「発言する機会を持てた」元ミス・アメリカと現代のミスコン。

Society & Business 2021.11.10

From Newsweek Japan

文/パメラ・エルドレッド(1970年のミス・アメリカ)

211108-newsweek-01.jpg1970年のミス・アメリカに選ばれたエルドレッド(写真左)。 COURTESY OF PAM ELDRED

「ミス・コンテストが最も注目を浴びていた時代にミス・アメリカになり、社会に発言する機会を持てたのは素晴らしい経験だった」

半世紀前はミスコン花盛りの時代だった。ミス・アメリカのコンテストが始まると、みんなテレビにかじりついて見ていた。

1968年、私は20歳でミス・デトロイトのコンテストに参加した。ずっとバレエをやってきたのに脚を痛めてしまい、何か別の目標を探していたから。学習障害のある妹がいて、何かと出費がかさむのを知っていたので、お金も欲しかった。優勝すれば奨学金をもらえると聞いていた。

それで私は勝ち上がり、優勝した。続いてミス・ミシガン州のコンテストにも出たけれど2位止まり。でも翌69年には優勝できた。

その年の9月、私はミシガン州を代表してミス・アメリカの座に挑んだ。4種類の審査があり、水着が25%、才能が50%、イブニングドレスと質疑応答がそれぞれ25%の配点だった。才能のウェイトが重いのは、「テレビ映え」が求められたからだ。

その年も、会場の外ではミスコン反対のデモがあった。でも、バレエをやっていた私は水着に抵抗を感じなかった。体の線をチェックされるのには慣れていた。

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ミスコンのおかげで発言の場を持てた。

いまなら私も水着にはならないと思う。水着が嫌で参加しなかった人はたくさんいる。でも2018年に水着審査が廃止されたとき、失望した人がいるのも事実。水着になるのは体の健康美を見せるためだと、彼女たちは信じていた。

あの頃、女性にはいまほど発言の場がなかった。でも私はミスコンのおかげで発言の場をつかみ取れた。

最後の質疑応答で、審査員が私に投げた質問はこうだった。「姉妹がいるようですが、妹さんにはこれからの時代の女性について、どんなアドバイスをしますか?」

私はこう答えた。あいにく妹は脳に障害を抱えているので時代をつくる女性たちの仲間にはなれないと思いますが、若い女性たちには、どうか自分らしく生きてほしいと言いたいです──。そうしたら、みんな驚いたようで、大変な反響があった。ミス・アメリカとしての活動中も、学習障害について発言する機会がたくさんできた。

70年のミス・アメリカに選ばれて以来、私は全米各地を毎日のように回った。それが私の仕事だった。でも、モノ扱いされていると感じたことはない。水着の撮影は一度もなく、旅の間はいつも誰かが大事に付き添ってくれた。

任期を終えた後も、私は旅を続け、各地で講演を続けた。それから結婚し、娘を儲けた。19年には半世紀前の女王としてミス・アメリカのコンテストに招かれた。審査の様子はすっかり変わっていて個人的には衝撃を受けた。でも家に帰って気付いた。ミスコンだって社会に合わせて変わっていくのだと。

なんであれ、変化を受け入れるのは難しい。でもいまは、これが正しい方向への変化なのだと思っている。

私が現役のミス・アメリカだった時代に比べると、いまのミスコンは全く別物だ。でも、これは誇らしい進化だと思う。世の中で女性の果たす役割が増えるにつれ、ミスコンの役割も変わっていく。それが当然だ。

ミス・アメリカは100年も続いている。100人のミス・アメリカが、みんな素敵な経験をしてきた。いまでも、ときどき思う。あの1年は夢だったのじゃないかと。

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text: Pamela Eldred

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