選ばれる人だけが身につけている、「特別なマナー」とは?

Society & Business 2021.12.17

自分の意見が通らない。ほぼ同じ内容のプレゼンなのに、自分ではなく、ほかの人が選ばれてしまう。それほど優秀とは思えない人が、自分より先に昇進していく……。そんな「選ばれない」という状況に陥ってしまうことはないだろうか?

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写真はイメージ。photo: iStock

悔しい状況を変えるにはどうすればいいのだろう? そんな悩みを解決する糸口になるのが、書籍『「選ばれる人」の気遣い』(CCCメディアハウス刊)だ。著者の佐野昭子は約15年間、国際線の客室乗務員として活躍した後、社員研修をメインに講演、セミナー、大学の講義を受け持ってきた人材育成のエキスパート。同書から、「選ばれる人」になるための心構えとその実践方法を抜粋してお届けする。

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あなたは「マナー」というものについて、どのように考えていますか?なんだか堅苦しい、わかりにくくて面倒……。もしもそんなふうに思っているのなら、いますぐその考えをデリートしましょう。マナーとは、社会のなかで心地よく生きていくためのルール、相手への心遣いです。それを軽視するということは、自ら人とのつながりを閉ざすことにほかなりません。

世のなかで一般に言われているマナーには、ビジネスマナー、テーブルマナー、運転マナーなど、たくさんのマナーがありますが、国や地域によって異なる文化があるように、マナーにも、TPOによってルールが大きく異なるケースがあるのです。ここでは、一般的なマナーについてのみ終始するつもりはありません。あくまでも「選ばれる人」になるためのマナーについて、お話ししたいと思います。なぜなら、「選ばれる人」には「選ばれる人のマナー」があるからです。

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もしあなたが、今後とても重要なつながりを持つことになる方と、フレンチレストランに行ったとします。その方が、たまたまお魚とお肉のナイフを間違えて使ってしまったら、あなたはどうしますか? 一般的なマナーに則り、本来のナイフを使いますか? もしあなたが、本来のナイフを使うとどうなるでしょう。もちろんメートル(給仕係)は、次に使うお肉用のナイフをスマートにサプライしてくださるでしょう。しかし、相手の方は「しまった!」と思い、恥をかいてしまった、恥ずかしいという気持ちになり、なんとも言えない嫌な気分を感じるでしょう。ですが、もしそれに気づいたあなたが、相手と同じナイフを当たり前のように使ったとしたら?それは相手に恥をかかせない気遣いとなります。それに気づいた相手の方は、きっとあなたのその行為を認め、配慮のある人だと評価することでしょう。

私は、これこそが「選ばれる人」になるためのマナーだと思うのです。決して媚びやへつらいではなく、相手を立てる思いやりからの行動なのです。マナーは、「相手に嫌な思いをさせない、恥をかかせない」ことが大前提です。ですから、選ばれる人のマナーは、いかに相手を思う気持ちを表現できるか、相手の心の奥底に響くように行動できるかが問われるのです。

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洗練されたマナーはセンスが作る

マナーには、その人が持ち合わせている「センス」が大きく影響します。センスの意味を辞書で引いてみると、

一、物事の感じや味わいの微妙な感じ(よさ)を知る心の働き
二、普通の人なら当然持っているはずの感覚(新明解国語辞典より)

このように書かれています。つまり、センスは心のなかに誰もが持っているもの、そして、そのセンスがマナーの良し悪しを決定づけ、人間関係の構築に大きく影響するのです。ですから「選ばれる人」になるためには、選ばれる人になるセンスが必要となります。では、その「センス」を磨くにはどうしたらいいのでしょうか。

以前、剣道の七段、八段の昇段審査について、審判長だった父に質問したことがあります。七段、八段ともなれば、すでに剣道の達人です。達人を相手に、いったいなにを基準として判断するのか、私には疑問だったのです。父はこのように答えました。「試合の勝負そのものも大切だが、それだけではない。道場に入ってきた瞬間、高段者としての『センス』を持っているかどうかの第一印象が大きな決め手。高段者は選ばれし人であり、ふさわしくない人は選ばない」

父によると、受験者を見るポイントは、①醸し出すオーラ、②身だしなみ、③目の輝き(内面)、この三つだというのです。この三点さえ見れば、どれだけ「できる」か、どれだけ「鍛錬」してきたかがわかるので、あとは、試合での「剣さばき」「身のこなし」を見て選ぶのだそうです。この三点は、剣道の高段者だけのものではなく、私たちにも、じゅうぶん応用ができるはずです。

