子どもたちに、戦争をどう伝えればいい?

Society & Business 2022.03.16

「うちにもバクダンがふってくるの?」 フランスの小児精神科名誉教授(1)であるアニエス・フロランは、幼い子を安心させるためはニュースを隠すのではなく、ちゃんと説明してあげることをすすめる。 フランスのマダムフィガロのインタビュー。

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ウクライナ戦争をどう伝えればいいのだろう? photography: Getty Images

——マダムフィガロ: 長期化するウクライナ危機について子どもたちはどのような感情を抱いているのでしょうか。

アニエス・フロラン: ある程度の年齢に達した子やティーンエイジャーなら、一つの国が攻撃されたことに対して怒りを感じるかもしれません。複雑な情報を考慮しながら、何が原因でこのような状況が起きたのか考えることができます。

しかし小さな子どもはそのようなことはできません。彼らにとってウクライナ戦争は“外の”出来事です。家庭外で起きるすべての出来事同様、それらがおうちの中でも起きる可能性があるのか、ということが彼らにとっての最優先事項となるでしょう。

“共感する力”は幼少期から芽生えます。赤ちゃんを抱いている母親の映像や、泣いている子どもの映像などに悲しみを覚えるかもしれません。しかし彼らは自分の周りにいる大人の反応に最も影響されます。大人が何を言っているか、どのような恐怖感を表しているかなどです。

——大人はこのニュースについて、どう子どもに話しかければいいのでしょうか。

子どもにとって親は安心のシンボルです。大人が心配していれば、子どもは不安になります。ニュースが家庭生活の中心にあり、身近な問題として話題にのぼれば、この戦争を子どもの“身近に”置くことになります。テレビで繰り返し流れる映像を大人がコメントしながら観ていれば、子どもとそれを共有することになります。いくら彼らが他のことに興味を抱いているように見えても、です。そのため明確に、しかし恐怖を与えないように出来事を伝え、彼らの質問に答えてあげるのが大切です。

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——どのような言葉を使えばいいのでしょうか。

相手が子どもであっても、“善人”と“悪人”に分けて説明すると歴史の複雑さを覆うことになってしまいます。ロシアはウクライナを攻撃している。なぜなら昔ウクライナはロシア帝国の一部だったことがあり、プーチン大統領は暴力でウクライナを取り戻そうとしている。このようにシンプルに伝えてもいいですね。情報をたくさん盛り込む必要はありません。彼らの年齢では最小限の情報しか必要としていませんから。安心させてあげるために世界地図を見せて、戦争はおうちのすぐそばで起きているわけではないことを説明してもいいですね。

フランスは民主的な価値観を大事にしている国であることを話すよい機会でもあるのではないでしょうか。国民が何かをしたいか、したくないかを決めることができる国であること。フランスは例えば隣の国であるベルギーを攻撃することは絶対にないということも。子どもが強く不安を感じているなら、絵で表現させるのも有効な方法です。

——現在起きていることについて、何も話さないことの危険はありますか?

もちろんあります。なぜなら、子どもたちはさまざまな方法で情報をつかんでくるからです。他の親や友だちが話しているのを聞いたり、SNSで見たり......。家で子どもに戦争の映像や写真を見せていなくても、見ている子は必ずいます。学校や、幼稚園でさえも話題に上がることがあるでしょう。戦争ごっこをする子もいます。そして間違った情報が行き交うこともある。だからこそ、正しい言葉でニュースを解説してあげることがとても重要なのです。

“ウクライナ”という言葉さえいままで聞いたことがない子が多く、この国に対してイメージを抱くことは難しいでしょう。だからウクライナの言葉や住んでいる人々について調べ、いまの状況に現実味を与えましょう。どのようにしたらウクライナの人々を助けることができるか一緒に考えてみましょう。これによって自分たちも社会の当事者であることに子どもが気付けたらいいですね。寄付することを検討することもできます。戦争の怖い側面ばかりに集中するより、自分がいまできることに目を向けるほうが建設的です。子どもたちが責任のある世界市民に育つことを望むなら、それが第一のステップです。

(1)アニエス・フロランさんはナント大学の小児・教育精神科の名誉教授であり、「La Psychologie du développement. Enfance et adolescence(発達心理学。幼児期と10代)」Éditions Dunod, 2019年の著者である。

text: Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr), traduction : Hideko Okazaki, Hana Okazaki

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