【イベントリポート】「女性が働きやすい社会のために、フェムテックができること」

Society & Business 2022.03.09

フィガロジャポンはこのほど、ビジネスの力で日々の暮らしの課題解決を目指すコミュニティ、Business with Attitude(以下、BWA)事務局を開設しました。今後隔週火曜日の朝時間に、より良い日常をつくるため、さまざまな課題の解決に取り組む起業家や専門家の思いや活動を紹介するオンラインセミナーを開催します。

2月22日に開かれた第1回定例セミナーでは、「女性が働きやすい社会のために、フェムテックができること」と題し、日本のフェムテックのパイオニア、fermata株式会社CEOの杉本亜美奈さんに、ご自身の取り組み、フェムテックの現状についてお話いただきました。以下、杉本さんのお話を抜粋してお届けします。

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■フェムテックって何?

フェムテックは、もともとは投資家や起業家の間で2012年頃にできた言葉だと言われています。女性の健康というタブー領域は、潜在ニーズはあっても、産業化がものすごく難しい領域。その分野にどうやって投資を集めようかと考えたデンマーク人の投資家が、当時使われ出したフィンテックやエドテックと並んで作った言葉です。それまでにもフェムテック関連のプロダクトはありましたが、「フェムテック」という言葉が生み出されたことによって、その言葉の傘の下に、さまざまな商品やテクノロジーサービスが集まり始めました。

いま、日本国内でフェムテックと言われているものは、起業家と投資家の間とで使われている言葉とはまったくの別定義。月経カップは1930年代から作られてるし、吸水ショーツも、もともとはペチコートの技術を使って10年ぐらい前からアメリカで作り始められたものなので、まったく新しいものではないんです。

実際グローバルレベルで使われているフェムテックは、女性特有疾患だったり、生理、妊娠、更年期、セクシャルウェルネス、また、認知症や骨粗鬆症といった男女ともに同じように起こる疾患でも、女性の症状が違ったり、疾患率が高かったりするようなものに対して、最新のテクノロジーを使ってアプローチをしているサービスや商品を指します。日本ではカスタマー向けの商品というイメージが強いですが、実際は産婦人科や大企業の福利厚生といったビジネス向けのサービスや、いままで可視化されなかったものを、IoTを使ってデータ化するようなものも含まれます。

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■fermataはどんな会社?

fermataは、潜在ニーズがあるヘルスケア分野をマーケット化しようとしている会社です。いまは女性の健康にフォーカスをしていますが、男性のセクシャルウェルネス、LGBTQ、小児がんなど、これまでタブー視されていたり、需要が少なかったりと、さまざまな理由で産業化されてこなかったヘルスケア分野はたくさんあります。

いま、テクノロジーが進んできて、これまで可視化されてこなかった情報がデータ化され、タブーだと思われていたことが、もはやタブー視されなくなってきています。例えば、これまで捨てられていた経血からDNAのゲノムデータを取ることによって、いままで予知できなかった子宮体がんを早期発見できるようになったり、女性ホルモンの濃度をリアルタイムで測れるようになったりしている。すると、潜在ニーズがわかりやすくなり、その分野に投資家や起業家、技術者たちが参入しやすくなります。

一方、新しい産業が作られる時は、法律や規制といったルールもアップデートしていく必要があります。特に女性の健康分野は、いままで薬機法(*医療機器などの品質、有効性及び安全性の確保に関する法律)で注目されてなかった領域です。ある程度、その分野が認知され、ものが市場に出てくると、産業や国、自治体、各省庁が一緒になって安全性の基準を作り始め、承認基準がアップデートされていく。その部分に専門家が入って、サポートしていく必要があると思います。

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■新しい事業を始める時、規制が法律の壁をどう乗り越える?

