コロンビアで24週まで中絶合法化!対立する両者の意見。

Society & Business 2022.03.16

From Newsweek Japan

文/松尾彩香

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©️Youtube - COLOMBIA despenaliza el ABORTO | EL PAÍS

コロンビアの憲法裁判所は2月21日、妊娠24週までの人工妊娠中絶を合法と認める判断を示しました。

カトリック教徒が多い中南米で妊娠中絶手術が合法化されたのはコロンビアが5カ国目。

歴史的な判決だと抱き合って喜ぶ女性達の姿が報道される一方、人工妊娠中絶は殺人だとこの判決に不満を持つ人の声も目立ち、意見は真っ二つに分かれています。

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ANÁLISIS | COLOMBIA logra una avance sin precedentes al DESPENALIZAR el ABORTO | EL PAÍS

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私の身体は私のもの。
 

コロンビアでは数年前からCausa Justaと呼ばれる団体を中心に、人工妊娠中絶手術を合法にするよう求める動きが進んでいました。

この国で合法に中絶手術を行えるのは、1)女性の身体・精神的な理由で母体の健康を著しく害する恐れがある場合、2)胎児が致死性の病気を持っている場合、3)性的暴行によって合意のない妊娠をした場合 に限られ、違反した場合は16カ月から54カ月の禁錮刑となる可能性がありました。

そのほかの理由で中絶を望む女性たちは、罪を逃れるために「闇中絶」と呼ばれる無許可や無免許で中絶手術を行う医師を訪ねて手術を行う場合もあり、その数は年間で40万件を超えています。さらに闇中絶ではその安全性の低さから年間70人が死亡し、13万人以上が合併症を患っていると言われているのです。

また統計局の調査によるとコロンビアでは15歳から19歳の少女の5人にひとりが妊娠や出産を経験しており、2020年に出産した女性のうち4268人が14歳以下だったという結果が出ています。若年出産はリスクも高く、出産を理由に学業を中断せざるを得なくなるなどの理由から、少女たちの妊娠出産には以前から懸念の声が上がっていました。
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昨年12月地元メディアRevista Semanaが開いた2022年大統領選挙に関するディベートの中で、中絶手術合法化についての意見を求められた人権・環境活動家のフランシア・マルケス氏は次のように発言しています。

「もし中絶が罪になるのなら多くの男性も罪を償うべきです。コロンビアでは多くの家庭の大黒柱は女性。なぜなら男性は'中絶'し父親の責任を放棄したからなのです。私は16歳で出産しましたが、ひとりで息子を育てるために退学し勉強を諦めることを余儀なくされました。父親はどこへいったのでしょう。男性は中絶してもいままで通りの人生を送り、女性が中絶すると犯罪者になるのです。」

コロンビアはシングルマザーがとても多い国のひとつです。女性の妊娠がわかった途端、責任を逃れるために子どもと女性を置いて出ていってしまう男性も残念ながら珍しくありません。フランシア氏はそれを「男性の中絶」と表現し、女性にも同じ中絶の権利を与えるべきだと人工妊娠中絶手術の合法化を支持しました。

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©️YouTube - Lapidaria frase de Francia Márquez sobre el aborto en Colombia | Elecciones 2022

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「私の身体は私のものだ」「産むかどうかは私が決める」

裁判当日、判決を聞くために緑のバンダナを手に集まった中絶賛成派たち。中絶合法化の知らせを受けると歓声を上げ抱き合って喜びを分かち合い、中には涙を流す人の姿も見られました。

Causa Justaのメンバーで弁護士のマリアナ・アルディラさんはEFE通信のインタビューに「24週までの中絶合法化は女性たちにとって非常な大きな成果であり、コロンビアやラテンアメリカにとって歴史的な出来事です。これは人生、健康、自由、そして女性の決定権を保証し続けるためのとても大切な第一歩なのです。」とコメントしました。

IMG_9470-thumb-1928x1125-379023.jpeg©️Youtube - COLOMBIA despenaliza el ABORTO | EL PAÍS

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中絶は殺人、犯罪だ!と訴える人々。

「女性の勝利」とも表現される今回の判決ですが、女性はみな喜んでいるわけではありません。この判決は賛成5反対4で可決されましたが、賛成に投票した5人のうち4人は男性で、反対に投票した4人のうち3人が女性だったのです。

カトリック教徒が多いこの国では、生命は神から与えられるものだと信じ中絶を神に対する冒涜と考える人が少なくありません。それほど信仰深い人でなくても命が宿った時点で人権があると主張したり、中絶は殺人だと訴えたり、今回の判決に反対を訴える市民は大勢います。イヴァン・ドゥケ大統領も中絶反対派であり、今回の判決に関して「非常に残虐な判決だ」とコメントしているのです。

中絶合法の判決を受けて27日、教会団体と中絶反対を訴える団体によってコロンビア全土でデモ行進が呼びかけられ大勢の中絶反対派のコロンビア人が街に繰り出しました。

団体のメンバーは「コロンビアは命を尊重し愛する国です。私たちの赤ん坊たちの殺害を促進する事を許してしまうような憲法裁判所の新たな暴力は望みません!」と、今回の判決に憤りを感じているようでした。 

女性の権利を主張する中絶賛成派と、新しく宿った命を守りたい中絶反対派。この2つの正義がぶつかるのを他のラテンアメリカの国はどう見ているでしょうか。まだまだ保守的な国が多いラテンアメリカで、コロンビアに続いて人工妊娠中絶手術合法の動きが高まる国が出てくるのか、これから注目していきたいところです。

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©️Youtube - COLOMBIA despenaliza el ABORTO | EL PAÍS

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text: Ayaka Matuso

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