フランスの柔道チャンピオン、マルゴー・ピノがDV体験を語る。

Society & Business 2021.12.08

フランスの柔道選手マルゴー・ピノにより、ドメスティックバイオレンスで告発されたアラン・シュミットが、12月2日に記者会見を行った。その数時間後、マルゴーもまた、メディアの前で説明を行った。

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2019年2月のパリグランドスラムで勝利を収めたマルゴー・ピノ。photo: Abaca

「同じ主張を続けているけれど、彼は嘘をついていて、私をヒステリックな女に仕立て上げようとしています」。柔道選手のマルゴー・ピノは、彼女の元コーチであり、元パートナーであるアラン・シュミットをドメスティックバイオレンスで告発した。12月2日、アラン・シュミットが語ったことに対応して、その数時間後、彼女も記者会見を開いて、事実に対する自分の言い分を説明した。

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身体的、心理的暴力

彼女の目はまだ黒い輪に覆われ、顔にもまだあざが残る。オリンピックチャンピオンのマルゴーは、アラン・シュミットに殴られた夜の凍りつくような出来事を詳細に語った。「翌日イスラエル行きの飛行機に乗るアランを空港に送っていく約束をしていたので、その日、アランはうちに来ることになっていました。彼がやってきたのは夜中の2時ごろ、お酒を飲んでいました。イスラエル行きの書類をプリントアウトしてくれと頼まれ、プリントアウトはしましたが、あなたを2時間も待っていたのよ、とも言いました。それから、床に着きました。彼は一緒にベッドに入ると、ウーバーを呼ぶから空港に送る必要はない、君は休んでいい、と言ったのです」

ことはそこで終わったかもしれない。だが、「少しするとアランは起き上がり、廊下の電気をつけて服を着ました」とマルゴーは続ける。「どうしたの、と尋ねると、いずれにしろ、お前には何にも理解できない。家に帰った方がいい、というので、『わかったわ、家に帰りなさい。ここにいても仕方がない、もう会いたくない』と言いました。すると、彼は意地の悪い乱暴な言葉を言い始めたんです」。その言葉が聞こえないように、彼女は耳をふさぎながらベッドに戻ったという。「彼がそういう言葉を使うのには慣れていました。それが何週間も頭の中に残るのはうんざりでした。自分が貶められている気がして、何ヶ月か前から自信をなくしていました」と彼女はいう。

その時、身体的な暴力が始まった。「彼はベッドに近づいてきて、私に向かって手を出したので、押し返しました。すると彼は髪の毛を掴み、ベッドの左側の床に向かってひっぱったんです。仰向けに倒れた私の上に、彼は馬乗りになり、右左と殴り始めた。やめてと叫びました。自分を防御さえしなかった。自分の腕がどこにあるかもわかりませんでした。彼をなだめようとし、起き上がろうとした。やっと隣の部屋に逃げましたが、そこで彼は私を捕まえ、床に押さえつけました。そして頭を掴んで何度も床に打ちつけました」

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「彼から逃げだせるか、死ぬかのどちらかだった」

彼女はまた、彼が首を締めようとしたこと、彼女が押し返そうとしたことも語った。「アラン、愛してる。愛しているからあなたとやり直したい。だからやめて、話し合おう」。この言葉がアラン・シュミットの気持ちを鎮めたらしい。その手が緩んだ時に、マルゴーは再び逃げようとしたが、廊下で捕まった。「その時、彼から逃げ出せるか、あるいは死ぬかのどちらかだと思いました。本能が働いた。生き延びるにはここから出なければと。ドアを開け、走り出しました。彼は追いかけてきて、建物の廊下でもう一度髪の毛を掴まれました」。ようやく、隣人の手で助けられた、と彼女はいう。

「今日、私はこのような状況で命を失った女性たちのために話しています。彼女たちには立ち向かう身体的なすべがなかったからです」とマルゴー・ピノは言う。「柔道に、そして命にも感謝します。それ以来、命を違う目で見ています。今夜、生きていることを幸せに思い、また、先日の法廷での結果に悲しみを覚えます」

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判決が理解ができない

始まりは12月1日、マルゴー・ピノがSNS上に一枚の写真を投稿したとき。写真に写った彼女の顔は腫れ、傷が残り、血の乾いた跡があり、黒く腫れた目でカメラを見つめている。前日のボビニー刑事裁判所の判決を受けて、マルゴーはこの写真を公開することにした。法廷は、11月27日に行われたマルゴーへの暴行事件で証言台に立った、コーチでパートナーのアラン・シュミットに無罪の判決を下したのだ。

 

 

証拠不十分

アラン・シュミットは、飲酒状態による暴行事件のため、11月27日土曜日から日曜日にかけての夜にセーヌ=サン=ドゥニ県で逮捕された。彼の顔には同じようにあざがあり、恋人同士の嵐のような喧嘩として自己弁護した。元フランス柔道チームのメンバーは、これまで事件を起こしたこともない。彼はマルゴーの証言を否定し、「最愛の彼女を殴ったことはない、とんでもない」と法廷で証言した。

証拠が不十分だとして、彼は無罪となった。「法廷は、どちらが嘘を言い、どちらが真実を述べているかを判断する場ではない。本件では、有罪に十分な証拠はありません。法廷は釈放を決定します」。11月30日火曜日の夜遅く、裁判長が説明した。

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「何が不足だと言うの? 死ねばいいということ?」

マルゴー・ピノはインスタグラムに投稿し、ことの重大さを訴えた。「私は侮辱され、殴られ、何度も床に頭を打ちつけられた。最後には首も絞められ、死ぬかと思った」と写真の下に綴っている。27歳の若き柔道選手は、隣人の家に逃げ込んでようやく警察に通報することができた。彼女はアラン・シュミットと弁護士について、こうも付け加えている。「怪我や、アパートの床に飛び散った血を目にして、彼らの中傷に満ちた弁護に何の価値があるのでしょう? 何が足りない? 死ねば証拠になるということ? 私が助かったのはおそらく柔道のおかげ。私と同じことを言うことができずにいる女性たちを思います」

 

 

日曜日にイスラエルに飛んでフランスの柔道の女性チームを指揮する予定だったアラン・シュミットに対し、検察側は1年の執行猶予付きの実刑を求刑していたが、今回の無罪判決を不服として控訴を決めた。マルゴー・ピノには、東京オリンピックで彼女と一緒に金メダルを獲得したアマンディーヌ・ブシャールや、5度の世界チャンピオンでありオリンピックの金メダルも2つ獲得しているクラリス・アグベニューなど、ほかの女性選手からも支援の声が寄せられている。

text: Julia Mokdad (madame.lefigaro.fr)

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