34歳のフランス新首相ガブリエル・アタル、スピーチで見せた白髪頭が波紋を呼ぶ。

Society & Business 2024.01.12

辞任したエリザベット・ボルヌ首相の後任となったガブリエル・アタル新首相。いまのところ、ネットでは彼のスピーチよりも白髪頭に注目が集まっている。

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2024年1月9日、仏首相官邸マティニョン館前でのガブリエル・アタル。photography: Vernier Jean-Bernard / Vernier Jean-Bernard / JBV News/ABACA

仏首相官邸マティニョン館の外階段で前任者のエリザベット・ボルヌと向き合い、ガブリエル・アタルが就任演説をおこなった。手がかすかに震え、声もややうわずっている。現在34歳。フランス第五共和政史上、最年少の首相の誕生だ。だが2023年7月から国民教育大臣を務め、今回の抜擢となった彼の演説よりも、多くの人が注目したのは頭の白髪だった。SNSのX(旧ツイッター)上では、最近急に白髪が増えたことを指摘する声が上がっている。「昨日の僕から白髪を盗んだんじゃ?」なんて投稿も。「老けてみえるように髪を白髪混じりに染めているんじゃないか」とかんぐる人もいた。というのも、過去にそうしていた政治家が実際いたからだ。

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2024年1月9日、前任者エリザベット・ボルヌから首相の座を受け継ぐガブリエル・アタル。photography: Vernier Jean-Bernard / Vernier Jean-Bernard / JBV News/ABACA

2017年に「ル・モンド」紙が報じたところによると、当時42歳の有力政治家、ローラン・ヴォキエが信用を得るために髪を白髪に染めていたことがあったそうだ。この政治家はその後不祥事を起こして人気が失墜した。ガブリエル・アタルがこのような策略に頼る必要はあるのだろうか? パリのソルボンヌ・ヌーヴェル大学元学長でメディア社会学者のジャミール・ダクリアは、否定的な見解だ。「ヴォキエはあの時大きな批判を浴びた。ガブリエル・アタルが白髪に染めようとしたとは考えにくい。急にスポットライトが当たったから、単純に白髪を隠す時間がなかっただけかもしれない」

実際、ここ数日でフランス中が一気に、彼に注目するようになった。「この世界で若いというのは、長所であると同時に弱点であることを彼はわかっている。だから白髪を多少放置しておいた方が、貫禄がついて老けて見えるかも、と考えても不思議ではない。これからは自分よりも経験のある同僚を率いなければならないからだ」。

しかも誠実さがますます求められる時代だ。セレブであれ政治家であれ、若い世代はこれまで以上に透明性や自然な態度を求める。SNSでは白髪や妊娠線を堂々とさらす素顔の女性たちが称賛されている。「政治家は誰もが誠実さで勝負する必要性を感じている。集合的無意識の中で、政治家は嘘つきとみなされているからだ。(かつて仏首相を務めた大物政治家の)エドゥアール・フィリップでさえ、脱毛症であることをカミングアウトすることで透明性をアピールした。本人にとっては辛いことだっただろうが、おかげで好感度はある程度アップした」とメディア社会学者のジャミール・ダクリアは指摘した。

エドゥアール・フィリップのあごヒゲが急に白くなったことや、眉毛さえないということは、今回のガブリエル・アタルの白髪どころではない噂を呼んでいた。だからこそエドゥアール・フィリップはカミングアウトする決意を固めたのだ。

2022年1月に、ガブリエル・アタルがフランス2TVの番組「13h15 ル・ディマンシュ」に出演した折、本人自ら老化の兆候があることを皮肉ってこんな発言をしている。「ある人から白髪があるねと言われました。大臣をやると年齢計算が犬並みになるようです。つまり1年が7年分ですね」と。要するにガブリエル・アタルは一夜にして白髪になったのではないようだ。そんな伝説は、斬首される前夜に髪が白くなったと言われるマリー・アントワネットに任せておこう。

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今に始まった話ではない

政治家の外見はSNSが存在するはるか以前から、人々の関心事だった。メディア社会学者のジャミール・ダクリア曰く、「そんな些細でとるに足らない、さまつな事にこだわるなんて、と思うかもしれない。しかし、少なくとも大衆はそうみなしていないことがこれまでの例でわかる。それはまさに人々の関心事なのだ。政治家とは、単に演説をしたり、政策を実行したりするだけの存在ではない。いわゆるエートス、すなわち自分をどのように見せるのかも肝要だ。これは最近の新しい風潮に思えるかもしれないが、結局のところ、人々は常に政治家の外見を読み解こうとしてきた」。さらにジャミール・ダクリアはかつて、フランソワ・ミッテラン元仏大統領が虚偽の健康診断書を公表していた件にも言及した。「それは人々がこんなふうに思うからだ。この人物は自分たちの代表をつつがなく務められるだけの頑強さがあるだろうかと。少しぐらい弱いところがあっても悪くない。人間味があっていい。だが大きな責任を担う職務に就く以上、たじろいではいられない」と言うと、人間的身体と政治的身体の違いを指摘した。「政治的身体は完璧であるか、少なくとも揺るぎないものでなければならない」と。仏新首相の健康状態はどうやら心配する必要がなさそうだ。いずれにせよ、少なくとも髪の毛については早くもSNSのチェック済みだ。

text: Justine Feutry (madame.lefigaro.fr)

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