フランス政府が打ち出した、流産女性へのケア対策。

Society & Business 2023.04.08

今年3月、フランス政府は流産を経験した女性に対するケアの強化を打ち出した。

miscarriage_borne.jpegこの政策は流産した女性が身体的、精神的に回復する環境を整えるために打ち出された。photography: Getty Images

10人に一人の女性が流産を経験する。とてもパーソナルでつらい出来事に対する沈黙が、最近は徐々に破られつつある。フランス政府は流産を経験した女性への支援を強化するつもりだ。3月1日にエル誌が掲載したインタビューでエリザベット・ボルヌ首相は、流産した女性が有給の病気休暇を取得できるようになると発表した。

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シンボリックな前進。

流産や産後うつは「女性の健康上、深刻な問題です」とエリザベット・ボルヌ首相はエル誌の紙面で力強く語った。しかし、現在フランスでは病気休暇が有給になるのは病気で休み始めた4日目以降となっていて、これでは自然流産した女性が仕事を休まない可能性が生じる。この制度の欠点を取り除くことで、流産した女性への配慮を充実させることが目的だ。

国際女性デーと関連して3月8日に正式に発表されたこの政策は、遅くても2024年1月1日までには発効される予定だとフランス・アンフォ局は伝えている。「社会保険の予算に800万ユーロ必要になると想定される」と同局は詳細を伝えた。

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精神面のサポートの強化

2021年4月、英医学誌ザ・ランセットが取り上げた流産に関する研究で、この問題は「あまりにも長い間、過小評価されてきた」と語られている。研究者は流産の身体への影響を細やかに説明し、出血や感染のリスクにさらされる以外にも、「その後の妊娠での早産、胎児発育遅延、胎盤早期剥離や死産などのリスクが増加する」と指摘している。

心理面では「不安感、うつ病、PTSDや自殺などのリスクが伴う」と研究者は示している。フランス政府はこれらの深刻な問題に歯止めをかけるために医療機関の専門家の養成を強化し、この試練に向き合っている女性のサポートを強化したいと考えている。「流産した女性や産後うつになっている女性に対し、助産師が心理サポートを処方できるようにしたい」とエリザベット・ボルヌ首相は語った。

3月8日、モデム・サンドリーヌ・ジョッソ議員が流産を経験した女性の精神的フォローの改善に関する法案を国民議会に提出。健康保険内で心理サポートが受けられるようにし、すべての患者にこの制度の存在を知らせる義務を盛り込むことも提案した。

フランス以外では、ニュージーランドが(インドとともに)最も早くこの問題に取り組んだ国だ。2021年3月24日以降、流産や死産を経験したカップルの双方に3日間の休暇が与えられている。「我が国がこのような法案を通した最初で最後の国の一つとならないことを切に願っています。流産や死産が伴う辛さと悲しみを、ほかの国々も認め、正当で思いやりのある休職制度の整備を行うことを願っています」と、労働党のジニー・アンダース議員はこの法案の提出時に表明した。

text: Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr) translation: Hana Okazaki, Hide Okazaki

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