「日本では妊婦に『夫をイライラさせないように』というパンフレットを配った」フランスメディアの報道とは?

Society & Business 2023.08.02

日本の尾道市が配布した妊婦向けのチラシには「男女で感じ方や考え方に違いがあります」と書かれており、その性差別的なアドバイスは、日本の女性たちの怒りを買った。 

※フランス「マダム・フィガロ」の記事を翻訳。

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チラシには「大切なのは、お互いの違いを理解し、うまく役割分担をすることです」と書かれている。Photography: Getty Images 

広島県東部にある尾道市に対する怒りがいま、日本で渦巻いている。7月中旬、同市に住む妊婦は郵送で市からのチラシを受け取った。それは妊娠中に夫をイライラさせないよう呼びかける驚くべき内容だった。チラシには、2018年に実施した市内の父親100人へのアンケートに基づいた「先輩パパからあなたへ」のアドバイスが載っており、妊婦や赤ちゃんのいる女性に貴重なアドバイスを読むよう呼びかけていた。

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男と女の違い

「男女で感じ方や考え方に違いがあります。この理由のひとつに、男女の脳の構造上の違いがあげられており、男性は理論、女性は感情に基づいて行動するという違いがあることが分かっています。大切なことは、お互いの違いを理解し、うまく役割分担をすることです」とチラシにはある。たとえば、「わけも分からずイライラしている」妊婦の気分のムラを嫌に思う夫は少なくないそうだ。妊婦は平常心を保つべきらしい。このほか、生まれたばかりの「赤ちゃんの世話で忙しく、家事ができていない」という夫の不満も挙げられていた。
このチラシによれば、父親が皿洗いをしたり、掃除機をかけたりした場合、妻は感謝し、マッサージや毎日のご飯で埋め合わせをするべきだし、最低でも「おかえり」の声かけをして、「いつも笑顔でいる」ように心がけるべきであるようだ。
きわめて性差別的で不愉快な提言は、男女を問わず地元民の怒りを買うに十分だった。2023年現在、産後休暇や育児休暇と並んで母親のメンタルヘルスが多くの人々の関心事となっているなかで、このチラシは妙に場違いであり、時代錯誤に思えた。

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公式に謝罪

尾道市の平谷祐宏市長は、このチラシを女性たちがSNSで共有し、批判が高まったことを受けて公式に謝罪し、チラシの配布を中止せざるを得なくなった。市の担当者は問題のチラシの内容が性別の固定観念を助長するものであったことを認め、このような事態を防ぐため、今後、市の職員に女性の権利問題に関する意識を高めるための研修コースを設けると述べた。実際、日本人の怒りが向けられているのは市や市のシステム全体に対してである。オンラインメディア「ハフポスト」の報道によれば、市役所には「性差別的な発信をしたことについて苦情の電話やメールが殺到している」そうだ。

text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr)

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