柴田陽子に聞く、これからの仕事に必要な9つの格言。

Society & Business 2022.01.06

いま最も注目されるブランドプロデューサー、柴田陽子に聞いた、これからの仕事に必要な9の格言。

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ジャケット¥58,300、スカート¥34,100/ボーダーズ アット バルコニー

話題の商業施設のブランディング、さまざまな企業の商品開発、店舗プロデュースを手がける柴田陽子。自身のファッションブランド、ボーダーズ アット バルコニーは、コロナ禍でも前年比130%で売れ続ける。ジャンルにかかわらず成果を出す柴田の、仕事への向き合い方、ゴール設定、周囲の人たちへの心構えをインタビュー。大切なのは「心の充実」と語る、その真意とは?


#1
自分が計画して起こした出来事ではないところから、 
人生の転機が起きる。

私の転機は20代のサラリーマン時代に、会社から任命された「レインボー・ロール・スシ」(企画から開店まで手がけ大ヒットした麻布十番のレストラン)の開業プロジェクトです。すべてを任されたものの、初めは自分にはできないと思い、辞退を申し出たんです。でもあの仕事をやっていなければ、いまの私はない。誰にでもチャンスはあって、そのチャンスをひとつ掴めば、人生を創っていくきっかけになる。だから仕事を依頼される、というのはそれだけでラッキーで、すごいこと。どんな機会でも、自分が求められたら張り切って取り組んでほしいと思います。

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#2
自分の道を切り拓いていくために
いちばん必要なことは、「他己愛」。
自己実現だけでは 何十年も走り続けることはできません。

ひとりでは何もできないな、と思うんですよね。自分の味方、一緒にやってくれる人を増やすことが大切です。味方が多い人を見ていると、自分より他者のことを優先しています。私がゼロからいろいろな事業を、ある程度形にすることができたのは、私のプレゼンテーション能力やアイデア力を評価されることもありますが、仲間や理解してくれる人を増やし、信頼関係を築いていったことがいちばん大きい。「自分はいつも人に尽くしてばっかり」と感じる人は、人に喜ばれることをした、それは自分が頑張ったからだ、と自分を認めてほしいと思います。

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#3
王道のやり方か、一過性の処理にすぎないのか、
長く続くものか、正しいか、誠実か。
そういうことが物事の判断基準です。

以前、上司に言われた言葉、「道の真ん中を歩く」とはどういう意味だろうと考えた時に、王道でいくことだと思いました。邪念を抱かず、一点の曇りもない仕事をしたい。だからいつも脇道に逸れないよう、王道か、正しいか、誠実か、を照らし合わせながら考えています。あるプロジェクトでトラブルが発生し、社員から「こんなふうに解決していいですか」と相談を受けたら、「それは道の真ん中なの?」と聞き返します。「道の真ん中だと思います」と返ってきたら「だったらいいんじゃない」と答えますね。

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#4
数字や売り上げではなく、心の充実を追求する。

まずは、自分に近い人に良くすることから、自分の世界を少しずつ広げていくこと。そうすれば、その人にしかない物語ができて、売り上げた金額でも、収入でも、測ることができない尊いものになると思います。

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#5
健康な身体でないと、悩んではいけない。

睡眠と食事を十分に取って、元気な時にしか悩んじゃいけないというルールを持っています。そうすると、まずは寝てみるか、ということになります。悩まない人はいないし、そのうちに仕事や課題に慣れるし、安心して“悩みの時間”をお過ごしください、と言いたいです。いま私の睡眠時間は5時間ですが、子どもの受験の時は4時間まで減らしたんです。半年間に30分ずつ減らしていけば身体も慣れるかなと思いましたが、難しかったですね(笑)。いまは毎日5時半に起き、犬の散歩をし、1週間にヨガを2回、また週に2度1時間ずつ、自分が決めたトレーニングをしています。元気が成功のもとですから。

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#6
道の真ん中を歩く。邪道なことをせず、
正攻法で物事を勝ち取っていける。
あなたにはそんな人生が似合う。

これは独立した時に、元上司の社長から言われた言葉です。「あなたが道の真ん中を歩いていれば、いろいろんなものも人も寄ってきますよ」と励ましてもらいました。まったく別のシーンで、サラリーマン時代に「柴ちゃんは、これから先どんなことがあっても、晴れた道の真ん中を、元気に手を振って歩くような生き方が似合う」と言われたんです。その時は意味がわからなかったけど、うれしかったですね。それから「道の真ん中を歩く」は私の人生のモットーです。

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#7
人としての充実感を得ながら、
さらにビジネスと経済活動を成り立たせるというのは、
大変な仕事です。
でも、やるもやらないも自由な中で、
私はそこを追いかけてみたい。

プロジェクトを進行する時に、いくつかのゴールを設定します。たとえば、ある社員は事業計画を作り、滞りなく進行することが目標、もうひとりの社員は、そばで話を聞きケーススタディとして学ぶことに意味がある、それぞれに意味づけをし、仕事を通して意義のある時間を提供し、プロジェクトが進んでいくことが理想です。そうすると本人も前向きに頑張れるし、たとえ残業したとしても時間では計れない心の充実がある。同時にビジネスだから数字も成り立たせなければならないです。利益を確保し、事業計画が遂行できるか。美しい事業計画の中に、それぞれの美しい人生が成り立っている状態を作る、それが私の役割です。

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#8
自己愛とか、ありのままという言葉が好きじゃないんです。
ありのままじゃ困っちゃうと思うんですよね。
できることを増やさなきゃ。

100年間、現役で生き続けなければいけない私たちは、学びと仕事を両方平行してやっていかないと、一生食べていくことはできません。「物心ともに自立をし、味方・応援してくれる人が多い人生」。これが、私が考える幸せの定義。そのためにできることを増やし、安定した心と元気な身体とお金になる仕事を手に入れて、近くの大切な人たちに尽くし助け合う、そんな社会が理想ではないかなと思います。

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#9
歯をくいしばって、目の前の期待だったり、
いただいた機会に取り組んでいくことで、
今後、自分の人生はどうなっていくんだろうと楽しみになります。
さらに、与えられたことだけを頑張るのではなく、
人にしたいこと、世の中の役に立ちたいことを
自分から編み出して形にして、動かしていかなければいけません。

女性が一生懸命働いた先にどうなるのか、日本にまだロールモデルが少ないし、そんな中、私が果たせる役割は何か、コロナ禍の中、毎日考えていました。ド素人の普通のOLだった私がみなさんに知っていただけるようになった。私が培ってきた、人生の生き抜き方を学んでいただける場所を提供することは、私にしかできないことかもしれないと「シバジムアカデミー」を立ち上げました。1年半後に、独立してちょうど20周年です。私が世の中に対してできることを形にしていきたいと思っています。

Yoko Shibata
神奈川県生まれ。外食企業を経て2004年に「柴田陽子事務所」を設立。「グランツリー武蔵小杉」の総合プロデュース、「渋谷ヒカリエ」、ローソン「Uchi café Sweets」などのブランディングを手がけて話題に。ファッションブランド、ボーダーズ アット バルコニーではデザイナーを務める。仕事で培った人間力やノウハウを教える「シバジムアカデミー」設立。『勝者の思考回路』(幻冬舎)など著書多数。

*「フィガロジャポン」2022年1月号より抜粋

photography : Sodai Yokoyama, text : Maki Shibata

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