「優等生」社員ほど、昇給できない理由とは?

Society & Business 2023.04.14

与えられた仕事は手ぎわ良く処理するだけでなく、機転も利く。行動力も提案力もある。だがなぜか評価につながらない——そんな風に感じている人は、仕事のやり方を変える必要があるのかもしれない。フランス「マダム・フィガロ」からのアドバイス。

230410-perfectionism-01.jpg言われたことを必ずやり遂げる模範社員だから、仕事がどんどん押しよせる。たとえすでに山のような仕事を抱えていても。photography: Getty Images

女性は仕事を完璧にこなそうとしがちだ。そのことは研究でも明らかになっている。それは承認欲求なのか、待遇への不満、あるいは自分の能力を証明したいからなのか……男性と比べて出世するためのハードルが高いことは確かだ。

激しい競争を勝ち抜こうと女性は「優等生」思考に陥りやすい。ニーズを先取りし、仕事はきっちり片付け、エネルギーとアイデアにあふれている人になろうとする。それはつまり「頼りになる人」、必要不可欠な人材だということだ。いつだって求められている以上の成果を出す。キャリアコーチのオーレリ・フカールは、「これはよく知られた現象です。学校での習慣を会社に持ちこんでしまうのです。ですが学校と会社は異なります」と解説する。要するにこれまで役立っていた習慣がマイナスに働く場合もあるということだ。

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どんどん大変になる。

優等生女子は与えられた仕事をきっちりこなす。だから、もう手一杯なのに仕事が次々押し寄せる悪循環が生じる。仕事に手を抜かないうえに、自分の限界を認めたり、周囲に伝えたりすることも苦手だからだ。

キャリアコーチのオーレリは、「面倒な仕事は彼女にお願いするというのが上司にとっての簡単な解決策になってしまいます。誰かに任せようという段階でまず彼女が思い浮かぶのは、断らないことを知っているからです」と問題点を指摘する。結果として優等生女子は雑務に忙殺される。だがそれがキャリアアップにつながるとは限らない。

さらに、「完璧を目指すことは、燃え尽きる危険もはらんでいます」と警告するのは心理学者のカトリーヌ・ヴァゼイ、燃え尽き症候群の専門家だ。『La boîte à outils de votre santé au travail(原題訳:会社で健康に過ごすためのツールボックス)』(Dunod出版;2020年1月発行)などの著作もあるカトリーヌは、「このように自分への要求が高いといつか自信喪失しかねません。燃え尽きる大きな要因のひとつです」と言う。

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「ノー」が言えないと尊重もされない。

だから勇気を出して「ノー」を言うことも必要だ。一般的に優等生女子はなかなか「ノー」が言えない。波風を立てることを恐れ、自分が問題を解決する人ではなく、解決すべき問題となることを恐れる……。

キャリアコーチのオーレリは過去に人事部長として5年間働いた経験から、根本的に頭を切り替える必要があるとアドバイスする。「自分がどうしたいか、自分にどんな価値があるかを伝えられない人は軽んじられます。言いづらい話題にあえて踏みこみ、仕事の条件を交渉してこそ活発な対話が生まれ、尊重されるようになり、結果的に上司との関係も深まるのです」とオーレリは言う。

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感謝されども……

もうひとつ、肝に銘じておくべき基本ルールがある。それは、求めなければ与えられないということだ。期限内にきっちり仕事を片付けて上司から評価されても、それが昇給につながるとは限らない。キャリアコーチのオーレリによれば、「むしろ上司はこうした有能な人物に頼りながら、昇進させないこともよくある」そうだ。自分の「手中」にある人のために大変な思いをして昇進の根回しをする必要がどこにある?

「感謝の念は金銭的な形でなく、言葉で表されることが多いのです。たとえば、“君の昇進に関しては2年後に話しあうことにしよう。いずれにせよ、我が社にとって貴重な働きをしてくれてありがとう”などと言って、部下の承認欲求を満たす術を上司は心得ています」とオーレリは言う。残念ながらそれだけでは給料は増えない。

オーレリはまた、「昇進は、公平でありたい上司と、自分の希望を明確に伝える部下が出会って生じるものです」と語る。「昇進したいと思っていることをきちんと言わない限り、職務がずっと変わらないかも知れません。キャリアアップを望むなら目標を設定し、頑張ったら見返りを求めるべきです。これは雇用条件の交渉だけでなく、ストックオプションなどについても言えることです。まずは正式に面談してほしいと言ってみてはどうでしょうか。真剣なところを示すのです。コーチと事前に面談の準備をするのもいいですね。完璧主義の人はそのほうが安心できるでしょう」

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生産性の低下

完璧主義が高じると効率を度外視してしまう場合もある。問題になるのは、すぐに結果が求められるような仕事環境にいる場合だ。心理学者のカトリーヌ・ヴァゼイは「企業では生産性を重視する傾向があります。なにもかも完璧にやろうとすると効率が犠牲になりがちですし、一部の仕事にばかり時間をかけすぎるのも良くないとみなされます」と指摘する。

まずは素早く処理できる案件と、じっくり取り組むべき仕事に分けてみよう。このやり方はどんなにこだわりが強い人にも効果があることが実証されている。

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先延ばしにする。

「完璧主義と先延ばし主義は表裏一体です」とキャリアコーチのオーレリは言う。「どちらも、他人の評価が入る時期をできるだけ遅くしようとしているからです」とその理由を説明する。しかしながら、先送りにすればするほど要求水準があがり、自信を喪失する悪循環になりかねない。

これを防ぐには、自分でデッドラインを設定することだ。たとえばこの仕事を仕上げるのに4時間かかりそうと思った場合、14時から始めるなら、18時までに終わらせることを目標にする。完璧主義の人は挑戦が大好きだから、空白恐怖症を乗り越えるこのやり方はきっとうまくいくはず。

text:Lena Couffin (madame.lefigaro.fr)

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