若者を中心に出現している「エコ・アンクシャス」とは?

Society & Business 2021.12.29

フランスの病院で精神科医として働くアントワーヌ・ペリッソロのところには、“エコ・アンクシャス”という新しいタイプのうつ病に悩まされている若い患者がやってくる。エコ・アンクシャスとは何なのか、ペリッソロにインタビュー。

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病院で精神科医として働くアントワーヌ・ペリッソロのところには、エコ・アンクシャスという新しいタイプのうつ病に悩まされている若い患者が来る。photo: Getty Images

――“エコ・アンクシャス”として、プレ・トラウマティック・ストレス(心的外傷前ストレス)の症状が見られる患者さんがやってくるとのこと。どのような人がなりやすく、どのような症状が現れるのでしょうか。

多くはうつ病など他の症状があり、すでに診察を受けている患者さんです。地球の環境が破壊されていることに対する悲しみ、恐怖、怒りなどの感情や動揺が複雑に絡み合い、身体に影響を及ぼすケースもあります。全員が精神科の診察を受けているわけではないので一概には言えませんが、どの年代の人にも現れる症状ではあるものの、若い人が最も多いようです。

――情報の“過剰摂取”がエコ・アンクシャスを育てていると思いますか?

そうですね。特にソーシャルメディアから得た大災害の写真や情報が蓄積され、本人にショックやプレッシャーを与えています。それらにより、人類の有限性に気付かされてしまうのです。

未来は行き詰まっているのだから、子どもを持つことに対して絶望的な気持ちを抱いている人もいます。いままで子孫を残すこと、文明を継続することは希望の象徴でしたが、これに対する根本的な問い直しを提起しているのです。

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――健康に対してはどのような影響が見られますか?

異常な猛暑や空気汚染が続くと精神状態が悪くなったり、攻撃的になったりすることがさまざまな研究で分かってきました。

“ソラスタルジア”という喪失感を意味する新しい概念があります。環境破壊により、慣れ親しんだ土地、地球の資源、それらとのつながりが失われてしまって覚える感情です。これらは全面化した深く重い疲労を引き起こす可能性があります。

――エコ・アンクシャスな人を助けるには?

彼らを受け入れ、耳を傾けること。医師に最新の知識を提供する必要もあります。このような不安を軽く受け流してしまう医師もいるでしょうから。

瞑想など緊張を解くテクニックも重要です。自然とのかかわりは患者にとって“自然って気持ちいい”と感じさせる以上の効果を発揮します。木や緑の多い環境は精神に有益な効果をもたらし、抗うつ剤を減らせたとする研究発表も多数あります。しかし患者によっては薬の投与が必要な場合もあります。

多くの場合、環境に携わる活動に参加し、集団で行動することによって無力感が軽減され、改善が見られます。不安を刺激する情報にアクセスする子どもたちにもこの現象が現れる可能性があります。その場合、子どもに寄り添い、不安を和らげ、安心に導くものを一緒に探すことが必要です。

アントワーヌ・ペリッソロ医師はアンリ・モンドール病院、アルベール・シュヌヴィエ病院(パリ公立病院連合、クレテイユ市)で精神科部長を務める。セリー・マシーニとの共著『Émotions du dérèglement climatique(異常気象の感情)』(Ed. Flammarion)がある。

text: Viviane Chocas (madame.lefigaro.fr)

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