同意なしにコンドームを外す行為が違法に、アメリカでは初。
Society & Business 2021.10.21
性行為の最中にパートナーの同意なしにコンドームを外す“ステルシング”と呼ばれる行為が、10月7日からカリフォルニア州で違法となった。アメリカでは初めてとなる。
10月7日以降、カリフォルニア州では相手の同意なしにコンドームを外す“ステルシング”が違法となった。photo: Getty Images
性行為中、パートナーの同意なしにコンドームを外す行為が世界で増えて続けている。しかしこれが法律で罰せられることは滅多にない。『Womens Health Issues』新聞が2019年に発表した調査によると、21歳から30歳の女性の12%がこの“ステルシング”(内密に、こっそりと、という意味)と呼ばれる性暴力を、少なくとも一度は受けたことがあるそうだ。
10月7日(木)、カリフォルニア州はこの行為を禁止し、罰則の対象とするアメリカ初の州となった。「ステルシングの被害者は加害者を訴えることが可能になります。この法律を施行するに当たって、同意の重要性が強調されることになります」とこの法律の可決を発表した際に知事室がツイートした。
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“ひとつ州が減り、残るはあと49州”
この新しい法律によると「コンドームを外すことに対する口頭での同意がないのに、コンドームを外した性器を別の人の性器と接触させる」ことは性暴力行為とみなされる。この法案を支持し、2017年からこの行為を犯罪と認めるよう活動していた民主党の州議会下院議員のクリスティーナ・ガルシアは、この法律が可決されたことに喜びを示した。「ここまでくるのにとても長い時間がかかった。ステルシングに関して、カリフォルニアが先陣を切ったことが嬉しい。ひとつの州を獲得。残るは49」とツイートした。
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フランスではステルシングに関する法律はない
ではフランスの現状は?「一部であろうと性行為が強制されたのでれば、それは強姦罪に当たる」と刑法学者であり弁護士のアン=ソフィ・ラゲンスは『エル』誌に書いている。ステルシングは相手に気付かれないよう、あるいは気付くのが手遅れになるよう、相手の目を盗んでコンドームを外す行為。この“不意を突く”という考えも法律に組み込まれている」
2017年1月、フランス人の男性容疑者に対し、スイス、ローザンヌの裁判所は強姦の罪で12ヶ月の執行猶予付きの判決を言い渡した。上訴したが同じ判決が下り、さらに行為を「認識あるいは抵抗が不可能な人物に対し犯した性的行為」と再規定された。
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社会の関心を高める原動力は大衆文化
アメリカの被害者救済団体はすでに数年前から、この「レイプの一種」について警告を発していた。しかしステルシングに対する意識が急に高まったのは4年ほど前のことだ。きっかけとなったのは、当時イエール大学法学部の学生だったアレクサンドラ・ブロドスキーが「コロンビア ジェンダーと法律ジャーナル」誌に投稿したある記事だった。ステルシングについての自分の研究を発表しながら「この行為は多くの女性にとって自尊心と独立心に対する重大な侵害となっている」と書いた。
被害者の話を聞いた彼女は、ステルシングは性感染や望まない妊娠など深刻な被害を及ぼすだけでなく、精神的トラウマを引き起こすことに焦点を当てた。「被害者たちは、裏切られたという気持ちを味わった以外にも、自分の要求が完全に無視されたことを訴えていました」
この問題は最近、人気ドラマ『I May Destroy You』(2021年10月の時点では日本では未公開)でも取り上げられた。主人公のアラベラがこっそりコンドームを外す男と性的関係を持つ。「合意なしにコンドームを外す行為とその行為が及ぼす影響について、大衆文化が取り上げたことは社会に強いインパクトを与えるでしょう。人々の関心を高めるだけでなく、被害者の経験に言葉を与えることになるからです」。現在ワシントン・ポストの人権弁護士となったアレクサンドラ・ブロドスキーはこう締めくくった。
text: Tiphaine Honnet (madme.lefigaro.fr, AFP)