ボディポジティブ・ムーブメント、実践者が感じたこと。
Society & Business 2023.02.24
ボディポジティブ・ムーブメントが始まって5年、当事者意識を強く持つフランスの4人のインフルエンサーたちが、自身の経験と感じたことを語ってくれた。
#1. エルザ・ウォリンスキー
記者でありsisterhoodという連帯洋服ブランドのクリエイター
@sisterhoodbywolinski
「ロックダウンの時にマリオン・セクランやアマル・タイールなど若い世代の子たちのSNSに影響を受けた。痩せていたりぽっちゃりしていたり、さまざまな体型の彼女たちは公の場に姿を出し、声を上げ始めたの。
「自分のことが嫌い。太ってるし……」とずっと思い続けてきた私。でもそれは異常なことではないし、コンプレックスがあっても美しくあることは可能だと主張する若い子たちが現れたの。自分が開放された気持ちになったわ。彼女たちが持つ視点のおかげで私は凝り固まった考えを振り解き、より良い方向に自分を立て直すことができたの。
私はもうすぐ49歳になるから彼女たちとは世代が違うけれど、彼女たちのおかげで自分を受け入れられるようになった。周りにも私のような人がたくさんいることを知ったので、孤独を感じることが少なくなったし、自分を相対化して見ることができるようになった。恥ずかしいと思うことがあるかって? まったくないわ。私の家族は、自分を語ることを歴代やってきたから。父はデッサンを通じて、母は著作の中で。
唯一気をつけてるのは、私の子どもたちの気持ち。娘たちは「好きなようにしていいけど、インスタにおっぱいは出さないでね。学校中が見てるから」と言ってくる。私の検閲は彼女たちなの。でも娘たちはすごく良く育ってるし、ボディポジティブだから……制限なんてほとんどないわ」
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#2. ジュリー・ブルジュ
Chaque jour compteのコンテンツ・クリエイター兼ライター
@douzefevrier
「2015年の終りにインスタグラムを始めた時はボディポジティブなんて言葉は話題になっていなかった。SNSは憧れの世界のショーウィンドウだった。私は10代の時に大きな火傷を負ったの。人からの目線に立ち向かうため、スクリーンを通してその傷跡を晒す必要性を感じていた。その頃はすごい孤独感を抱えていた。当時、大火傷を負った人はタブー視されていたからね。いまもそうだけど。でも私の話に共感してくれたのは、やけどを負った人たちだけではなかったの。誰もがコンプレックスや葛藤を抱えてる。このようにしてSNSは私にとってセラピーになった。
ただ、いま、自分を受け入れることが“流行り”となってしまった傾向がある気がする。人と違う自分を主張することは、よく売れるテーマを題材にしたお芝居となってしまった。さまざまなブランドやインフルエンサーたちはすぐにそれを取り入れてしまった。そのせいで、自分を受け入れるのは容易なことだと人々に思わせてしまった。
火傷の痕と私の関係は、決して単純なものではない。受け入れられる日があったり、できない日もあったりする。ラメを上から貼り付ければ解決する問題ではないからね。残念だと思うのは、コンプレックスがあること自体がある種のコンプレックスと化してしまったことだわ」
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#3. アマル・タヒール
デジタルクリエイター、ライター
@amaltahir、amaltahir.com
「私にとってボディポジティブ・ムーブメントは100%ポジティブなもの。私は27歳だけど、ティーンエージャーの頃は自分の体に対してずいぶんと厳しかった。ケイト・モスが理想の女性だとみんなが思っていた時期だったからね。そのせいで何回も摂食障害になった。
その後、助産師補助の仕事に就いた時、インスタグラムを始めたの。身体のこと、婦人科学やセクシャリティについての話をする機会が増えたから。そこからプラスサイズモデルのアシュリー・グラハムにインスピレーションを受けるようになった。私も彼女のように自分の姿を投稿するようにしたの。きれいだと言われるようになった。太っていても、ひとつのお手本として人々にある程度の影響を及ぼすことのできる女性に徐々になってきたの。自信もついたし、友だちも増えた。みんなで旅行に行くこともある。洋服を交換したりもするし。そしてみんな一緒に、ファッション誌が押し付けてくる幻の美意識と戦っている。
たまに面白いことが起きるの。洋服屋さんに入ってボディラインに沿ったワンピースを選ぶと、店員さんは別の洋服を提案してくる。でもそんなことにはへこたれない。好きな服があるなら、誇りをもってそれを着て。きっと太陽のように輝きながら素敵な一日を過ごせるわよ」
#4. ヤスミン
『Body Positive Attitude』 (Marabout出版)の著者
@ely_killeuse
長年、あらゆる種類のダイエットを続けてきた彼女はある日、英語圏のSNSでボディポジティブを知ることになり、すぐに取り入れた。彼女にとってそれは単なる哲学ではなく、SayYasという屋号で行っている自身のコーチング・サービスの基本にもなった。
「ボディポジティブの概念はあらゆることに変化をもたらした。でもそれは、“絶対に自分を愛さなければいけない”という新たな “べき”になってしまうリスクも含んでいる。だから最近は“ボディニュートラル”という考え、つまり身体についてとやかく言うのはやめようという新しい考えが生まれてるの」
いずれにせよ若い子たちの間では革命は始まっている。「Z世代はより解放された世代で、例えば月経のこともニキビのことと同じように話すことができる。それは何より。自分の身体を受け入れたり、人生を楽しむための大切な時間をより多く使えるからね」
彼女のコーチングを受けに来るのはもう少し上の世代の女性だ。「これ以上コンプレックスを隠そうとするのではなく、自分が好きなものに注目するようアドバイスをしているの。SNSでは、ポジティブな効果を与えてくれる写真にいいね!をしたり、アカウントをフォローしてみたらいいんじゃないかしら。好意は好意を呼ぶからね」
text: Par Laurence Négroni-Nikitine and Justine Feutry (madame.lefigaro.fr) translation: Hana Okazaki, Hide Okazaki