インスタグラムブロックでロシアのインフルエンサーたちが涙の投稿。
Society & Business 2022.03.17
ロシアで、インスタグラムへのアクセスがブロックされた。同プラットフォームでコンテンツを発信して生活するファッションやビューティのインフルエンサーにとって、絶望的な禁止令だ。
インフルエンサーの国がパニックに陥った。フェイスブック、ツイッターに続き、今度はロシアでインスタグラムがSNSの「ブロック」リストに仲間入りした。3月14日の朝、AFPのジャーナリストたちはインスタグラムのアプリを更新することができず、検閲を回避するためのツールであるVPN(仮想プライベートネットワーク)なしではサイトを見ることができないことを確認した。ロシア当局は、(Facebookの親会社で米大手のメタ社が所有している)インスタグラムに対し、ウクライナ戦争に関してロシア国民への暴力行為を呼びかけていると非難している。
今回の発表は、プロダクトプレースメントの黄金郷であるインスタグラムの投稿をマネタイズしている一部のコンテンツクリエイターにとっては死の宣告ともいえる。この悲しみを、喪に服すことに例える人もいる。「私はまだ怒りの段階にいる。受け入れられるのは、まだ先だわ」と、SNSで300万人近いフォロワーを持つロシアの有名なファッション&ビューティブロガーのカリーナ・ニゲイは投稿した。
---fadeinpager---
憤りと共感
禁止令が出る数日前、彼女が泣きながら運命を嘆く動画がウェブ上で話題になった。ネットユーザーから、ウクライナの一般市民が苦しんでいるのに不謹慎だ、と非難の声が上がったのだ。「ロシア人ブロガーが、あと2日で自分のインスタグラムアカウントが使えなくなると言って泣いている。同胞を含む何千人もの犠牲が出ているにもかかわらず、彼女はまったく気にしていない。いま、彼女が一番心配しているのは、レストランの料理の写真を投稿できなくなることだ」と、ヨーロッパのメディア「NEXTA」はツイッターに怒りの投稿をしている。
One of the #Russian bloggers cries that in two days her Instagram will stop working
— NEXTA (@nexta_tv) March 11, 2022
She does not care at all about the thousands of dead people, including her compatriots. Obviously, her biggest worry right now is that she won't be able to post pictures of food from restaurants. pic.twitter.com/LSdBiSlwHr
とあるユーザーは、ロシア軍に包囲され、戦闘が続くウクライナ第2の都市ハリコフを指して、「ハリコフに引っ越せばいいじゃん、インスタグラムはまだ使えるよ」と皮肉った。
ロシア当局の措置が、インフルエンサーの重要な収入源を奪っていると指摘する人もいる。「彼女はインスタを使えなくなって泣いているのではない。自分の収入源がなくなるから泣いてるんだよ。他に仕事がなければ、破産して、無職になる......。そうなったら、君も泣くだろ」というようなツイッターの投稿もあった。この点に関しては、ロシア人のブロガーで、SNSで240万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーのアレクサンドラ・ミトロシナも同意しており、「インスタグラムと連動してビジネスを展開している中小企業」を心配している。
---fadeinpager---
「私の魂の一部」
ある国民的な有名人は、華美なヘアメイクを脱ぎ捨て、ありのままの姿で失望を表現した。歌手兼リアリティ番組のスターで、2000万人以上のインスタフォロワーがいるオルガ・ブゾワは、カメラに向かって泣き崩れ、その動画は200万回以上再生されている。アメリカのウェブサイト、Business Insiderの翻訳記事によると、彼女はロシア語で「あなたたちを失いたくないと認めるわ。将来がどうなるかわからない。私は人生、仕事、魂をみんなとシェアしてきた。それらすべては仕事としてではなく、私の魂の一部だった。私の人生は奪われた」と語り、「これからも泣き続けるでしょう」と語った。
---fadeinpager---
新しいコミュニケーションツール
ロシアのインフルエンサーたちの多くは、フォロワーをフコンタクテとテレグラムのアカウントに誘導している。これらのプラットフォームはそれぞれフェイスブックやメッセンジャーに相当する、ロシアで広く使われているツールだ。2019年のミス・ロシア、アリーナ・サンコもこのツールでファンと連絡を取り合うつもりのようだ。
興味深いことに、アメリカのSNSにアクセスできなくなることに打ちのめされているように見えたカリーナ・ニゲイでさえ、これらの新しいアプリをすぐに受け入れたらしい。涙の動画公開からわずか数日後、カリーナは「最初は感情的になって、他のマルチメディア・プラットフォームの開発を拒んでいたけれど、いまは適応しなければならないの。自分を見失わないことが大切(...)、たとえ世界から追放されたとしても、私たちにはみんながいる」と、整えられたウェットヘアと赤いリップの完璧なルックで撮影したセルフィーと一緒に投稿した。
カリーナ・ニゲイは、新しいコミュニケーション・チャンネルでフォロワーを励ましながら、限られた商品の中からインスピレーションを得ることを提案している。花柄のワンピースを纏った写真とともに、「クールなロシアンブランドをまだまだ紹介していくわ。(中略)これからは地元のブランドにも注目していきます。地元ブランドを発見する時が来たわ」と、彼女は投稿している。「みんなに楽しんでもらうために、ロシアのクールなブランドのリストを紹介し、みんなを元気づけるために反危機的なライブショーを主催し、ファッションの行く末を伝えます」と続け、「美が世界を救う」と締めくくっている......。
text: Victoria Hidoussi (madame.lefigaro.fr)