【イベントリポート】フランスの台所を豊かにする、日本発のコンポスト。

Society & Business 2022.08.06

衣食住という日々の暮らしを愛おしむことを大切にするフィガロジャポンの新プロジェクト、Business with Attitude(以下、BWA)事務局では、よりよい日常をつくるため、さまざまな課題の解決に取り組む起業家や専門家の活動を紹介するオンラインセミナーを定期的に開催している。

7月19日の第6回定例セミナーでは、日本発のバッグ型コンポスト「LFCコンポスト」を、パリをはじめ、ヨーロッパに普及しようと活動しているLFCフランスの川波朋子さんをゲストに迎え、LFCコンポストの魅力、フランスのコンポスト事情について語ってもらった。以下、川波さんのお話を抜粋してお届けする。

セミナーのアーカイブはこちら。

川波朋子(かわなみ・ともこ)
Local Food Cycling France EURL代表。1986年、大阪府生まれ。2009年京都市立芸術大学美術学部卒業後、外食企業や広告会社でマーケティング、事業開発などに携わり、30歳で渡仏。パリで帽子ブランドの研修生として学び、2018年、エシカルブランドのTOÏROを立ち上げ。2022年ローカルフードサイクリングフランス事業開始。現在、パリ在住。
LFCコンポスト:
https://lfc-compost.jp/
LFC France:
https://lfc-compost.fr/
 

 

■ LFCコンポストとは?

川波さんがいま、フランスで普及しようとしているLFCコンポストは、都会のマンションの小さなベランダでも気軽にトライできるスタイリッシュなバッグ型のコンポストだ。バッグの中には、“基材”と呼ばれる堆肥の元になる土が入っていて、生ごみを入れると、微生物の働きによってごみが分解されて堆肥に変わる。

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バッグ型でスタイリッシュなLFCコンポスト。photography : LFC Japan

「LFCコンポストは、とうもろこしの皮など繊維質のものを除いて、卵の殻や野菜の皮、お肉やお魚の食べ残し、油かすなど、ほとんどの生ごみを分解できるコンポストになっています。バッグには特別仕様のファスナーが付いているので、中から嫌な臭いが漏れにくかったり、虫が入らなかったりするところも大きな特徴。1.5カ月〜2カ月ほど、毎日約400gの生ごみを投入してかき混ぜ、約3週間ほど熟成させると堆肥になり、2カ月で約20kgほどの生ごみを削減できます」(川波さん、以下同)

LFCコンポストの生みの親は、福岡を拠点とするNPO法人循環生活研究所代表のたいら由以子さんと母の波多野信子さん。堆肥のエクスパートである2人が、すべての人に使いやすいコンポストをと20年近くかけて研究し、2019年、LFCコンポストの販売をスタートさせた。販売から2年弱で日本のユーザーは3万人ほどに増えたという。

「初めての方も安心して使えるコンポストをコンセプトにしていて、日本のユーザーの皆さんには、LINEでサポーターたちに質問・相談ができるサービスを行っています。Facebookにはコンポストユーザー同士が交流できるページもあり、自発的なコミュニティの活動が活発なのも特徴です。また、全国各地で堆肥を回収するイベントも実施しているので、堆肥の使い道がないという方も安心して使っていただけるような仕組みをつくっています」

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■ 日本発のコンポストをフランスで広める理由。

2021年からは、パリ在住の川波さんが中心となり、フランスでもLFCコンポストの販売を開始した。食品ロスの削減やサーキュラーエコノミーへの移行に国を挙げて取り組んでいるというフランスのコンポスト事情は?

「フランスでコンポストは一般的ですが、アパートや集合住宅でよく使われているのは、ミミズが生ごみを食べて分解してくれるミミズコンポストです。ただし、ミミズはとても敏感な生き物なので、柑橘類や油っこいものを入れると死んでしまったり、暑い日にはコンポストからミミズが逃げ出してしまったりするのだそうです。また、木箱のコンポストやぼかしコンポストも使われているのですが、メンテナンスが大変だったり、場所を取ったりするので、狭いベランダしかないアパルトマンに住んでいる人にとっては導入のハードルが高いんです」

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フランスで使われているコンポスト。いずれも維持に手がかかったり、場所をとったりと、都市部に住んでいる人にとっては導入が難しいという。(LFCフランスのセミナー資料より)

