ミス・ユニバースを目指した、トランスジェンダーの女性。

いよいよ29日から、日本でも人気ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」の続編「アンド・ジャスト・ライク・ザット.../ セックス・アンド・ザ・シティ新章」の配信が始まる。SATCファンも首を長くして待っていることだろう。

SATCと言えば当初配信されていた2000年前後のあの時代、ジェンダーや人種に偏りのあるステレオタイプな表現で描かれていたことが批判の対象にもなってきた。しかしこの続編では、それらの問題が時代に合わせてより多様化した内容になっている。

今年アメリカでは、これまでにない「美の祭典」における多様性も話題となった。

12月12日にイスラエルで開催されたミス・ユニバース世界大会の前哨戦となる全米大会「ミスUSA」が11月末に行なわれた。第70回目となった記念すべき本大会ではケンタッキー州代表のエル・スミスが優勝したが、ネバダ州の代表として出場したカタルナ・エンリケス(28)が注目を浴びたのだ。
 


なぜならエンリケスは、トランスジェンダーを公表してミスコンに出場した全米初の女性だったからだ。ネバダ州の代表を決める大会で今年6月、トランスジェンダーとして初選出され話題となり、この全米大会でもその行方が注目を集めたが、結果はラウンド16前という早い段階で惜しくも敗退した。彼女の予選落ちについて、ファンからは「応援していたが敗退して残念」「新たに歴史を作った女性」など、労う声が多くかけられた。

NBCニュースによると、ミスUSAを含む世界のミスコンがトランスジェンダーの参加を受け入れ始めたのは2012年だ。18年にはトランスジェンダーとして、スペイン代表のアンジェラ・ポンセが世界大会に初出場している。
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「本選は怖かった」


エンリケスは21年3月、ネバダ州の予選を勝ち抜いた後、自分がトランスジェンダーであることをメディアを通じ告白していた。

全米大会となるミスUSAがオクラホマ州で開催された際には、批判や抗議の対象になるのではないかとかなり心配していたという。オクラホマ州と言えば伝統的に保守的な層が多く、LGBTQへの風当たりが強いとされている場所だ。しかし全米大会では彼女の不安をよそに何も起こらず、胸を撫で下ろしたようだ。
 

エンリケス(写真手前中央)はフィリピン系アメリカ人で、カタルナクチュールのオーナー兼デザイナーだ。ミスコンに出場する際の衣装は、自分でデザインしている。

幼少時は性同一性障害によるいじめや有色人種であることで差別を受けてきたという彼女だが、辛い経験を通して「ユニークな存在であるがゆえに、人生で乗り越えなければならないことを体験させてもらっている。ほかの人との違いはマイナスではなくプラスであることを学んでいる」とメディアに語っている。

また全米大会を振り返り、「私は有色人種のトランスジェンダー女性であることを誇りに思う。(LGBTQの)コミュニティを代表し、社会にある古い基準や価値観にがんじがらめになる必要のないことを知っているクィアの若者に対して、よい模範となれて光栄だ」と語った。

彼女の人柄や容姿の美しさだけでなく、自分を愛することの大切さを体現するエンリケスの魅力は、いまアメリカのリベラル層を中心に好意的に受け入れられているようだ。ジェンダーの多様化は、ミスコンなど美の祭典においてもこれからますます進むに違いない。
 

「自分を愛することを忘れないで」と自身のインスタグラムに投稿したエンリケス。

text: Kasumi Abe

在ニューヨークジャーナリスト、編集者。日本の出版社で音楽誌面編集者、ガイドブック編集長を経て、2002年に活動拠点をニューヨークへ。07年より出版社に勤務し、14年に独立。雑誌やニュースサイトで、ライフスタイルや働き方、グルメ、文化、テック&スタートアップ、社会問題などの最新情報を発信。著書に『NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ 旅のヒントBOOK』(イカロス出版)がある。

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