ヴィクトリアズ・シークレットのモデルが明かす過酷なダイエット。
Society & Business 2021.11.26
食欲抑制剤、ホルモン注射など。ヴィクトリアズ・シークレットのモデルたちが痩せるためのプレッシャーを語った。
2018年のヴィクトリアズ・シークレットのショー。(ニューヨーク、2018年11月8日)photo: Getty Images
派手なファッションショーで長いことファンを魅惑したアメリカの大手ランジェリーブランド、ヴィクトリアズ・シークレット。しかし最近は困難な日々が続いている様子だ。華やかな舞台の裏で痩せることを強いられたモデルたちが、最近その凄まじい現実を明かし始めた。
「糖尿病患者のように毎朝、お腹に注射を打っていたの」。2010年から2013年までヴィクトリアズ・シークレットのモデルを務めたエリン・ヘザートンはブランドのモデルとしての経験をポッドキャスト「Fallen Angel」でこう語った(ヴィクトリアズ・シークレットはトップモデルを“エンジェル”=天使と呼び、ブランドアンバサダーに仕立てた。Fallen Angelは直訳すると“堕天使”)。空腹感を消すため食欲抑制剤に頼っていたことを告白し、自分で選んだ“スター専門の栄養士”が痩せるためのホルモン注射を処方してくれたことも明かした。
ヴィクトリアズ・シークレットとの黄金の契約を守りたいなら、より完璧な身体を常に保っていなければならない。そのためなら何でもしたと32歳のトップモデルは打ち明けた。10年前、ヴィクトリアズ・シークレットはモデル界で憧れの存在だった。でもいま、エリン・ヘザートンはこのブランドがモデルの健康への配慮を欠いていたと非難する。
2013年にヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーに登場したエリン・ヘザートン。(2013年11月13日、ニューヨーク)photo: Getty Images
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エリンだけではない
ヴィクトリアズ・シークレットを非難するのはエリン・ヘザートンだけではない。多くの“エンジェル”が同じように不健全で歪んだ経験を語っている。2015年から2016年までブランドアンバサダーだったオーストラリア出身のブリジット・マルコムは今年の7月にTikTokにビデオを投稿し、こう語った。2016年のショーでは30Aサイズ(フランス・日本のサイズだと80A)のブラジャーを渡されたが翌年は30Bになっていたので、ブランドのマーケティングのトップであるエドワード・ラゼックによってショーから外された。理由は「ボディが美しくないから」だったと。
2005年から2008年までブランドのモデルを務めたセリタ・エバンクスはテレビチャンネル“E!”でこのように語った。「完璧なサイズを常に保っていなければならなかったの。でもこれは不自然なことよ。だって身体はどうしたって変化するものだし、それに対抗するなんて無理なこと」
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新たな戦略で再出発?
ヴィクトリアズ・シークレットが超完璧なボディを前面に打ち出すことに対して、数年前から非難が続いていた。そのタイミングでこれらの告白が公にされたのだ。
コミュニケーション戦略は見直され、2年前からショーは中止している。バービー人形のような体型は退場し、年齢もボディラインも多様になり、社会にコミットするようなキャストを登用するようになった。
その目的に沿って「The VS Collective」(ザ・VS・コレクティブ)を立ち上げた。メンバーのうち3人を紹介すると、トランスジェンダーモデルのヴァレンティーナ・サンパイオ、LGBTQ+のサッカー選手ミーガン・ラピノー、イギリス出身のプラスサイズのトップモデル、パロマ・エルセッサー。彼女のブラのサイズは48(120センチ)だそうだ。
何年も道を外し続けたヴィクトリアズ・シークレット。新プロジェクトの幅を広げたからと言って、過去の記憶を消し去るのに十分だろうか。
text: Blanche Marcel (madame.lefigaro.fr)