規制や法律の壁はネックではなくて、オポチュニティと捉えています。そこに壁があるということは、他の人たちができないということ。どうやってそこに風穴を開けていくかで会社の優位性はどんどん強くなってくる。だから、あまりネックだとは思ったことはなく、そういうのがいっぱいある方が面白いと思うんです。

基本的に国や法律や規制は、日々変化していくもの。同じものが100年前にあったかというとそうじゃない。要は新しい産業が出てくると、いままで気づかなかったつじつまが合わない規制やルールが見えてくる。そのルールを一つずつ、何でこうなっているんだろう? と整理する。そして、現行のルールや規制で自分の作りたいものが作れないのであれば、そのルールをぶっ壊していけばいいし、ルールがないところで試してみればいいと思います。

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■フェムテックの現場から見て、女性が働きやすい社会って?

女性が働きやすい社会とは何か、まず個々人が働きやすいとはどういうことか、自主性を持って考えるところがスタートだと思います。

今後どんなフェムテック商品が日本の市場に出てくるかはわからないけれど、フェムテック商品を通じて、自分自身の身体のことを知り、選択肢を増やすことは可能になると思います。ただ、フェムテックが産業化すること=女性が働きやすい社会になることは絶対にない。やっぱりそれぞれが自主性を持って考えないといけないと思います。

 

【セミナーのアーカイブ動画はこちら

 

 

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■Q&A

——フェムテックで今後期待される技術革新は?

産婦人科で使われている技術は実はこの75,6年、あまり進歩していなかった。また、世界で使われている医学研究費の中で、女性の健康に使われているのは2.6%程度。そこがいま動き出したので、いろんな意味で技術革新が起こるのではないでしょうか。

ただ、それをフェムテックと言ってしまうのは、何かおかしいと思います。あくまでヘルスケアの一環ですから。そういう意味で、私は3年後、フェムテックという言葉が使われていないほうが良いと思っています。

——タブーな分野を明るみに出すために必要なことは?

タブー視されているすべての分野が「悪い」ということではないと思います。歴史的、宗教的、文化的背景も含め、なぜ、ある特定の分野がタブー視されているか?を考えてみることがスタートだと思います。

例えば、女性の生理や出産は、経血や血にまつわることなので、一般の人が文字を読めなかった時代、宗教的・文化的にタブーにすることで、疫病等の蔓延をコントロールしていたことはあると思います。ある種の公衆衛生的政策ですね。しかし、時間が流れ、もともとの理由が忘れ去られ、タブーだけが残った、ということもあったと思います。

——フェムテックに携わる亜美奈さんから見て、フェムテックと医師との連携についての今後の展望はありますか? また、フェムテックに携わるからこそ感じる女性が働きやすい社会に貢献できる医師像はありますか?

貢献はできると思います。ただ、どのような医師像というイメージはないです。いろいろな形があっていいと思います。

——セルフプレジャーがフェムテックの分野の一つである理由は?

セルフプレジャーがフェムテックの分野の一つである、とは誰も定義していないのではないでしょうか? しかし、「セクシャルウェルネス」という言葉は、性と生殖における健康を指し、ウェルネス(男女関係なく)の大事な分野とWHOも重要視しています。

WHOによるセクシャルウェルネスの定義:
人間の生殖システム、その機能と(活動)過程の全ての側面において、単に疾病、障害がないというばかりでなく、性的存在に付随する身体的・情緒的・知的・社会的側面を統合したもの。セクシャルヘルスは、セクシュアリティと性的関係に対してポジティブかつ丁重なアプローチが必要とされるだけではなく、強制的・差別的・暴力的な性行為のない快くて安心な性体験も含まれる。セクシャルヘルスが獲得・維持されるためには全ての人のセクシュアルライツが尊敬され、守られ、満たされるべきである。

 

——就職先として気になっているためどのような企業があるか、フェムテックに携わるお仕事にはどのようなものがあるのか教えてください。

フェムテックに携わる仕事というものは多岐にわたります。まずはご自分がなぜこの分野に興味があり、自分のスキルがどのように活かせるのかを考えてみることがスタートだと思います。

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