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①醸し出すオーラ
剣道で言うところの「鍛錬」とは、「千日の稽古を以て鍛とし、万日の稽古を以て練とす」、つまり、朝夕の鍛錬によってなにごとにも臆さぬ境地が作られていく、ということ。鍛錬することで自信がつき、その自信がオーラとなって体から醸し出されるのです。あなた自身の経験を思い描いてみましょう。これまで、学校の試験でも、資格試験でも、プレゼンでも、本気で勉強し、一〇〇パーセントの自信を持って臨んだときの心情、立ち居振る舞いはどんなものでしたか?自信に満ちて臨んだあなたは、いかにも堂々としていて、身体全体から成功のエネルギーがあふれ、すべてに確信を持って行動できたのではないですか?これこそが鍛錬の結果である「自信のオーラ」です。そして、それを見た周りの人はそこに「氣」を感じ取り、あなたに一目置くのです。

さて、あなたはどのように、この「オーラ」を発揮するのでしょう? そして、あなたが「選ばれる」ためには、なにを鍛錬することが必要でしょう?残念ながら、「氣」というものは、人から指南を受けて出現させるものではありません。自分の人生を通じ、理想の自分を見据え、行動しながら鍛えていくしか方法はないのです。ぜひ自分を鍛え、あなたのなかから素晴らしい「氣」を醸し出してください。

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②身だしなみ
「『身だしなみ』には、その人の人となりや内面が見える。日ごろ、どのようなことを考え、どんなふうに生きているかわかる。だから、着ているもの、その着こなしが『品』となり、目に見える形で伝わってくる。稽古着の着方、手ぬぐいの巻き方、防具のつけ方、そこを見れば一目瞭然だ」父から聞かされたこの話を、私はいまも胸に刻んでいます。まさにこれは、人間の「品」についての考察です。これまで経験してきたこと、考えてきたことは、あなたの人間性の礎です。それは空気のようにあなたを包みこみ、あなたという人の人間性を、出会った人に知らしめます。「身だしなみ」は、まさにあなたの価値観の表層であり、「品」そのものでもあるのです。たとえば、道を歩く学生たちは、同じ制服を着ているにもかかわらず、それぞれが違って見えるものです。もちろん、街中、電車、オフィスでも、周囲を見渡すだけで、品がある人、ない人がいることがわかります。

身だしなみを整えるには、自分の外観を整えるだけではなく、同時に内面も磨いていく必要があるわけです。「品」は、一瞬で相手に伝わります。選ばれるためには、なんとしても、「品」に磨きをかけなければなりません。まずは、「身だしなみはあなたの象徴」なのだという認識を持ってください。自分を選んでもらうための手段のひとつとして、誰からも“できる人”と見られる「身だしなみ」が必要です。人を外見で判断してはならない、というのはあくまでも建前なのです。まったくの初対面など、ほかに判断基準を持たなければ、見かけでジャッジするほかありせん。

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たとえば、四人の営業マンがいたとしましょう。あなたがお客さまだったら、どの人から話を聞きたいと思いますか?

A 身だしなみも整っていないうえに、自信もなさそうなタイプ
B 身だしなみは整っていないけれど、何やら自信ありげなタイプ
C 身だしなみは整っているけれど、自信はなさそうなタイプ
D 身だしなみも整っていて、自信もありそうなタイプ

おそらく、Dの営業マン以外ありえないでしょう。このように、人を評価するのは簡単です。では、あなたが営業マンだったなら、自信を持って、自分はDタイプだと言えますか?ただし、気をつけなければならないのが、「高級品の所持」=「身だしなみのよさ」ではないということです。

背伸びした高級スーツでは、分不相応で、かえって品を損なうこともあります。自分の立ち位置を見極めたうえで、それにふさわしいものを身につけることが大切なのです。私は、いまの自分より少しだけグレードの高いレベルの着こなしが、派手すぎず控えめすぎず、自分をよりよく見せる、最高のパフォーマンスだと考えています。とくに注意すべきものを書き出しますので、参考にしてください。

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〈スーツ〉
上着の肩幅がしっかりフィットしていること。”男は背中で語る”と言われるように、後ろ姿がものを言います。ぜひ、後ろ姿を気にかけましょう。背筋を鍛えることもお勧めします。ズボンの中心線のアイロンは必須です。膝が出たズボンや膝裏にシワの入ったズボンなどは言語道断。雨が多かったり、汗をかく時期は要注意です。

〈ネクタイ〉
ネクタイは、個人の美的センスが顕れます。爽やかに自分をイメージアップしてくれているものを選ぶこと。パスタソースやそばつゆのはねにも要注意。いつも自分で選んでいると、似たようなものになりがちなので、たまには人に選んでもらい、自分にはないセンスも取り入れてみましょう。

