屋外テラスが心地よい季節。ベルリンでは、車両が入れない通りを作ったりスピード制限や一方通行を導入することで、みんなが外に出て過ごしやすいエリアを作ろうという動きが起こっている。その中心となっているのが、フリードリヒスハイン=クロイツベルク地区だ。ベルリン市内にある12区の中でも、環境保護などSDGsに関する意識が高いこの地区。区長のクララ・ヘルマンさんは今年6月、ベルリン・ブランデンブルク放送のインタビューにこたえ、地区住民の大半が自動車を所有していないことにも触れ、全体で車の交通量を減らすことで子どもや歩行者、自転車を使う人たちが安心してのんびり外で過ごすことができる、暮らしやすい地区を作りたいと発表している。
「車に乗っている人を困らせたいわけではありません。気候変動はいま危機的な状況を迎えているのですから二酸化炭素の排出を減らし、街には緑のオアシスがもっと必要です」
グレーフェ通り。通りの真ん中にはポールが立ち、車両は入りにくくなっている。レストランは歩道にまで席を広げ、まるでビアガーデンのような雰囲気だ。
車両交通量を減らし歩行者や子どもたちを優先する通りの標識
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現在パイロットプロジェクトが行われているのが、カフェやレストランなど飲食店が集まるベルクマン通り周辺と、グレーフェ通り周辺のエリア。日中はマーケット、夜は人気のナイトスポットも近くにあり、どちらもベルリンっ子はもちろん世界中からの旅行者が集まる注目の場所だ。グレーフェ通りでは障害者用とカーシェアリング、荷物の運搬用の車だけが駐車が可能になり、住民は近隣の立体駐車場を月30ユーロで使えるようになるという。歩行者が車道も歩けるようになったので道に面した飲食店は歩道いっぱいにテラス席を広げて、大変な賑わいだ。パンデミックで苦戦を強いられた飲食店が席数を増やせるようにも配慮されている。車通りが減ったことでのんびりと肩の力が抜けた雰囲気が漂い、食事やドリンクを楽しんだ後も、ちょっと街を散歩してみたくなる。
ベルクマン通り。一部は車両は一方通行で時速10kmまでの徐行のみ。中央にはベンチなどを置いて市民が滞在しやすいようにしている。
ベルクマン通り。大きな市場と公園があり、緑が多い。
ベルクマン通り。大きな墓地に面した緑の多い一角は、広い通りの一部をベンチに。
クロイツベルク地区、車両通行止めにしている自転車と歩行者メインのケーテ通り。
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また学校の周辺などでは、5月から9月の夏場、日時限定ながら全面的に車両侵入禁止の「遊べる通り」を作る動きも高まっている。通りでは子どもたちが外で遊べるようになり、楽しげな笑い声が絶えない。老若男女、家族連れも過ごしやすいエリアへと発展を続けているのだ。
クロイツベルク地区にある「遊べる通り」。2020年のロックダウン後に、数々の通りをカーフリーにしようという動きが起こった。
text: Hideko Kawauchi

河内秀子
ライター。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学在学中に、雑誌ペンなど日本のメディアでライター活動を始める。好物はフォークが刺さったケーキ、旧東ドイツ、マンガ、猫。ドイツでも日本でも「そとのひと」。 twitter:@berlinbau