高学歴の人に多い? アルコール依存症になりやすい女性とは。

Society & Business 2021.12.28

現代の女性たちの間で猛威を振るう災厄…。フランスでもアルコール依存症の女性が増えている。彼女たちの苦しみを理解し、より適切な方法でサポートするには? 依存症専門精神科医のファトマ・ブーヴェ・ドゥ・ラ・メゾンヌーヴに、いまだタブー視されるこの問題について話を聞いた。

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依存症専門精神科医ファティマ・ブヴェ・ドゥ・ラ・メゾンヌーヴに、いまもタブー視される女性とアルコールの問題について聞いた。photo : Getty Images

ーー女性のアルコール依存症は社会的な現象ですか?

依存症には総じて女性をめぐるあらゆる問題が集約されているものです。かつては男性の問題だったアルコールは、現代社会における女性解放の道のりを物語っている面もあります。ただ、そのために払わされた代価も無視できません。

飲酒習慣があるのはとくに脆い面を持った女性たちです。その多くは精神的、性的な暴力にさらされたことのある女性。ビジネスの世界では高学歴の女性ほどリスクが高い。彼女たちは偏見を打ち破るために仕事に打ち込む傾向があります。責任の重い地位についている女性は特にそうです。自律した自由な女性になるのは簡単ではありません。たとえば慢性的な痛み(子宮内膜症や線維筋痛症など)から不安障害やうつ傾向にある女性たちもアルコールに依存しやすい。鎮静効果のあるアルコールは常に評価の対象となっている女性たちにとって、ひとつの解決策のように見える。簡単に手に入りますし、処方箋もいりません。しかも合法です。

ーーどのようなきっかけで飲酒が習慣となるのですか?

患者から話を聞くと、きっかけは友人同士の飲み会という人が多いです。疲労やストレスを理由に、リラックスするためと言い訳をして飲む。そのうちひとりで飲むようになり、やがてボトルを隠し始める。夜、退屈しのぎに飲むのではなく、日中に飲むようになる。多くの場合、これが医療機関を受診するきっかけになります。アルコール依存症に悩む女性はロックダウンで明らかに増加しました。

ーー特に子育て中の女性のアルコールの問題はタブーとされています…

受診に踏み切るのが難しいのは、4年前に立ち上げた団体「Addict’elles」でも認識しています。アルコール依存症の女性たちは誰もがやめたいと思っているのです。しかしアルコールは彼女たちより強力なため、彼女たちは自分の自由を取り戻せない。

受診の動機として最も多いのは、子どもや孫、配偶者がいるときは配偶者との親密な関係を回復したいという気持ちです。一方、男性が受診するのは仕事に支障を来すのではないかという懸念からです。アルコール依存症の女性は、自分が何を愛しているのか、自分の居場所はどこなのかわからなくなってしまう…。彼女たちは文字通りアルコールに溺れてしまうのです。

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――特にリスクの高い職業はあるのでしょうか?

他者と関わる仕事がそうです。メディア、PR、マーケティング、教育、医療、司法…。私が「ハイパーウーマン」と呼んでいる女性たちは、ハードルを非常に高く設定しています。アルコールは彼女たちに自分には能力があるという幻想を与えてくれ、抑圧を解いてくれます。1日中張り詰めていた気持ちがアルコールとともに緩むわけです。また、試験や面接の前に飲酒するといった行動に繋がりやすい社会不安障害も見落とされているきらいがあります。

ーー女性たちの早期治療のために改善できることは何でしょう?

顔のむくみ、目のクマが目立つなど、アルコール依存症に特徴的な身体症状について、医療関係者への周知徹底に努めることです。アルコール依存症は病気であり、悪癖ではないと繰り返し言わなければなりません。飲酒習慣のある女性を監視しても無駄。2倍飲むようになるだけです。専門の施設を紹介するほうが賢明です。公の取り組みは効果を上げていません。職場での予防策はほとんどありません。アルコール飲料業界のターゲットのナンバー1は若者です。女性がアルコールに抱くイメージも変わりました。アルコールは解放やエレガンスのしるしとなっています。パスティス(*フランスのリキュールの一種)のラベルにもいまや花のイラストが描かれているくらいです! 女性がコカインやヘロイン中毒になったら、誰もが大変だと思います。ところが、アルコールに関しては必ずしもそうではないのです。

1)Fatma Bouvet de la Maisonneuve著『Les Femmes face à l’alcool.  Résister et s’en sortir』Odile Jacob出版。

texte : Delphine Bauer (madame.lefigaro.fr)

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