カルティエ ウーマンズ イニシアチブ授賞式がパリで開催!
Society & Business 2023.05.18
持続可能な社会と環境づくりへのインパクトをもたらす女性起業家たちを支援しようと、2006年に誕生したカルティエ ウーマンズ イニシアチブ(CWI)。年に1度のCWIアワードの授賞式が、5月10日、パリで開催された。
授賞式が行われたパリのサル・プレイエル。ずらりと並んだ今年のフェローは32人。 ©Pierre Mouton
カルティエ ウーマンズ イニシアチブは、社会、環境の両面で持続可能な世界を目指す女性インパクト起業家を支援するもの。毎年、世界各地域ごとに選出されるフェローには、賞金だけでなく、ビジネススキルを磨くトレーニングや受賞者コミュニティへの参加など、経済、社会、人的なサポートが提供されている。
今年16回目を迎えたCWIアワードの一番の話題は、「ダイバーシティ エクイティ&インクルージョン アワード」という新カテゴリーの設立だ。権利やチャンス、成果物の面で不利な立場に立たされている人々やコミュニティのために、その格差を埋めるための活動を行う起業家を対象とし、ジェンダーを問わずに候補を募った。これまで、女性起業家の支援にフォーカスしてきたCWIの扉が、すべてのジェンダーに開かれたことになる。
5月10日の授賞式、パリのコンサートホール、サル・プレイエルには1000人を優に超えるゲストが集まった。世界9地域のリージョナルアワードと、2年前に誕生した「サイエンス&テクノロジー パイオニア アワード」、新設の「ダイバーシティ エクイティ&インクルージョン アワード」から32名のフェローが一堂に会し、いよいよ、各部門の1位から3位までが発表される。
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ゲストの中には、LGBTQの課題に取り組むアーティストで僧侶の西村宏堂さんの姿もあった。「私は男性の容れ物に入っているけれど、魂に性別はないと思っています。差別は、差別だけに取り組めばいいわけではなく、誰にとっても勉強できる環境や教育のレベルが高まっていかないと、改善されません」
18歳の時にアメリカに留学し、英語を通して、同性愛者も胸を張っていい、と学んだという宏堂さんは、「日本の中にいると、日本の普通しかわからない。でもそれを超えれば、いろいろな普通があることが学べる」とも。それだけに、フェローの中でも特に、子ども同士が言語を学び合うアプリKOKORO LINGUAを展開するスイスのナタリー・レスリンの事業に親近感を覚えたそう。
授賞式に出席したアーティストで僧侶の西村宏堂さん。
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いよいよセレモニーが始まる。最初に登壇したのは、人権とジェンダー平等に取り組む国際弁護士、アマル・クルーニー。自身の法廷での闘いを例に、人権擁護を訴える力強いスピーチが、聴衆を引きつけた。「私の目標は、すべての人に平等な正義を与えること。私の哲学は、正義は必然ではない、正義は行使しなければならないというものです。なぜなら、正義は必然的に起こるものではない。私たちはそのために闘わなければなりません」
そして、CWIのフェローたちをこう讃えた。「ここに今夜、大陸や業界を超えて、影響力を持つ素晴らしい起業家たちが登場します。彼らは皆、現状に満足することなく、既にあるインパクトをさらに拡大しようとする人たち。より良い未来のために闘いの場に身を投じる世界市民です」
セレモニーは、国際弁護士でClooney Foundation for Justiceの共同設立者のアマル・クルーニーによる力強いスピーチで始まった。©Jean Picon
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続いて、映画の世界で監督や女優、プロデューサーとして、それぞれに社会や環境問題に切り込む女性たちが舞台に上がり、その体験やビジョンを語った。映画『存在のない子供たち』で、紛争や戦争の犠牲になる子どもの存在に目を向けたナディーン・ラバキーは、「社会と環境の変革のきっかけを生むアーティストの役割」について。女優で環境活動家でもあるメラニー・ロランと、同じく女優でチェンジエージェントのヤラ・シャヒディは、「グローバルな影響力を活用して変化を促す」をテーマに対談した。
映画監督のナディーン・ラバキーと、カルティエ インターナショナル プレジデント&CEOのシリル・ヴィニュロンは、「社会と環境の変革のきっかけを生むアーティストの役割」をテーマにトークを繰り広げた。 ©Pierre Mouton
左から、女優、プロデューサーで、若い世代を代表するチェンジエージェントのヤラ・シャヒディ。彼女は『ピーター・パン&ウェンディ』で、有色人種として初めてティンカー・ベルを演じることで話題に。環境問題に取り組むドキュメンタリー『TOMORROW パーマネントライフを探して』の共同監督でもある女優、活動家のメラニー・ロラン。司会を務めたキャスターで作家、活動家のサンディ・トクスヴィグ。「グローバルな影響力を活用して変化を促す」をテーマに対談。©Pierre Mouton
壇上にはフェローたちも登場し、「私の原動力」と「連帯が成功に導く」というテーマで次々にスピーチを展開した。夫のがんとの闘いを原動力に事業を立ち上げた女性、競合関係にある世界的大企業との協働でさらなる成長を実現した起業家……。会場は、時代を変革し、動かそうとする女性たちのパワーに満ち溢れた。
「私の原動力」をテーマにしたライトニングトークでは、8人のフェローがスピーチ。©Jean Picon
ダンサー、振付師、デザイナーのサデック・ワフによる、CWIの今年のテーマ「Forces for Good(世界をよくする力)」を反映したパフォーマンスも行われた。©Jean Picon
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授賞式の最後には、1位から3位までの発表を受けて、フェロー全員が次々に壇上に上がった。
気になる東アジアの1位受賞者は、どこからでもアクセスできるメンタルヘルスサポートアプリMINDLINGを立ち上げた韓国のウリィ・ムン。フランス語圏サハラ以南アフリカでは低所得層への安全な水のアクセスに取り組むイヴェット・イシムウェが、オセアニアではインパクトを意識した教員トレーニングに取り組むイングリッド・シーリーが1位を獲得するなど、地域それぞれのニーズを反映した活動の数々が、列席者をインスパイアする。
注目の新設部門、ダイバーシティ エクイティ&インクルージョン アワードの1位は、より豊かで、力強いブラックコミュニティを目指すことを掲げたファッションブランドCISEを運営するブレイク・ヴァン・パットン。「メイクとファッションを通して、差別や偏見を取り除く活動を大事にしている」という西村宏堂さんがもっとも注目していたフェローだ。
ダイバーシティ エクイティ&インクルージョン アワードの1位はブレイク・ヴァン・パットン。セレモニー終了後、西村宏堂さんがお祝いに。
セレモニーの後、西村宏堂さんはこんな感想を語ってくれた。
「我々の人生をさらに美しくするために活動している方がいることに励まされました。日本では自分から目立って活躍しようとすることが祝福されにくい部分がある。女性の身体で生まれた方々が意見を言い、主導して何かを始めることが難しかった時代もあります。このようなアワードによって、自分たちが自信を持っていい、主導になっていい、それがみんなのためになるのだ、と感じられると思います」
2024年のアワード募集も、この日から開始された。締め切りは6月30日午後6時(中央ヨーロッパ夏時間)。詳細はカルティエ ウーマン イニシアチブ公式サイトからチェックして。
text: Masae Takata