南ウェールズに位置するヘイ・オン・ワイは人口たった1,500人程度の小さな町。しかしイギリスの多くの人たちはその名を知っている。その理由はここが30軒以上が連なる古書街で、有名な文学祭ヘイ・フェスティバルの開催地だからだ。
ヘイ・フェスティバルの会場内。緑豊か。photography: Sam Hardwick
その歴史は1961年にリチャード・ブースというひとりの男性がかつて映画館だった建物を買い取って古書店を開業したことに始まる。70年代に入るとブースは町にある古城も手に入れて、城内外に本棚を設けて、やはり古本屋としてしまう。それに合わせて周辺に他のたくさんの店をオープンして、名だたる古書の街へと発展していったのだ。
可愛らしい町のあちこちに、個性豊かな古本屋さんが点在している。
そんなヘイ・オン・ワイで文学フェスティバルが始まったのは1988年。以来、毎年5月末から6月初旬にかけて、およそ10日間に渡って開かれる。もともと読書家の「聖地」として一年を通して観光客も多い地だけれども期間中は特別だ。のべ10万人が来訪し、街は飾り付けされて一層活気づく。
フェスティバルでは人気作家や学者など知識人らによるトークが開催され、多くはBBCラジオなどを通して全国にも発信される。過去には俳優のジュディ・デンチやベネディクト・カンバーバッチも登場して話題を集めた。
登壇者たちの話に、みな熱心に耳を傾ける。photography: Daniel Mordzinski
そのほかにも音楽のライブやヨガや瞑想のクラス、子ども向けのワークショップなどもあり、他のイベント同様に飲食やショッピングのエリアも充実。家族全員で数日に渡っていろいろ楽しめるようになっている。
photography: Adam Tatton Reid
ただただ熱心に読書する人たちの姿もあちこちに。photography: Marsha Arnold
今年は5月15日から6月4日まで開催されて500人以上が登壇する予定だ。『侍女の物語』で知られる世界的に人気の作家マーガレット・アトウッドも新作を披露することになっている。
文学好きだったら一度は訪れたい、魅力あふれるフェスティバルだ。
夕暮れ時を過ぎてもお祭りは続く。photography: Adam Tatton Reid
https://www.hayfestival.com/home
text: Miyuki Sakamoto
在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。