぐそばには活気ある市場やカフェ、ショップがあり、街全体のエネルギーを肌で感じられる。
さらに、2026年には「ABP」というブランド展開も予定されており、施設で使われている家具や雑貨、アメニティなどが一般向けにも販売され、生活の一部として楽しめるようになるという。
ABP Sindang
53 Toegye-ro 87-gil Jung-gu Seoul
https://www.abetterplace.kr/
@abp_seoul
※予約は公式サイトより可能
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手作りのやさしさを感じる
ベーグルカフェ「Ugly Baker's Bagle」
新堂の魅力は宿泊施設だけではない。古い住宅をリノベーションして生まれ変わった「Ugly Baker's Bagle(アグリー ベーカーズ ベーグル)」は、まさにこの街らしい、温かみのあるベーグルカフェだ。
広々とした空間に、自然光がたっぷり入るダイニングスペース。外の緑を望むガーデン席も用意されており、都会にいながらリトリート気分を味わえるのもこの店ならではの魅力。 photography: Ugly Baker's Bagle
素材の風味を生かした「ソルトバターベーグル」や「ブルーベリーベーグル」、ボリューム感のある「カプレーゼ」や「ハニージャンボンブール」などのサンドイッチ系まで、多彩なラインアップが揃う。ベーグルだけで30種類以上あり、軽食からしっかりとした食事まで幅広く対応。ベーグル3,800ウォン〜、ドリンク5,000ウォン〜、スープ9,500ウォン。 photography: Ugly Baker's Bagle
朝9時から夜9時まで営業し、朝食や昼休みのリラックスタイム、夜の軽食としても気軽に立ち寄れる。添加物や保存料を使わず、ひとつひとつ丁寧に手作りされたベーグルは、外はカリッと香ばしく、なかはもっちりとした食感が特徴。ニューヨークスタイルのオリジナルベーグルと、日本や韓国の味覚に合ったしっとり系のソフトベーグルが用意されている。
旬の食材を使った限定メニューもあり、訪れるたびに新しい味と出会える楽しみがある。
photography: Ugly Baker's Bagle
Ugly Baker's Bagle Sindang
17 Dasanro-40gil Jung-gu Seoul
0507-1423-4878
営) 9:00〜21:00
休) 旧正月、旧盆
@uglybakersbagel
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アート好きなら見逃せない、
シンダンのカルチャースポット「忠武(チュンム)アートセンター」
文化面でも新堂は見逃せないスポットが充実している。2005年に開館し、2025年に20周年を迎えた「忠武(チュンム)アートセンター」は、このエリアの文化的シンボル。今年リニューアルオープンした同センターは、観覧環境を大幅に改善し、快適で没入感の高い鑑賞体験が提供可能に。大劇場、中劇場、小劇場の3つの舞台空間を持ち、多彩なジャンルの公演が行われている。
全面リニューアルを経て、「パフォーミングアーツの聖地」として新たなスタートを切った忠武アートセンター。2025年の再オープンを機に、多様なジャンルの公演に対応できる本格的な劇場空間へと生まれ変わった。 ⒸCHUNGMU ARTS CENTER
大劇場では座席や床材、内装を一新し、可変式の音響反射板や38本のバトンを備えた舞台設計、さらに最新の音響・照明システムを導入。これにより、ミュージカルはもちろん、演劇やクラシック、舞踊など多彩なジャンルの公演に柔軟に対応可能に。 ⒸCHUNGMU ARTS CENTER
代表的なレパートリーであるミュージカル『メンフィス』や話題の演劇『キル・ミー・ナウ』をはじめ、クラシックやダンス、現代アートの展示も充実。高い天井と広い空間を活かしたギャラリーでは、多様な平面・立体作品が展示され、よりイマーシブなアート体験をもたらしている。最近では、ミュージカルを目当てに海外から訪れる人も増え、国際的な注目度も高い。
個性あふれるホテルで過ごし、手作りベーグルで始まる朝。そして心を震わせるアートとの出会い。いまのソウルを深く味わいたい人にとって、新堂はまさにぴったり。次の旅先にぜひ選んでみてほしい。

鄭慈卿 Ja-Kyung Jung
チョン・ジャキョン、ソウル生まれ。映画制作会社の演出部を経て、メディアコーディネーターに。日本語は独学で習得。雑誌を中心に書籍、テレビ、広告、ブランド、スポーツなどのコーディネーションを担当。 Instagram: @mademoiselle_pudding