そんな中、日本発のLFCコンポストは、パリなどフランスの都市部を中心に、コンポストの新たな選択肢として注目を集めているという。

「いままでのコンポストに比べて、見た目がすごくおしゃれで、テラスに置いてもインテリアの邪魔にならないと好評をいただいています。また、フランスではオーガニックにこだわってガーデニングをされている方もいらっしゃるので、自分が作った堆肥だと化学的なものが入ってなくて安心して使える、という感想もいただきます」

フランスでは、2023年末までに各家庭や飲食店で有機廃棄物の分別が義務付けられるといい、コンポストの普及をはじめ、家庭や個人でのごみ処理が喫緊の課題。マルシェが開かれる日に合わせて、大きな生ごみの回収ボックスが設置されるというが、数日分の生ごみを溜めて持っていくのが困難な人も少なくない。

「お菓子やお料理をたくさん作る人は、その分生ごみも多く出ます。LFCコンポストは場所を取らないので、生ごみを貯めて外に持っていかずとも、“ごみが出たらすぐに対応できる”と使ってくださる方もいらっしゃいます」

現在はフランスだけでなく、イギリス、スイス、アイスランドなどEU圏内でもユーザーの輪がどんどん広がっているという。

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■いま自分がする選択が、未来の子どもに与えるインパクト。

この夏休みには、日仏合同で子ども向けのコンポストのワークショップを企画・開催した川波さん。フランスで暮らしながら、日本発のLFCコンポストを発信する彼女のアールドゥヴィーヴル(Art de Vivre)は?

「渡仏する前は、東京でマーケティングなどの仕事をしていて、その頃は流行の物や、毎シーズンお洋服を買わなければならない、というしがらみみたいなものに囚われていた気がします。その頃と比べると判断基準が大きく変わり、いまは働く上で、子どもの未来や、いま自分がする選択が将来的にどういうインパクトを与えるのか、を判断基準にするようになったと思います。

フランスって、人それぞれのスタイルがあるので、他の人のことは気にしないというような雰囲気があって、自分が好きなものとか出会ったものを長く大事に使うみたいなところがある。これからの暮らしには、そんな考え方が大切だし、そういった考え方が暮らしやすさにつながっていくように感じています」

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■ 質疑応答

Q. 季節によって生ごみの分解スピードは変わる?

はい。生ごみの分解スピードは季節によって代わり、夏の温度が高い方が分解するスピードが速いです。コンポストのバッグを開けていただくと、もわっと暖かくなっていることがありますが、あれは分解が進んでいる証拠です。ただ夏は少し乾燥しやすいので、時々お水などを足していただくといいかと思います。

Q2.コンポストのバッグにカビが生えたりすることはある?

バックの外側にカビが生えることはないかと思います。ただ、中に入れた生ごみとかの上に白カビがたまに出てきたりすることはあります。ただ、カビもごみの分解を進めてくれる微生物の一緒なので、発生してもまったく問題ありません。ネガティブにとらえず、分解を進めてくれる立役者としてうまく付き合っていただければと思います。

Q. ベランダにコンポストを置く場所がない/ベランダとキッチンまで距離がある。解消法は?

ベランダに置く場所がなければ、キッチン周りのスペースに置いていただいても大丈夫です。その際は、スツールに乗せたり、フックをつけてひっかけたるなどしていただき、直置きにならないように注意してください。私もキッチンに置きっぱなしで使っていますが、特に問題はありません。

なお、お外に出されている方も大雨などが降った場合は、軒下やキッチンに避難させてあげてください。ファスナーには防水性のものを使っているので、直接雨が当たっても、中に水が入ったりすることはないかと思うのですが、あまりに大雨の際は浸水しないように場所を移動してあげる方が良いかと思います。

Q. 日本とフランスで、環境問題の取り組み、特に個人の取り組みの違いは?

フランスでは、生ごみもそうですが、プラスチックを使わない、地産地消するという点を意識している人は割と多い印象です。マルシェとかで地元農家のものを買うとか、あのBIOの製品もすごく多く、普通のスーパーのプライベートブランドとして簡単に手に入る環境ということもあり、選択するならば環境にいいもの、サーキュラエコノミーにと意識が向いている製品を厳しめに選ぶ人が多い印象です。

 

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