〈シャツ〉
襟の形、色・柄、何気なく見える襟ぐりのなかの模様、自分のイメージにあった質感のいいものを選んでください。シワは論外。ピシッとアイロンをかけましょう。アンダーシャツの色・柄が透けて見えるのは、品格以前に常識が疑われます。クールビズのときは、とくにシャツに注意を払ってください。ネクタイがないぶん、シャツで品格を表しましょう。

〈靴〉
泥やほこりを払い、しっかり磨いておきます。かかとのすり減りに注意。”靴を磨くことは男を磨くこと”と言われるように、端々にまで神経が行き届いているかを表すバロメーターが靴なのです。どんなに高級なスーツをまとっていても、磨かれていなかったり、かかとのすり減った靴を履いていたら、その時点でアウトです。

〈ベルト〉
座った人の目線あたりに位置するベルト。オフィスや電車で意外とチェックされているものです。クールビズの時期はもちろん、普段も目につきやすいアイテムです。太ってしまったのか、ベルトの穴部分がよれて、しわしわになったものをつけている人がいますが、もちろんアウト。靴の色と揃えておくことも大切です。

〈カバン〉
カバンの四隅や持ち手部分がすり減ったり、色が剥げていては、ほかがいくら完璧でも台無しです。

〈ペン〉
時・場所・状況によって使い分ける気遣いが必要なアイテムです。とくに、お客さまの目に留まるときには、使い捨てのボールペンなどではなく、それなりのステータスを感じるものを使いましょう。普段の仕事では、書きやすく、見た目にセンスを感じるようなものを選びます。

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③目の輝き

最後の決め手となるのは「目の輝き」です。”目は心の窓”と言われるように、感情が最初に表れる顔の部分は”目”であり、だからこそ、目を見れば、その人の状況がわかります。昇段試験を受ける剣士の目を見て、「できる」「できない」が一瞬で判断できるのも、それが理由です。怒っている人は、いくら平静さを装っても、その目に感情がにじみ出てしまいます。悲しんでいる人、喜んでいる人も同じです。やはり、目は口ほどにものを言うのです。そして、そんな表情は、周りの空気を変えるパワーを持っています。表情は伝染します。誰かに笑いかけられたら、多くの人はほほえみ返すでしょう。ある調査結果によれば、九八パーセントの人が、反射的に笑顔を返すとされています。

逆に、そばにイライラした人がいると、自分までイライラしてくるといった経験がある方もいるでしょう。選ばれる人であるためには、相手に危機感を覚えさせるような表情は、見せないように注意しましょう。穏やかな気持ちに裏付けられた、柔和な表情が大切なのです。ここで少し、興味深い話をしたいと思います。脳科学の研究の結果、人の顔の表情は、心のなかで考えている状況→その状況の目→口角の変化、このような流れで変化することがわかっています。ですから顔の表情は、本来、上から下へと変わっていくものなのです。

しかし人間には、「本音と建前」から「作り笑い」をすることがあります。人が作り笑いをするとき、その表情は通常とは逆に、下から上(口から目)へと作られていきます。 作り笑いをするときは、脳からの「笑ったときと同じ表情を作れ」という指令に従い、まず口角を上げ、それから目の周囲の筋肉を動かして笑顔に近い表情を作る、というプロセスをたどります。これを理解したうえで人の顔を観察すると、笑ったときに、表情が下から上へと変化する方がいることに気づくでしょう。

このようなしくみに気づかなくても、多くの人は無意識のうちに、作り笑いの不自然さを感じ取ります。作り笑いを不気味に思い、嫌な感情を抱くのです。作り笑いをする人のことは、警戒したり、敬遠したくなります。なにを考えているかわからない人とは、親しくなりたくないからです。素晴らしい演技をする俳優の笑顔は、作り笑いにはなっていません。彼らは役作りのために、役に心をフィットさせる努力をしています。心と表情のギャップを感じさせないよう、プロとして役作りに命をかけ、その人物になりきるのです。 自分の表情は自分ではわからないものです。

あなたも違和感のある表情が習慣にならないよう、ぜひ自分を客観的に俯瞰する意識を持ちましょう。それには、毎日の生活に小さな幸せを見つけ、喜んだり、感動したりする気持ちを数多く持つことが大切です。心からのワクワク感や感動から生まれる、自然な笑顔を習慣にしてください。

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「選ばれる人」の気遣い
人から「選ばれる、選ばれない」ということこそが重要であり、それは、その人の人生の質までも変えてしまうものなのです。元日本航空CAが教える、会社で思い通りの評価を得ている人がこっそり実践していること。「誰からも認められ、必要とされる力」は身につけられる!

佐野昭子 著
2016年 CCCメディアハウス刊
¥1,320(キンドル版)

 

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