フランスで急増する女子の自殺未遂はなぜ起こるのか?

Society & Business 2022.05.15

フランスで、パンデミック以来、若い世代の自殺未遂が増えている。この傾向はとくに女子に顕著で、2021年の救急病棟への搬送件数はほぼ2倍に増加している。

lexplosion-des-tentatives-de-suicide-chez-les-adolescentes.jpeg「若い女性たちの場合、自殺行動を起こすことは、自分が抱えている精神的苦痛を表現する手段なのです。この点を考慮することは重要です」と、児童精神医学教授のマリー=ローズ・モロは説明する。photo : Getty Images

このところ若い世代のメンタルヘルスは危惧すべき状況だ。2020年に1回目のロックダウンが実施されてから数カ月後、ティーンエージャーや学生の自殺未遂件数の増加を示す複数の調査結果が発表され、その原因として、コロナ禍とそれに伴う数々の規制の関与が指摘された。フランス公衆衛生局が公表した2021年の最新データによって、この現象がとくに女子において顕著であることが明らかになった。

このデータは1年分の数字を反映したものではなく、第1週から第43週(10月末)までのまとめだが、それでもデータは明らかに増加傾向を示している。フランス公衆衛生局の統計によると、15歳以下の女子では、自殺未遂による救急搬送件数が、過去3年間と比較して40%増加。15~29歳の若い女性たちにも同様の傾向が見られ、2021年の自殺関連行動は22%増加している。対して同世代の男性では増加率はわずか1%。ここまで大きな隔たりがあるのはどんな理由からだろうか? 自殺行動に至る若者は女性の方が多いのはなぜなのか?

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複数の要因

児童精神医学教授で『思春期の子どもたちを愛してみませんか』の著者でもあるマリー=ローズ・モロ(1)によると、自殺未遂件数で男女間に大きな開きがあるのは、パンデミック以前から見られる現象であり、複数の要因が考えられるという。「若い女性たちの場合、自殺行動を起こすことは、自分が抱えている精神的苦痛を表現する手段なのです。この点を考慮することは重要です」と前置きした上で、この傾向に明快な理由を挙げるのは非常に難しいと説明する。「人によっては、月経中に精神的に不安定になりやすいことが理由かもしれません。また世代間で受け継がれた疾患が要因となることもあります」。社会文化的な文脈も見逃してはならない要因のひとつだ。たとえば学校でのいじめや、それを助長するSNS、また家庭内での暴力行為の増加なども「行動に移したいという衝動に拍車をかける理由」となる。

とはいうものの、死亡に至る自殺の割合は依然として男子の方が多いことも明記しておかなければならない。15歳前後の女子の自殺行動では、薬の服用など、致命的な結果を招く可能性が比較的少ない、いわゆる「ソフトな」手段が用いられることが多いためだ。モロによると、これにはアイデンティティや社会構造のより深い問題が関わっている。「女子は男子に比べて生きづらさを表現することに抵抗感が少ない傾向があります。こうした意味では、女子の方が人に相談したり、自分が不調を抱えていることを比較的容易に認められる。それゆえ彼女たちは相談窓口などの支援を活用することができるのです。したがって彼女たちが自殺を図るのは、それ自体が目的というよりも、表現の一形態なのです。それに対して男子の場合は、感情を内に秘め、衝動的な行動を取る傾向があり、首を吊ったり窓から身を投げるなど、過激な解決策に向かいがちです」

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「無感覚になりたいと思った」

こうした状況のなか、また別の重要なポイントも明らかになりつつある。パンデミックの影響で、若者たちへのケアが行き届いていない点だ。各種施設で窓口業務が休止し、リモート診療が行われ、順番待ちリストができている。「コロナ禍以降、心理カウンセラーのもとには患者が殺到しています。需要が多くなれば供給は追いつかず。そのために孤立感が一層強まってしまう」。モロが最近頻繁に耳にする言葉は次のようなものだ。「無感覚になりたいと思った」、「私には何の価値もない」、「話を聞いてくれなかった」……。

通常、学校は自己肯定の過程において決定的な役割を果たすが、度重なるロックダウンで学校も休校しがち。比較的強い子どもたちにさえ影響が出ている。自己肯定感の低さは、現代のティーンエージャーによく見られると、モロは指摘する。彼女が形容するように、まさに「時代の病」だ。「少女たちにあまりに多くの要求をしている…」とモロは苛立ちを隠さない。

思春期には身体にさまざまな変化が起こるけれど、自分の中に閉じこもっていてはその変化を理解することが難しい。「人生に生きる価値はないという感情は、本来なら学校で培われる自信、つまり自らのアイデンティティを肯定する気持ちと関連しています。思春期の少女にとっては、自分の居場所を見失ったり、友人たちに対して仲間意識を持てなくなったり、グループからはみ出してしまうと、拠り所が一切なくなってしまう」

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現実としての死

そしてパンデミック以降、若者たちは死や病をより強く意識するようになっている。「もちろん、男子にとってもそうですが、女子にとって、死はリアルなものになりました」とモロは言う。さらに悪いことに、パンデミックによって死は強い孤独感に覆われることになった。「たった一人で、マスクをしたまま亡くなった祖父母を目の当たりにした子どもたちもいます。パンデミックで死がありふれたものになったかどうかはわかりませんが、喪の儀式がより困難になった、さらにいえば、ほとんど不可能になったのは確かです」

(1)Marie Rose Moro著『Et si nous aimions nos adolescents』Bayard出版刊。

 

text : Léa Mabion (madame.lefigaro.fr)

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