サラ・ジェシカ・パーカーにも矛先、ミソジニストの視線。

ミソジニーという言葉をご存知だろうか。女性を嫌悪することという意味で、ミソジニストとは女嫌い、女性を嫌悪する人物をさす。

ニューヨークを舞台にさまざまな恋愛模様を描き、一世を風靡したドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』(以下SATC)。主役として誰もが知る女優、サラ・ジェシカ・パーカーは今年、SATCの続編『アンド・ジャスト・ライク・ザット(And Just Like That…)』(HBO MAX)への出演が話題になっている。公開はいよいよ12月9日からで、首を長くして待っているファンも多いことだろう。

---fadeinpager---

さてSATC時代は30代だったサラも現在56歳に年齢を重ねた。シワや白髪も自然に出てくるお年頃だが、本人は加齢(エージング)という自然現象に抗うつもりはないようだ。アンチエイジングのために顔にメスを入れるようなことはしたくないと、以前よりはっきり宣言していた。しかし自然なありのままの現在の姿がメディアにキャッチされては、自身やSATCの共演者が、ソーシャルメディア上で非難の的になっているという。

>>サラ・ジェシカ・パーカーも! 白髪を隠さないセレブたち。

しかも厳しい世間の目が女性にだけ向けられていることに対して、サラは「男性は白髪でも騒がれないのに、なぜ女性だけが叩かれるの?」と女性誌で不満を漏らした。女性だけがそのような非難の的になることは、ミソジ二ストからの女性蔑視だと感じるという。

人の見た目について他人がとやかく言うことではないはずだが、アメリカ人とて対象が憧れだったセレブとなると「いつまでも若くいてほしい」と非現実世界の夢を見続けたいようだ。これに対して、サラは「あるがままのいまの自分を人々は望んでいないように思える。私はいまの自分がどのように見えるかを理解しているし、それは変えられないこと。私に何をしろと? 老化を止めろってこと? それとも消えろとでも?」と疑問を投げかけた。

これを受け、同い年のスーパーモデル、ポーリーナ・ポリスコワはインスタグラムで、サラへの支持を表明した。
 

---fadeinpager---

「現実の自分」に抗いたい人々が世界一多い国。

サラやポーリーナのように、いくつになっても年齢に抗わない自然なありのままのスタイルで通すセレブが存在する一方で、米国では現実の自分の姿を受け入れられない人も多い。

「違う自分になりたい」欲望は、美容整形の施術数にも表れている。

市場および消費者のデータ会社Statistaによると、世界でもっとも人気の美容整形は豊胸だという。また脂肪吸引、まぶた形成、ボトックスやヒアルロン酸の注入、脱毛なども人気のメニューだ。

2019年世界でもっとも美容整形の施術数が多かった国はアメリカだった。米国内での施術数は年々増加しており、1997年の約160万件から、19年には460万件を超えるほどになっている。

またアンチエイジングのためのフェイスリフトにも変化がある。アメリカ形成外科学会(American Society of Plastic Surgeons)によると、フェイスリフトの施術をこれまで受けてきたのは60歳以上の人々がメインだったが、近年は若年層の施術も増えているそうだ。
---fadeinpager---

19年の1年間で、米国で行われたフェイスリフトの症例数の34%にあたる約6000件の施術を受けたのは、54歳以下の人々だった。若年化の理由として「早め早めのエイジング対策」が人々に意識されていることがあるという。たとえば60歳以上の人がフェイスリストを受ける際、通常20歳ほど若返りを期待され施術が行われるが、年齢が若いほど若返りの期待年齢もマイナス5〜10歳で、それだけ施術自体が複雑ではなく術後の回復も早い。

美容整形施術数が世界トップのアメリカにおいて、誰もが知るベテランの人気女優が「ありのままの自分をさらけ出すこと」は勇気がいることかもしれないが、それでもメスを入れない、自然な加齢現象に抗わないと決めた意思は、ぜひ尊重されるに値するものではないだろうか。


 

text: Kasumi Abe

在ニューヨークジャーナリスト、編集者。日本の出版社で音楽誌面編集者、ガイドブック編集長を経て、2002年に活動拠点をニューヨークへ。07年より出版社に勤務し、14年に独立。雑誌やニュースサイトで、ライフスタイルや働き方、グルメ、文化、テック&スタートアップ、社会問題などの最新情報を発信。著書に『NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ 旅のヒントBOOK』(イカロス出版)がある。

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

清川あさみ、ベルナルドのクラフトマンシップに触れて。
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
2024年春夏バッグ&シューズ
連載-鎌倉ウィークエンダー

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories