レズビアン女性が職場で直面する「二重の差別」とは?

Society & Business 2022.07.07

職場に根強く残る性差別。それに加えて、性的指向も依然として差別の対象であり続けている。フランスでは、レズビアン女性たちは多くの場合、私生活について沈黙を守らざるを得ない状況にある。

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レズビアン女性たちは職場でカミングアウトするのを躊躇している。photo : Getty Images

彼女たちは口々に「二重苦」だと訴える。レズビアン女性たちが職場でカミングアウトすることはなかなか難しい。業種やポストに関わりなく、彼女たちは不躾な発言や無理解、つまり、差別に遭うことを恐れているのだ。

「差別意識はちょっとした指摘や視線に表れます。何でもないことに見えるかもしれませんが、こうして私が“背負っている荷物”にさらにひとつ小石が加わる」と、食品関連企業の管理職の39歳のオロール・フルシは語る。「いわば二重苦です。性差別に加え、女性と一緒に暮らしていることで、ますますマージナルな存在になっていく」

LGBTに対する職場での差別撲滅のために闘う市民団体「L’Autre cercle」の依頼で、フランス世論研究所が1400人のレズビアン女性を対象に実施した調査がある。それによると、80%がホモセクシャルであることを同僚の一部には打ち明けているが、上司に対してカミングアウトした人は3分の1以下。女性と交際していることを職場で一度も話したことがないレズビアン女性のうち、10人に4人は、同僚との会話の中で、パートナーの名前を男性の名前に変えるなどして、異性愛者を装ったことがあると答えている。

オロールの場合は、新しい会社に入社して「早々に、自分のセクシャリティについて話すように努めた」という。「後でこじれないように」。なぜなら「一度こじれるとその状況から脱するのは大変」だから。

前述の調査によると、ホモセクシャルであることを隠していないレズビアン女性の半数以上が、性的指向を理由に少なくとも一度は何らかの形で差別や攻撃の対象になったことがあると回答している。運輸業や製造業のような伝統的に男性の多い業種の場合、その比率はさらに高くなる。職場でカミングアウトしているかどうかに関わらず、自己検閲や、目立たないようにする努力、差別されることへの不安が、レズビアン女性の精神や健康に重くのしかかっている、と同団体は指摘する。

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「思い切って踏み出す」

こうした背景から、「見えない」レズビアン女性たちは、異性愛者の同僚が習慣的に行っているように、職場で自分の家庭やパートナーの話をすることをためらっているのだ。彼女たちの多くは話したいと思っているのに、影響を恐れて踏み出せないでいる。「上下関係や性差による区別はいまだに根強く残っている。仕事の場でレズビアンであることを声高に言うのは簡単ではない」と、26歳のアナイスは話す。ファミリーネームは伏せて欲しいという。大手公営企業に勤務する彼女は、「慣習的な図式や、異性愛という規範に基づいたステレオタイプが疑問視することなく再生産されている」と嘆く。

入社してまだ日が浅いほうだというアナイスは、これまで自分の恋愛のことを若い同僚たちに話したことはない。しかし彼女は自分のデスクにLGBTを象徴するレインボー色の水筒を置いている。「LGBTを可視化することは、物事を動かすために重要」と言う。そのうち、最も仲のいい同僚たちに思い切って打ち明ける勇気を持てたらいいと思っている。

レズビアン女性が職場で自分らしくいられるためには、どうすればいいのだろうか?「LGBTの社員を可視化すること。また企業が率先して手本を示すことも働きやすい職場環境の実現に不可欠」と63歳のシルヴィ・メーセルは話す。45歳まで、彼女は職場で自分の恋愛や家族の話をしたことがなかった。「まさに自己検閲でした。みんなが週末の話をしていると、私はその場を立ったり、話を逸らしていた」と、当時民間企業で経営幹部のポストに就いていた彼女は振り返る。

女性幹部たちは職場ですでに性差別に直面している、と彼女は指摘する。レズビアンであることが加わると、「二重の差別です」。彼女は45歳の時に転職した。新しい職場の同僚の中に、ホモセクシャルであることを隠さない女性たちもいた。「おかげで話しやすくなりました」。20年以上もの間、自分に課してきた沈黙がどれだけ「心理的重荷」となっていたか、彼女はその時に気づいたという。

text : Mathilde Seifert avec AFP

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